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コラム:編集委員の独り言…

「現場の失敗と対策」編集委員が現場や研究の中で感じた思いや、
技術者に関わる情報を綴っています。

膨潤性粘土鉱物スメクタイトによる
トラブルについて
~モンモリロナイトは厄介者、
でもベントナイトは役に立つ~ 編集委員 S

2018/08/30

膨潤性粘土鉱物(スメクタイト)は、その結晶構造から水を吸収すると膨らむ性質があるため、建設工事でのトラブルにつながりやすいというのはよく知られていることだと思います。たとえば、トンネル施工における掘削断面の内空側への地山の押出しによるトラブル。スメクタイトを含む軟岩などが掘削による応力解放と空気中の湿気や地下水を吸うことで膨張し、トンネルの切羽崩壊や支保工の変状、底盤の盛り上がり(盤ぶくれ)などを引き起こして(図1)、工事中断を余儀なくされる場合もあります。また、供用後にトンネル覆工に変状が生じ対策が必要となった事例もあり、そのような現象を起こす地質は一般に膨潤性地山1)とも呼ばれています。

図1 トンネル施工でのトラブルのイメージ図1 トンネル施工でのトラブルのイメージ

その他にも、掘削後の吸水膨張とそれに伴う地盤強度低下に起因した、切土法面の変状や崩壊(図2)、路面の隆起や舗装のひびわれ、建物基礎の変状(図3)、地すべりなどの斜面災害といったトラブルも起きています。また、スメクタイトを含む軟岩や土塊(膨潤土)は、乾燥・吸水が繰り返されると収縮・膨張によって次第に構造が破壊されて強度が低下していく現象(スレーキング)も発生しやすくなります。

図2 切土法面でのトラブルのイメージ図2 切土法面でのトラブルのイメージ
図3 建物のトラブルのイメージ図3 建物のトラブルのイメージ

スメクタイトに起因するトラブルは日本国内だけでなく、東南アジアや北米に進出した日系企業の工場建設工事などでも発生しているので注意が必要です。施工中のトラブル対策としても多くの事例(表1)が報告されていますが、やはり事前の調査に基づいて適切に対応することが大切です。では、スメクタイトとはどのような物質で、その調査・分析方法にはどのようなものがあるのでしょうか?これらを理解しておくことがトラブル防止にも役立ちます。

表1 膨潤性粘土鉱物(スメクタイト)に起因するトラブルと対策の例表1 膨潤性粘土鉱物(スメクタイト)に起因するトラブルと対策の例

スメクタイトとは膨潤性粘土鉱物の総称で、表2のようにモンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライトなどの鉱物があります2)。その中でも建設工事関係者が比較的よく耳にするのがモンモリロナイトでしょう。なお、膨潤することで有名なベントナイトは、鉱物種名ではなく、モンモリロナイトを主成分とする粘土の名称です(図4)。ベントナイトの名前の由来は、アメリカのワイオミング州のフォートベントン (Fort Benton)の頁岩層から産出されたことによりますが、今から数百万年から約2億年前の火山噴火によって堆積した火山灰などが地下の高い温度や圧力、熱水などの作用を受けて鉱床となったと考えられています。

表2 スメクタイトと呼ばれる鉱物表2 スメクタイトと呼ばれる鉱物
図4 ベントナイトに含まれる鉱物グループ等図4 ベントナイトに含まれる鉱物グループ等

スメクタイト(膨潤性粘土鉱物)の代表的な鉱物であるモンモリロナイト、その結晶構造や膨潤の仕組みを模式的に示したのが図5です。粘土鉱物の大半は薄い板を何枚も重ねたような「層状珪酸塩鉱物」と呼ばれる結晶構造をしていますが、モンモリロナイトはこの薄い板の間に交換性陽イオン(Na+、Ca2+、K+、等)と水分子の層をはさんでいます。イオン交換性も高く、水分子を出し入れすることができるため、体積、含水比、比重、強度などの性質が大きく変化します。そのため、モンモリロナイトを主成分とする粘土のベントナイト(図4)は、層間陽イオンの種類によって分類されるのが一般的で、大別すると「Na型ベントナイト」と「Ca型ベントナイト」の2種類があります。層間陽イオンにNa+イオンを多く含むNa型ベントナイトは、結晶層を引きつける力がCa2+より弱いために吸水性が高く、増粘性や懸濁安定性も優れているので重宝されています。

図5 モンモリロナイトの結晶構造と膨潤の模式図図5 モンモリロナイトの結晶構造と膨潤の模式図

しかし、このような膨潤現象は岩や土に含まれるスメクタイトの量や質などによって異なってくるため、建設工事の施工条件などに応じて適切な試験を実施する必要があります。岩石の吸水膨張試験(JGS 2121-2009)、岩石のスレーキング試験(JGS 2124-2009)、土の陽イオン交換容量(CEC)試験(JGS 0261-2009)といった試験方法は地盤工学会で基準化されていますので、詳細は参考文献3~5)を参照ください。また、特定の粘土鉱物の含有量を調べる方法にはX線回折やメチレンブルー試験があります。メチレンブルー試験(吸着量測定)は比較的試験が簡単なため粘土鉱物の含有割合や比表面積、陽イオン交換容量を評価する手法として古くから用いられていますが、試験の手順のわずかな違いが結果に大きく影響するため注意が必要です6)。なお、CEC(Cation Exchange Capacity)試験は、一般に土壌における養分の保持・供給量を調べることを目的とした試験方法ですが、膨潤性粘土鉱物の含有量との相関性がよいため、トンネルやダム建設時の地山の膨潤性の判定や、地すべり面の特定などに用いられることがあります。

ところで、ベントナイトには、掘削泥水や廃棄物処分場の遮水構造、有害物質などの吸着剤といった建設関連の用途だけでなく、鋳型の結合剤、ネコ砂、化粧品など多様な使い道があるそうです。ベントナイトは人に無害なので戦時中の食料難の時代には乾パンに混ぜていた(水分を吸って膨れて満腹感が得られる)というエピソードもあり、もっと調べてみると面白いかもしれませんね。

参考文献

1)大塚康範:膨潤性地山、技術手帳 地盤工学会誌 2016.1

2)粘土鉱物学 (新装版) ―粘土科学の基礎―、白水晴雄著,朝倉書店、2010.4

3)岩石の吸水膨張試験方法:公益社団法人 地盤工学会 地盤材料試験の方法と解説(2009)

4)岩石のスレーキング試験方法:公益社団法人 地盤工学会 地盤材料試験の方法と解説(2009)

5)土の陽イオン交換容量(CEC)の試験方法:公益社団法人 地盤工学会 地盤材料試験の方法と解説(2009)

6)堀内悠・高木 哲一・他:産総研におけるベントナイトのメチレンブルー吸着量測定方法、地質調査総合センター研究資料集, no.555 (2012) 
https://www.gsj.jp/data/openfile/no0555/mb-test.pdf

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