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現場の失敗と対策 このコンテンツは現場で働く皆さんの参考としていただきたくよう、実際の施工にあたっての失敗事例と対策を記載したものです。土工事、コンクリート工事、基礎工事の3分野を対象として事例を順次掲載していきますので参考にしてください。

基礎工事4)新工法

鋼管ソイルセメント杭の鋼管沈設不能

2014/01/29

工事の概要とトラブルの内容

図-1 土質柱状図図-1 土質柱状図

架橋基礎工事で、後沈設方式の鋼管ソイルセメント杭を施工した。杭の仕様はφ1200mm、鋼管径φ1000mm、L=28.5m(掘削長:31.5m)である。施工地盤は、支持層(砂礫:N≧50)に達するまでは軟弱な沖積粘性土層と沖積砂層の互層となっていた。地表面付近の地下水位は杭の施工基面-3.0mであった(図-1)。

5本目の杭の掘削攪拌が終了し、鋼管の建て込み中に造成したソイルセメント天端の液面が急激に低下し、所定の設計深度より約2.5m程度高い位置で鋼管の回転および挿入が出来なくなった。

原因と対処方法

図-2 練り返し治具図-2 練り返し治具

透水性の高い砂・砂礫地盤などでは逸水によりソイルセメントの流動性が低下し、リブ付き鋼管の周辺に過剰な摩擦力が発生し、回転圧入ができなくなることがある。今回も上記のいわゆるジャーミング現象が発生し、杭が高止まりしたものと想定された。

上記の様な逸水によるソイルセメントの流動性低下の防止方法としては、セメントスラリーに増粘剤を添加し粘性を上げるなども考えられたが、本工事ではスラリープラントからの圧送距離が長くグラウトポンプによる圧送が困難になる恐れがあったため、セメントスラリーの注入量の増量と、鋼管の回転圧入による再掘削攪拌で対応することにした。

6本目以降の杭の施工においては、以下のように対策を行った。

  • ①ソイルセメントの天端液面の変化に注意しながら慎重に掘削攪拌を行い、逸水層を見極めるとともに、掘削攪拌時およびロッド引き上げ時に液面低下が止まるまでセメントスラリーの注入量を増量する。
  • ②リブ付鋼管の先端に練り返し用の治具(図-2)を取り付け、逸水層に到達する少し前段階から鋼管を回転圧入しながら沈設する。これにより、逸水層によりソイルセメントの流動性が不足した場合でも、再掘削攪拌効果で流動性を改善し鋼管の沈設を可能とする。

上記の対策により以後の杭施工においては、鋼管を所定の設計深度まで沈設・定着することができた。

なお、高止まりした杭は全回転オールケーシング杭用のパワージャッキを搬入して鋼管を回収し、あらためて再施工により所定の位置に沈設を完了した。

同様の失敗をしないための事前検討・準備、施工時の留意事項等

透水性の高い砂や砂礫地盤等では、セメントスラリーの逸水による鋼管の高止まりが起こることがある。一般的に透水係数が10-4m/sec程度より大きい透水係数を持つ地盤では逸水を起こしやすいといわれている。最近では、シラス地盤でもセメントスラリーの逸水の事例が報告されている。

事前の土質調査結果を十分に把握して、早期に適切な対応ができるようにしておくことが重要である。圧送能力の高いグラウトポンプを準備して増粘剤の添加によりセメントスラリーの粘性を高くするという対策も考えられるので、手配可能な機材やコスト等に配慮して最善の方法が選択できるように留意すべきである。

「現場の失敗と対策」編集委員会

編集委員会では、現場で起こりうる失敗をわかりやすく体系的に理解できるよう事例の形で解説しています。みなさんの経験やご意見をお聞かせください。

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