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現場探訪 優れた工事成績評定の現場、話題の新技術、人材確保に役立つ情報をレポート

表彰工事

NETISの新技術・新製品を積極的に採用。
構造変更にも発注・設計・施工の3者で対応し、
高品質な工事を実現。

2016/10/28

成27年度国土交通省東北地方整備局の局長表彰を受けた「一関遊水地磐井川石畑排水樋門改築工事」。この工事を施工された宇部建設株式会社の現場代理人 阿部裕昭さんと社長 宇部和彦さんに工事の概要と工夫した点等を伺いました。

【工事概要】
工事概要 築堤工事、護岸工事、樋門・樋管工事
工期 平成26年9月10日 ~ 平成27年12月9日
発注者 国土交通省 東北地方整備局 岩手河川国道事務所
受注者 宇部建設株式会社
施工場所 岩手県一関市五代町地内
請負金額 319,680,000円
現場代理人 阿部 裕昭
監理技術者 菊地 賢也、須藤 健太郎
工事内容をご説明ください。

本工事は、磐井川堤防改修工事に伴う石畑排水樋門の改築工事で、磐井川左岸部に流入する五代川を切り回した後に排水樋門を取り壊し、新たに築造するというものです。樋門自体は新設ですが、同じ場所に築造するため改築工事となります。

また、発生土を改良して樋門上下流の築堤盛土と法覆護岸工を行いました。

写真1)旧排水樋門写真1)旧排水樋門
写真2)新排水樋門写真2)新排水樋門
今回の工事で苦労したことは何ですか。
写真3)阿部 裕昭 氏写真3)阿部 裕昭 氏

最初の打合せで、樋門端部の位置決めと取付け護岸の見直し設計(構造変更)が行われて工事に入ることを知らされました。

構造が決まらないために五代川の切り回しに使用する遮水矢板の枚数が決まらないことに加え、東日本大震災の復興のため鋼矢板の入手が順番待ちという困難な状況でもありました。

私たちの仕事は請負工事ですから、発注者からの図面に従って品質の良いものを造ることが仕事だと思っています。しかし、その図面がないことにより造ることができない。モノを発注できない。しかし時間だけが過ぎるということに苦労というよりもどかしい気持ちがありました。

どのように対応されたのですか。

2ヶ月程、矢板の位置・枚数が決まらなかったのですが、発注者・設計者と打ち合わせを重ねて必要数を予測したうえで、未使用分は返却するという注文(リース)をして在庫を確保しました。

詳細設計がなかなか決まらなかったことで苦労はしましたが、発注者・設計者・施工者の3者が一丸となって問題を一つずつクリアしながら工事が進みました。人同士の本気の話し合いによって、手戻りのない最短での施工になったのではないかと思います。

今回の工事で特に重視したことは。

地元住民の方とのコミュニケーションです。

この工事は住宅地に近接しており、地元住民の方々が工事に注目しているということが分かりました。工事開始時の地権者説明会では、何のために工事をしているのか?今何をしているのか?工事はいつ終わるのか?などの声が聞こえてきました。

今回、地元住民の方に安心してもらえるように工事を「見える化」するため、毎月「工事かわら版」を作成しました。作成は私と監理技術者が持ち回りで担当し、現場に掲示するほかに、地区長さんから地区の住宅55軒全てに配布してもらうようお願いしました。

工事かわら版 工事かわら版

写真4)工事かわら版

写真5)メールでの騒音確認写真5)メールでの騒音確認

当然、保安対策として粉塵対策のフェンス囲いや騒音振動計等の監視機器の設置を行い、地元住民の方に極力迷惑をかけないようにも心掛けました。騒音振動計については、常時通信装置式として、リアルタイムで携帯電話にメールが来る設定とし、異常時にはいつでも対応できるようにしました。結果として近隣住民の方から苦情は1件もありませんでした。

「工事かわら版」の効果はありましたか?

現場付近は近隣住民の通勤・通学路や散歩道であったため、常に気にして見てもらっていたようです。ジョギング中の方に挨拶されて「かわら版見たよ」という声も掛けてもらいましたし、新しい樋門への切り替えの際には、住民の方も見学に来てもらえました。

1年以上の現場で地元住民の方とは毎日顔を合わせるので、元気に挨拶をして顔を覚えてもらうこと、何をしているのか知ってもらうことは大事なことだと思います。

今回の現場では新技術も積極的に採り入れていますが、これらは発注者側から指定されたものですか。

当社からの提案です。

コンクリート構造物の頂盤部は、湿潤養生のために「Qマット(KT-980368-VE)」を使用して、品質の確保に努めました。

法面の掘削の際には、「勾配指示器(KT-120055-A)」で法面整形の施工改善を行いました。バケットに取付けた「勾配指示器」のゲージに従い、整形することで均一な法面の整形をすることができ、補助作業員を必要としないことから安全面にも効果がありました。また、当工事ではソフト機器メーカーとタイアップして商品化協力をしながら、GNSSを利用した敷均しガイダンスを使用しました。測量ミスを防ぎ、施工面に大きく貢献することができました。

写真6)Qマットの設置写真6)Qマットの設置
写真7)勾配指示器写真7)勾配指示器
宇部社長にお伺いしますが、これらの新技術の情報は普段どのように入手されていますか。

雑誌、インターネットが主になりますが、使う道具から重機、ITでも建設の分野に関わるもの、建設関連でなくても、活用出来そうなものは分野を問わずに見ています。実際に現場で使ってみないと、そのモノの良さは分からないと考えているので、そうした経験をもとにした情報は大切にしています。今回のQマットや勾配指示器もこの現場のためだけに購入したものではなく、使ってみたいと職員が思う時に使えるように取り揃えていたものです。基本的に社外から会社へ来る外部情報にはすべて目を通していますし、EE東北などの技術展示会や技術講習会など、有効と思えるものは職員が自らの判断で参加出来るように情報共有しています。

阿部さんが現場責任者として日頃心掛けていることなどをお聞かせください。またこれから現場代理人・監理技術者をめざす若手技術者にメッセージをお願いします。

「安全はすべてに優先する」これを20年近く掲げています。命は買うことができません。コンビニが便利になってもどこにも売っていません。「行ってきます」と出た家に「ただいま」と無事に帰ることは大事なことだと思っています。

写真8)「ゼロ災害をめざそう」の旗に現場従事者が直筆サインをすることで全員が安全への決意表明
写真8)「ゼロ災害をめざそう」の旗に現場従事者が直筆サインをすることで全員が安全への決意表明

写真8)「ゼロ災害をめざそう」の旗に現場従事者が直筆サインをすることで全員が安全への決意表明

私がこの業界に入ってから31年が経ちました。パソコン・デジカメが当たり前になり、これからはICT建機による施工が当たり前の時代になってくると思います。とても便利な世の中になり、自分たちはついていくことが難しくなりました。便利な機械やソフトに囲まれて仕事をすることが当たり前になっている若い世代の方たちに何を渡していくことができるのか、その方たちがさらに次の世代に何を渡していくのか、心配でなりません。時代錯誤と言われても構いません、パソコンがなくても電卓を使って、土量計算やヘロンの面積計算や測量がいつでもできる技術を持った現場職員になってほしいと願っています。

聞けば教えてくれる諸先輩も少しずつリタイアされていきます。聞きたくても聞けない時代もすぐに来ると思います。参考書を見てわかることはわずかしかありません。生の声を聞き、苦労して覚えたことは忘れない財産になると思います。

最後に、宇部社長にお聞きします。これから地方の建設業が考えていかなければいけないことなどご意見があればお聞かせください。
写真9)宇部社長写真9)宇部社長

まずは人材の確保と育成が重要と考えます。

当社も建設投資の冷え込みから新卒採用を控えていた時期がありましたが、4年前から地元土木科の卒業生を少しずつ採り始めました。卒業生の育成を通じて、やっと地元工業高校と意思疎通が出来る環境も出来つつあります。高卒の職員達はまず2級土木を取る目標から始まるわけですが、独り立ちできるまでにするには、本っ当に相応の時間がかかることを現在痛感しながら、出来るだけ早い育成の道筋を現在試行錯誤中です。

当社では会社創設以来、技術職だけでなく、直営の技能職員、重機や機械を抱えての自社施工スタイルを貫いていますが、重要なのは常に考えることと、考えたことの実践と繰り返しと感じています。まずは当事者たる人間が自らの強みを分析し、現状のニーズを捉え、需要を掘り起し、問題を解決、考え続けられる力さえあれば、少しずつ改善をしながら必ず前進していくと思っています。

育成に関しては、自社施工現場で撮影した動画で研修を実施しています。中堅・ベテラン職員が何を伝えられるかということを考えることが重要ですので、継続していきたいと思います。

一関周辺地域では降雪量は年々少なくなっていますが、突発的な降雪に対する除雪や災害対応、様々な維持管理に至るまで対応しています。3.7と3.1のグレーダーも所有していますが、道路管理者から維持管理コスト面での管理料が捻出されるようになり本当に助かっています。
品確法が出来たことはもちろんですが、発注者とは受注者として感じられることのコミュニケーションをしっかり取れるように、後進を育てつつ、建設分野はもちろんのこと、地元の情報には更に深化することの必要性を感じています。

現在阿部さんはICT土工の工事に従事されているとのこと。インタビューで時代錯誤と言われた阿部さんですが、最新の工事に試行錯誤しながらも取り組んでいるそうです。技術者として、新たに始まった取り組みを経験し、次の世代に伝える役割を担っていただきたいと思います。

(文責 前田 健二)

取材協力

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