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コスト管理の達人 現場管理にすぐに役立つ10のポイント

事例紹介③
新分野への取組みにこれまでのコストの
考え方を取り入れた企業事例

2015/6/29

コスト管理を現場に取り入れた企業事例

設企業といえども事業が未来永劫つづいていく保証はありません。実際、積極的に新たな分野へ進出している取り組み事例も多数報告されていますが、資金や人材、技術力などさまざまな課題も多く、一朝一夕にできるものでもありません。しかし、コスト管理の面だけを考えると、これまでの事業や工事で培った手法の多くは有効です。

これまで説明してきたように、

  • ① どのような作業(業務)を行うのか?
  • ② 作業(業務)にかかるコストとしては何があるのか?
  • ③ その原価要素は、生産性に対してどれだけ必要なのか?

は、どの分野に進むとしても、基本的には「共通した」考え方です。今回は「新分野への取組みにこれまでのコスト管理の考え方を取り入れた企業」の事例を紹介します。新分野へ取り組んでいない企業にとっても、コスト管理の考え方や応用について理解を深めることができることと思います。

事例1:一般土木工事業から、補強土壁工の専門会社へ特化!

企業情報 株式会社M土木(中部地方)土木工事主体 完成工事高約2億円、官民比率70:30
キーマン:専務42才
特徴 現社長はもともと造園業を営んでいましたが、20年ほど前に一般土木工事業へ転換しました。転機となったのは10年ほど前です。当エリアの法面工事で、これまでの「コンクリート擁壁工」から「補強土壁工法(※1)」が採用されるようになりました。切土高を小さくして残土を少なくし、盛土材として利用できる補強土壁工法について、当時は経験値のある建設会社はほとんどありませんでした。会社の将来に不安を感じていた専務は、「地域で競争の少ない工種」「生産性を伸ばしていく自信のある工種」「将来の発注量が見込める工種」に活路を求めていましたが、まさにこの「補強土壁工法」が生き残りのカギになりました。「仕事師(※2)の能力を活かし、彼らが自信を持ってイキイキと働くことのできる会社にしていきたい」という専務の熱い想いを実現するのに「補強土壁工法」がきっかけとなり、その後同工法採用の工事の受注も拡大し、今では年間の完成工事高の約80%を占めるまでになっています。
(※1)補強土壁工法とは、盛土中に補強材を敷設することで垂直もしくは垂直に近い壁面がつくれる土留め構造物構築工法のこと。
(※2)現場作業をする職人で、M土木では能力が高く尊敬できる人という意味を込めてこう呼んでいます
取り組み 「コストが嵩み敬遠されがちな工種にあえて特化するには、社員が一体となったコスト管理の徹底が欠かせない。」と話され、これまで数段階の改善を経て現在のスキームが作られています。
専務の声① - どこに特化するのか? 「補強土壁工法」と決めた理由

一般土木工事では、さまざまな工種を受注します。現場ごとに作業環境も異なり、「仕事が慣れた頃に工事が完成する」ため効率が悪いと以前から考えていました。経営資源も限られており、特化する工種を決めれば、使用材料・使用機械、生産性アップのための手法等、どれをとっても効率的に集中することができます。それならば、新たな事業展開も視野に入れながら何かの施工に特化しようと考えました。

思い悩んだ末、

  • ① 自社の仕事師(現場職人)で作業できる
  • ② 現状の利益率は低いけれど、繰り返し作業することで歩掛(生産性)の向上が期待できる
  • ③ 着手したばかりの道路事業が完了するまでの間、およそ20年は仕事が見込める

ことから「補強土壁工法」に特化すると決めました。

専務の声② - 利益を出すためのコスト(歩掛)管理の工夫

補強土壁工法に特化すると決めたとはいえ、これまでの経験が少ない新しい工法であったことから、まずは自社の生産性を徹底的に分析することからはじめました。当時の仕事師は高齢者が多く、パソコンなどは使えませんでした。そこでまず、仕事の成果を毎日聞き取り、自分が入力して皆に結果を伝えることを繰り返しました。数か月も経つと、1日の作業目標が明確になり仕事師のベクトルが同じ方向を向くようになりました。その後数年が経ち、仕事師の世代交代の時期がやってきました。若い技術者は、「それまでデータで積み上がった熟練者たちの生産性を、どうやって自分たちが達成していくのか?」と目標と実際の現場作業を日々比較しながら工夫を重ねました。これは、歩掛目標が明確であったから出来たことだと思います。

※ポイント7:「集計からコスト管理への前進がやる気をあげる」参照
専務の声③ - 目標に近づくことが「やる気」につながり、次の課題を考えるようになる

補強土壁工法に特化しコスト管理ができるようになったことで、次の課題を仕事師が話し合うようになりました。出来高を上げるために残業を積極的にする意欲のある班では、「残業代以上の儲けを出さなければならない」と、更なる歩掛向上を目標にしました。「これはコストが数字で見えていなければ、得られない感覚」ですから仕事師たちの成長に感心し、また彼らも自信を深めました。残業代を含めても利益を確保できる歩掛を達成できるようになると、昼間作業では今まで以上の利益を出せます。それを賞与や昇給といった形で還元できる仕組みを整えています。漠然と「頑張る」のではなく、数値化された目標とその達成度合が見えて、限界目標に近づくことが、全社員の「やる気」につながり、技術の伝承にも役立っていると思います。

専務の声 - 総括

弊社が補強土壁工法に特化したことは、結果として仕事師を育て会社の経営を安定させる大きな決断だったと感じています。元請け受注もありますが、地域内の同工法採用工事の約8割が下請けで指名されます。どの建設会社が仕事を受注したとしても、最終的に自社が施工できるようにするには、顧客(元請会社)満足が必須要件であると思い、コスト管理だけではなく「生産性・出来栄え・工期厳守・検査点数」の面で他社よりダントツの成果をあげることを徹底しています。コスト低減についても特化することで、様々な知恵が出るようになりました。例えば、ひとつの工事の材料だけを仕入れるのではなく、発注見通しから1年分の材料をまとめ、かつ現金仕入れすることで、単価を下げることができます。作業グループとしてのグループ管理も、更に作業パターンを細かく分け、1日の出来高を捉えやすい方法が確立できています。

※ポイント2:「絵に描いた餅にしないためのコツ [実行予算・生産管理]」参照

いつも改善を意識し、自社独自の歩掛を積み上げていることが大きな強みです。今では「補強土壁工法」では他社と比較して10ポイント以上高い利益率を生み出す体質を確立できています。利益を出せると、仕事師さんたちにもコスト意識が養われ、仕事に対する充実感につながっているようです。コスト管理は今後も徹底し、更に極めていきたいと思っています。

事例2:通信線路工事業から一般土木まで拡大させた事例

企業情報 T通建(北海道) 通信線路・通信土木工事 完成工事高約7億円、官民比率5:95
キーマン:社長62才
特徴 通信線路工事と通信土木工事を業として創業。地域で課題となっている季節労働者から通年雇用の正社員化にいち早く取組み、自社施工を会社の強みとしています。施工体制の強化を常に課題におき、安全や品質などOJT活動での技術研修を定期的に行っています。独自の品質を維持・向上させるべくサッポロQMSの認証も受けました。最新の光ケーブル線接続の他、技術者が減っているメタル線をつなぐ職人も多く、最近では東日本各地からも仕事を受注しています。「職人に高い技術力がある」と地域では評価を得、信用も高まり、近年では一般土木工事で電線共同溝工事の下請の依頼が増加しています。今ではエリア内の電線共同溝工事の大半の工事で下請施工会社として関わっています。
社長の声① - 通信線路工事で取り入れた日々管理の仕組み

弊社はさまざまな種類の通信線路を接続できることが強みとなっています。通信線路部では、「ケーブル線を新しく接続する」又は「敷設・切り替え・撤去する」工事を行い、その大半の作業を自社の技術者で行います。いかに段取り良く1件でも多くの現場作業を完了できるかが生産性向上のポイントです。通信線路の1件あたりの作業時間は数分~まる1日かかるものまであります。作業は、時間を特定して工事をするものと、いつ作業しても構わないものがあり、その組み合わせを効率的に考え、最大限の「出来高」へ反映させることを重視しています。今日の振り返りと翌日の移動シミュレーションは毎日行います。施工目標(件数)を明確に持つことを意識した管理を行っています。段取りを確認するためには出来高やコストを数値化し、曖昧な評価ではなく皆が同じ意識を持ちながら分析することが大切です。建設業界では、売上やコストを把握するタイムサイクルが長いことが一般的ですが、いかに短い期間に「見える」数字にするかということを第一に通信線路部から取組み、仕組みを確立させました。

社長の声② - 一般土木工事(電線共同溝)へ進出した経緯とコスト管理の取組み

景観の改善や防災・路上スペースの確保などを目的に、電線地中化の設計・発注が始まった頃、通信線路工事で得た評判から、「電線や光ファイバーを収容する施設を作る土木工事(電線共同溝工事)」の依頼が地元の元請会社から増えてきました。電線共同溝は、舗装工事会社が元請けで受注する場合が多く、線路の取り扱い経験がないため、線路工事ができる職人が多い弊社から収容設備施工の提案やアドバイスを行います。そうして実際に施工機会も増え、現在では事業の大きな柱として一般土木工事業の売上を計上できるようになりました。

電線共同溝工事と通信線路工事の大きな違いは

  • ① 工期が長い
  • ② 設計数量の変更が日常的であり契約外作業が多い
  • ③ 使用する機械や作業員の数が多い

ということです。日々1件工事が完成する通信線路工事とは違い、コスト管理で最も難しい点は「日々の出来高の把握」でした。出来高(売上)を計算するために「作業のグループ化」の考え方を採用しています。

※ポイント2:「絵に描いた餅にしないためのコツ [実行予算・生産管理]」参照

また土木工事は工種も多く、契約内作業と契約外(設計外)作業を確認しながら工事を進めることが重要です。設計変更の協議を行うには、実施工をする弊社が数量を詳細に算出、元請けと一緒に協議し発注者に提案する必要があります。都度協議を行っていかなければ、最終的に契約変更に時間がかかります。土木の現場では、工期内に工事を完成させることはもちろんですが、出来高とコストの両面から確認し、日々の損益を集計できる体制を整えています。

社長の声③ - 人材育成とともに、引き続き新たな分野へ挑戦します

弊社では、従来のメタル線をつなぐことのできる技術を継承すべく、社内研修を通じて継続的に技術者の育成を行っています。日本の建設(通信)業界を支えてきた団塊の世代の方々にも、元気でいる限り雇用を継続し働いて頂ける環境を整えています。今後は、設備でも新設の工事以上に維持補修の分野に精通した会社が求められてきます。弊社では新たな挑戦として、維持補修チームをつくり、まずは経年変化に対する調査を積極的に行っていきたいと考えています。

変化しながら時代に合った建設業者として発展を遂げていきたいと思います。

社長の声 - 総括

共同溝という一般土木へ進出しコスト管理を徹底するようになって、工程を前倒しできる工程管理能力が身につき、また歩掛(生産性)向上についても現場や資材倉庫の「整理整頓」も全社的に意識するようになりました。

弊社では

  • ① 過去に施工した現場経験に基づいた実行予算を作成する
  • ② 日々の日報で進捗・損益を確認する
  • ③ 毎月推進会議を行い、実行予算に変更があればすぐに軌道修正する

という P(計画)D(実行)C(確認)A(修正)のサイクルが確立できました。コスト管理を導入する以前の利益率は5%前後でしたが、今では20%前後の利益率を確保できる体制となりました。下請会社として今後も仕事を確保するには、品質や技術力、そして元請会社が安心できる会社組織の確立が重要です。利益率があがったことで、次の経営戦略や社員の処遇改善へとつなげることができます。これからも独自の品質管理や安全管理も整えながら、経営力を高めていきたいと思います。

次号では、コストを結果で管理するのではなく予定を見ていく「先行管理」の手法と効果について紹介します。

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