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現場探訪 優れた工事成績評定の現場、話題の新技術、人材確保に役立つ情報をレポート

表彰工事

小さな事故も“ゼロ”、
現場内でのトラブルも“ゼロ”
鋼製スリットメーカーも巻き込んだ、
安全対策を実施。

2017/10/30

回の現場探訪は、平成29年度国土交通省四国地方整備局の局長表彰を受けた「平成27・28年度 上尾後谷堰堤工事」。この工事を受注された株式会社 山全にて、専務取締役の牛尾研太さん、現場代理人・井上裕史さんに工事の概要と事故やトラブルを未然に防ぐための安全への取組等についてお話しを聞きました。

【工事概要】
工事名 平成27・28年度 上尾後谷堰堤工事
工事内容 コンクリート堰堤工、鋼製堰堤工、流路護岸工、索道工
発注者 国土交通省四国地方整備局四国山地砂防事務所
工期 平成28年2月19日~平成29年1月31日
受注者 株式会社 山全
施工場所 徳島県三好市池田町大利地先
請負金額 91,713,600円
現場代理人 井上裕史氏
Q 今回の工事の概要について簡単にご説明ください。

四国の中央部に位置する徳島県三好市池田町大利地先に砂防堰堤を建設するものです。地域を流れる渓流は、平成24年に土砂災害警戒区域に指定されており、上尾後集落の唯一の生活道路を保全する目的で施工されました。工事内容はコンクリート堰堤工、鋼製堰堤工、流路護岸工、索道工になります。

Q 今回の工事で特に重視したこと、注意したことは何でしょうか?
写真1)集落のゴミ収集

写真1)集落のゴミ収集

特にということであれば、ふたつあります。ひとつは、当たり前ではありますが、工事期間中の周辺住民の安全確保と生活の保全です。二つ目は、現場作業員の安全・労災対策です。工事期間中は、当該地区唯一の生活道路である市道を工事用道路として使用しなければなりません。また、山間部の狭い道路ということもあり、大型の車両や重機の搬入も困難でありましたので、道路の維持管理に気を配るとともに、工事車両も4t車に限定するなど、道路の保全に留意しました。また、集落にはゴミ収集車が出入りしていますが、市と相談して、工事中は収集日に私たちで各戸を回り、ゴミを収集して、あらかじめ決めていた工事区域外の受け渡し場所へ運び、ゴミ収集車に引き継ぎました。これも、工事期間内にゴミ収集車と工事車両の事故を防ぐための対応でした。

Q ふたつめの現場作業員の安全・労災対策とはどんなものでしょう?
写真2)現場の様子(施工前)

写真2)現場の様子(施工前)

写真3)通常の施工

写真3)通常の施工

どんな工事現場でも、ちょっとしたミスや想定外の事象によって、事故が発生する危険はあると思います。私は、自分の現場で「労働災害」を起こさないために、事故の可能性を限りなく「ゼロ」に近づける準備をしたいと考えています。特に今回は、山間部の工事ですので、危険度は高くなると思いました。まず気になったのは、鋼製スリットの取付けの際の危険性です。鋼製スリットを連結する際には、鋼管を斜めに吊る必要があります。施工計画時の施工業者との打ち合わせでも、この取付け・連結作業には危険が伴うのではという意見がありました。一般的な施工では、写真3)のように設置角度に合わせて一点吊りするのですが、吊り上げ時に鋼管が不安定になること、また大型のラフテレーンクレーンで施工できれば良いのですが、現場は急峻な狭小作業環境ということもあり、4.9t吊りのクローラークレーンでの作業となったため、鋼製スリットは数十組に分解(0.5t~2.5t)されており、何度も連結作業を行う必要があること、加えて、下で介錯ロープを持つ作業員の安全面にも大きな不安がありました。

Q 具体的にはどのような工夫をされたのですか?
写真4) 井上裕史さん(現場代理人)

写真4) 井上裕史さん(現場代理人)

鋼製スリットの吊り上げ方について、社内で意見交換し、鋼管を二点吊りすれば安全性が高まるのではないかと考えましたが、専用の工具もなければ、実際に吊り上げた際の滑り抵抗の度合いもわからないため、独自対応は難しいという結論になりました。そこで、鋼製スリットメーカーに、鋼管に専用のリブ(吊り管)を溶接してもらえないかと相談しました。しかし、鋼管の一部に溶接を施すと、ひずみや曲りが発生する恐れがあるとのことで、簡単にはいきませんでした。メーカーさんと何度も協議しながら、こちらの意図を理解していただき、前向きに協力していただいたおかげで、リブ付きの鋼管を製作してもらえました。これによって作業も安全かつスムーズに進められたと思います。鋼管の角度調整も容易となり、施工業者の感覚では工期も約半分程度で済みました。

写真5)リブ付き鋼管による施工

写真5)リブ付き鋼管による施工

写真6)リブ溶接部

写真6)リブ溶接部

Q メーカーとの協議にもかなり時間を要したと思いますが、工期に影響はなかったのですか?

実は当該工事は、二期工事で、その前年に進めていた一期工事の間に、鋼管設置の危険性について検討していました。メーカーさんとの協議もすでに一期工事の間に始めていましたので、期間的な影響はありませんでした。

Q その他、安全対策として行ったことはありますか?
写真7)ドローンの遠距離飛行訓練エリア

写真7)ドローンの遠距離飛行訓練エリア

写真8)自社職員によるドローン操作

写真8)自社職員によるドローン操作

上尾後地区は、平成26年12月のゲリラ豪雪の際、倒木などでライフラインが切断され、4日間の孤立集落となりました。当社もその復旧作業に携わりましたが、その時の経験から、災害時の現場との連絡手段の確保が重要だと考えました。平成26年のゲリラ豪雪は、一期工事の着工前でしたが、現場と本社の連絡網として設置していた固定電話、携帯電話、SNSや災害時緊急メールはすべて不通となってしまいました。これを教訓に、UAV(ドローン)を活用した緊急時連絡網の確保を検討しました。当社はドローンを自社保有していますし、操作できる技術者も2名います。ドローンにはGPS機能が搭載されていますので、有事の際には現場の状況をリアルタイムで確認できますし、連絡用の小型無線機を運ぶこともできます。実際にこのような対応が可能かどうか、現場から約2km離れた3地点から、遠距離飛行訓練を行って備えました。

Q 牛尾専務にお聞きします。新技術を積極的に採り入れていますが、自社開発の製品技術もありますね。現場で必要としている技術や製品を自社開発する社風があるのでしょうか?

はい。今回の工事では、当社で開発販売している「ピカコン」を使用しました。この製品は、コンクリートの表面の気泡を抜くためもので、気泡痕を大幅に減少させ、美しい仕上がりを実現します。平成22年度の「NETIS登録技術」活用ランキングでは全国1位となりました。今も多くの現場で活用していただいています。また、立坑掘削作業の際の安全確保と作業効率の向上を目的とした「セーフティガイドレール」も自社開発し、NETIS登録と特許出願をしています。こうした現場の安全管理や作業効率の向上につながる製品や技術を自社開発しているのも、当社が原則としている「直営施工」の姿勢に起因していると思います。『自分たちで何でもするから、どうしたらもっと品質良く、安全に、楽にできるか』を常に社員みんなが考える。それが社風になっているのではないでしょうか。

写真9)ピカコン作業

写真9)ピカコン作業

写真10)セーフティガイドレール

写真10)セーフティガイドレール

【ピカコン/コンクリート表面気泡抜き取り器具】紹介ページ
http://www.our-yamazen.co.jp/pikacon/index.html
【セーフティガイドレール】紹介ページ
http://www.our-yamazen.co.jp/yama/guide/index.html
Q 井上さんは建設業界では若手かつ優秀な技術者ですが、山全さんとして、若手の育成、技術継承、新卒の採用等に関して、どのように取り組んでいますか。
写真11) 牛尾研太さん(専務取締役)

写真11) 牛尾研太さん(専務取締役)

人材育成の面では、資格取得のための受験料や旅費は全額会社で負担しています。資格取得によって規模も大きく、より高いレベルの仕事にチャレンジできるようになります。同時に仕事に対するモチベーションも上がります。雇用面でも当社は、定年制度はなく、働く意欲と技術があればいつまでも働くことができます。現在も70代の職員が前線で活躍しています。実は井上君のお父さんも、現役で働いています。また、幸いなことに、公共工事の削減等で建設業界が冷え込んだ時期も、「不況時こそ優秀な人材を採るチャンス」と考え、毎年、新しい人材を採用してきましたので、20代~70代まで、満遍なく技術者がいることも当社の強みだと思います。特にこれからの中核をなす30代が多くいることも心強いです。

Q 井上さん、これから現場代理人・監理技術者をめざす若手技術者にメッセージをお願いします。

建設業の技術の進歩はものすごいスピードで進んでいます。工法や工種もどんどん多様化して、覚えることもたくさんあります。しかし、技術の本質は現場にあると思います。日々現場で疑問が湧いてくる。その疑問をどうにかして解決しようとすることが大事なことだと思います。今、目の前にある現場の疑問をひとつひとつ確実に解決していくことが、技術者として成長する近道だと思います。

まとめ

会社内でおそらく60代と思われるベテランと、20代の若い社員が部材を手に取りながら笑顔でコミュニケーションをとっている場面を見ました。多くの地方の建設会社が抱えている技術継承も、山全さんには関係ないように思えました。また、「NETIS登録技術」や特許など、自ら必要なものを自分たちで考えて作る。それをビジネスに展開していく。これからの地方の建設業が進むべきひとつの方向を見せていただいたような気がしました。山全さんの企業理念、技術開発のポリシー、人材育成等、興味のある方はぜひホームページを参考にしてください。

取材協力
取材協力・資料提供

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