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現場探訪 優れた工事成績評定の現場、話題の新技術、人材確保に役立つ情報をレポート

表彰工事

現場の懸案事項を着工前に解決。
地震やゲリラ豪雨にも万全の安全管理で
工事を完遂。

2016/08/30

回の現場探訪は、平成26年度国土交通省関東地方整備局の局長表彰を受けた鬼怒川右支川唐沢筋の「H25ワミ沢第2砂防堰堤改築工事」。この工事を受注された磯部建設株式会社にて、当工事の現場代理人・大毛一浩さん、監理技術者(土木本部次長)・桑久保政次さんに工事の概要と工夫した点、表彰の理由のひとつとなった安全管理のご苦労等についてお話しを聞きました。また、若手建設技術者の育成法、先輩としての接し方等について、土木本部長・山本康夫さんに伺いました。

【工事概要】
工事名 H25ワミ沢第2砂防堰堤改築工事
工期 平成26年3月21日~平成27年2月8日
発注者 国土交通省 関東地方整備局 日光砂防事務所
受注者 磯部建設 株式会社
施工場所 栃木県日光市上栗山
請負金額 94,446,000円
現場代理人 大毛 一浩
監理技術者 桑久保 政次
Q1.今回の工事の概要について簡単にご説明ください。

ワミ沢第2砂防堰堤の基礎洗掘防止対策としての根継腹付けおよび工事用道路の斜面崩壊対策工事です。

写真1)工事用道路土留め工事写真1)工事用道路土留め工事
写真2)工事用道路法面対策工事写真2)工事用道路法面対策工事
Q2.施工場所を地図で見ると、離れた現場を管理する必要があったと思いますが、工程管理の面では大変だったのではないですか。

はい。まず、施工場所が3個所に分かれていたので、1班のチームで1個所毎に進めていくと、施工日数が多くなり工期内の完成が難しくなってしまうと考え、「堰堤補強工と工事用道路工の施工班」と「斜面対策工の施工班」に分け、同時施工をする事にしました。中でもクリティカルとなる堰堤補強工事は、現地踏査をしていく中で、落石や法面崩落の危険など懸案事項が多くありましたので、まずはこれを事前に解決しておこうと思いました。

大毛一浩さん(現場代理人)大毛一浩さん(現場代理人)
Q3.具体的にどのようにして事前対策を行ったのですか。

着工前に社内で施工検討会を開き、現地調査を行った上で、リスク評価を実施し、懸案事項を洗い出しました。その後、監督職員の方にも実際に現場を見てもらい、現地で設計変更審査会を開催し、懸案事項を協議しました。現地で状況を把握しながら協議できたことで、解決策もスムーズに決まりました。着工前に多くの懸案事項を解決できたことで、工事着手後は手戻り作業もなく、予定通りの工程管理ができました。

Q4.今回の工事で特に重視したことは。

何より安全対策に注力しました。当該現場は、渓谷地形の土石流危険渓流であり、堰堤補強工事を行う場所は法面崩落の危険がある場所に工事用道路を作るため、自然災害に対する安全対策が重要と考えたからです。 具体的には、「出水対策」「落石対策」「土石流・ゲリラ豪雨対策」等を行いました。

「出水対策」については、施工場所上流の流域を調査する事はもちろん、漁協の方や地域住民の方に現場周辺の降雨後の出水状況や天気の移り変わり、河川の氾濫する場所や頻度などを事前に聞き取りし、対策方法の参考にしました。結果、ゲリラ豪雨等の出水時に仮設ヤード及び工事用道路が流出しないよう、鉄板を盛土内へ埋設しさらに大型土のうで水路を確保しました。(写真3)

また、道路表面水の排水対策として、本社の資材センターにあったベルトコンベアーの廃材と角材を利用した排水設備を設置しました。(写真4)

また、法面崩落の危険のある場所は、崖錐堆積物及び火山角礫凝灰岩からなる斜面であり、崩壊がひどく、地震や豪雨が発生した場合は、1m程度の落石があってもおかしくない状態でした。そこで、地質調査技士に現地照査をお願いし、安全管理レベルの把握・点検ポイント・安全対策の方法などを検討し、対策方法を立案しました。

写真3)盛土に鉄板を埋設写真3)盛土に鉄板を埋設
写真4)廃材を利用した排水設備写真4)廃材を利用した排水設備
Q5.期間中、地震やゲリラ豪雨も発生したとのことですが。

平成26年9月3日に発生した震度5弱の地震の時は予想通り、不安定な法面から1m程度の落石がありました。事前の対策として、浮石の多い法面にはラス金網をはり、法尻には大型土のうによる落石ポケットを作ったおかげで、1m程度の落石はラス金網でうまく捕捉し、小さな石はうまく落石ポケットで止める事ができました。

写真5)ラス金網で落石を捕捉写真5)ラス金網で落石を捕捉
写真6)土のうによる落石ポケット写真6)土のうによる落石ポケット

当初設計では、大型土のうによる落石ポケットの設置予定はなかったのですが、事前協議で設置を決定したことが功を奏したと思います。

時間雨量100mmを超えるゲリラ豪雨も何度か発生しました。河川が増水し仮設道路が洗掘されそうになりましたが、事前に洗掘防止対策を行っておいたおかげで、被害も最小限ですみました。

また、情報収集の方法として、スマートフォンにより雨雲の動きを事前に察知することで、対策を迅速に実施することが出来ました。国土交通省の「XRAIN」をそれぞれの現場責任者が確認しながら、雨雲の動きをチェックして早めの避難指示を出しました。これは非常に使えるツールだと思いました。特に山間部では、あっという間に天候が変わりますから、お薦めです。

ゲリラ豪雨の動きや上空の風向きなどもわかるようになると、もっと早く正確な判断ができるようになると思います。

写真7)「XRAIN」 写真7)「XRAIN」
※「XRAIN」拡大試行版(国土交通省・川の防災情報)
http://www.river.go.jp/x/xmn0107010.php
Q6.今回の現場では新技術も積極的に採り入れていますが、新技術の情報はどのように入手していますか。

発注者指定によるものもありますが、「NETIS」のホームページを検索して積極的に新技術を採り入れるようにしています。社内の工事部の会議でも常に新技術の情報交換をしていますし、特に今回の工事では安全面を最優先したかったので、社内の安全部にもアドバイスをもらいました。

Q7.今回の工事で、もっとも苦労したこと、想定外だったことは。

今回の工事は山間部での工事であり、自然を相手の仕事でした。自然を相手に仕事をすることは、ある程度の出水などは想定内と考えていましたが、ゲリラ豪雨は、実際に体感してみると何もできない事がわかりました。

自然に逆らわないこと、たとえば河川が増水した場合は無理に止めようとせず、被害を最小限に食い止める対策を事前に考え、準備しておく事が大切であり、苦労したところです。また、想定外の事は、自然を相手に仕事をする以上、多々あることかと思います。想定外なことに、どれだけ落ち込まず前向きに対処していくかが重要だと思います。

Q8.今回の工事で、大毛さんが学んだこと、あわせてこれから現場監督、監理技術者をめざす人たちにメッセージを。

若手技術者として、今回の工事に従事しましたが、工事を順調にそして安全に進めていくには周辺環境の把握、事前調査後の問題提起、工事関係者や地元の方とのコミュニケーションを図り、そしていかに現場を楽しく進めて行くかが大切だと感じました。また、安全第一で施工をする上で、工程管理の重要性を再認識しました。

これから現場に出ていく人たちにも、まずコミュニケーション能力を高めることを第一に考えて欲しいと思います。プライドをもって、仕事をすることは大切ですが、時にそのプライドが仇となることも踏まえ、発注者や作業員とのコミュニケーションをとることで、リスクを排除していって欲しいと思います。日ごろからのコミュニケーション能力を鍛えて、リスクマネジメントにつなげていってください。

Q9.最後に、今回の工事で大毛さんとチームを組んだ監理技術者の桑久保さん、そしてお二人の上司にあたる山本本部長に、若手技術者への接し方や育て方についてお聞きします。

大毛は当社のエース(笑)ですが、今回の工事でも非常に良い結果を出してくれたと思います。砂防堰堤の工事は、山間部での工事になりますから、工事そのものも危険が伴います。また、気象の変化によっても工期に影響が出ます。そうした中で、無事故かつ工期厳守でやり遂げてくれましたから。

直轄の大きな現場を経験することは、設計から積算も含めていろいろなことを学びますから、技術者にとっては大きな財産になりますね。当社としても、できる限り、若いうちに大きな現場を経験させたいと思っています。

山本土木本部長山本土木本部長
桑久保次長(監理技術者)桑久保次長(監理技術者)

しかし、これは地方の建設会社はみんな抱えている問題だと思いますが、公共工事が縮小された時代に新人の採用ができなかったため、特に30代の技術者が不足しています。このあたりは、20年後、30年後を考えると大きな課題です。

また最近は、当社の若手技術者だけでなく、現場の若い技能者に対しても、私たちが若いころのような接し方ではダメだということを痛感します。現場は、日々小さな失敗の繰り返しです。その経験が身になっていくわけですけど、今の若い人たちはその失敗とか先輩からの注意をしまい込んでしまうというか。相談するのも苦手というか。そういった意味で、風通しの良い現場をつくることが大事だと思いますね。作業中の緊張感はもちろん大事ですけど、何かのトラブルに直面した時に、すぐに相談できるような明るい現場をつくるように心がけていますね。

まとめ

今回の取材では、土木本部長、監理技術者(土木本部次長)、現場代理人(工事長)といった3世代の技術者に話を聞くことができました。上司、先輩の関係を超えて、何でも相談できる、何でも話せる関係の良さが伝わってくるインタビューでした。良い現場、良い工事のために、常にコミュニケーションを大切にしている社風が今回の表彰につながったのではないでしょうか。

(コンコム 事務局)

取材協力

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