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3)地盤改良
2015/02/26
地盤改良材(固化材スラリー)の注入・撹拌混合によって周辺地盤が押されて、擁壁に作用する土圧(側圧)が増加し、L型擁壁が押し出された(滑動した)と考えられた(図1)。また、改良コラムの施工機械(重機)を擁壁と平行する向きに移動させたため、重機の接地圧が擁壁に対して影響を与えた可能性がある。
そこで地盤改良の施工を中断し、擁壁背面土を掘削除去して、まず擁壁にクラックなどの損傷が発生していないことを確認した。そして、仮設のアンカーを背面側の地盤に打ち込んでチェーンブロックによって擁壁を引張り、擁壁前面からもバックホウで押すという補助作業を併用して変状を修正した。
敷地に余裕がある場合には、擁壁底版と改良コラムの離間は最低50cm確保することが望ましい。そして、改良体の本数が多い場合、擁壁近傍の改良体は1本おきに施工するなど、複数の地盤改良コラムの土圧が同時に擁壁に作用しないようにする(図2)。複数列配置の場合には、改良コラムの施工順序が擁壁近傍から徐々に遠ざかるように計画する。また、擁壁付近での重機の配置や移動方法にも留意し、重機の接地圧ができるだけ擁壁に作用しないようにする。具体的には、重機は擁壁と平行に移動するのではなく直交方向に移動するようにする(図3)。
施工上の工夫としては、あらかじめ改良体上部の土をプレボーリング等によって除去しておくと、近接構造物への影響を抑制することができる(図4)。また、施工速度(ロッドの貫入速度や回転数)を抑えることで地盤変状を軽減できる場合も多い。なお、最近は周辺地盤の変位抑制タイプの地盤改良工法(例えば、オーガースクリューによる排土を併用した機械式撹拌工法など)も開発されているので、工法選定の段階で充分に検討することが重要である。
その他には、既存構造物(擁壁)と改良体の間に空堀りの溝または孔を設置するという対策も考えられる。地盤改良の施工によって発生する地盤変位を空掘り部分が吸収することによって、擁壁に作用する側圧を低減することができる(図5)。
編集委員会では、現場で起こりうる失敗をわかりやすく体系的に理解できるよう事例の形で解説しています。みなさんの経験やご意見をお聞かせください。
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