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現場探訪 優れた工事成績評定の現場、話題の新技術、人材確保に役立つ情報をレポート

表彰工事

着工前から完成まで、先手管理を徹底。
事故・トラブル発生の可能性を最小限に抑える取組。

2018/05/30

回の現場探訪は、平成29年度国土交通省中部地方整備局の局長表彰を受けた「平成27年度 大井川赤松護岸工事」。工期中に大きなトラブルもなく、予定工期内で完遂された工事について、トラブル等の発生を未然に防ぐための先手管理の取組みを、工事を受注された株式会社 山田組にて伺いました。また後半は、今回の工事を担当した監理技術者/村松宏明さん、現場代理人/小花直樹さん、新卒一年目(工事当時)社員/松島竜平さん、それぞれの世代が今回の現場で学んだこと、日々心掛けていることをお聞きしました。これからの人材育成のヒントにしていただければと思います。

【工事概要】
工事名 平成27年度 大井川赤松護岸工事
工事内容 護岸工事、根固・水制工事、構造物撤去工事
発注者 国土交通省中部地方整備局 静岡河川事務所
工期 平成28年3月1日~平成29年3月17日
受注者 株式会社 山田組
施工場所 静岡県島田市赤松地先
請負金額 160,574,400円(税込)
監理技術者 村松 宏明
現場代理人 小花 直樹
※安全管理担当 松島 竜平

先手管理による取組み①

Q 周辺の住居への「井戸涸れ」対応について教えてください

現場周辺には、今でも地下水を井戸でくみ上げ、生活用水に利用している家庭が多くありましたので、工事の挨拶を兼ね、着工の1か月半ぐらい前から全ての対象住戸を回りました。そこで井戸の有無、井戸の深さ、井戸の位置、公共の上水道との併用状況等を聞き取り、台帳・配管図を作成しました。特に井戸で全ての生活用水を賄っている家庭に対しては、この時点で、仮設の上水道を井戸の手前まで引いて、井戸涸れ発生時には速やかに公共水道に切り替えの施工を行えるように対応しました。

図1)井戸調査範囲

図1)井戸調査範囲

写真1)仮設の上水道を設置

写真1)仮設の上水道を設置

先手管理による取組み②

Q 井戸水・河川の生態系に配慮した工事中の濁水対策は?

今回の現場は本流の水量が非常に多く、かつ対岸のせり出した山の影響によって河川幅が狭くなっている箇所でした。また施工箇所の上流部には、相賀谷川との合流部もあるため、大規模な瀬替えが必要でした。しかし、瀬替えのための河床の掘削によって濁水が発生してしまうと、魚類等の生息に悪影響を及ぼすだけでなく、井戸水の濁水にもつながるため、濁水対策には特に配慮しました。具体的には、瀬替えの際に、本流との合流箇所から10m程度を堰として残し、濁水が本流に流出しないようにしました。また、施工箇所の土工事で発生する濁水に対しても仮排水路に沈砂池を設け、さらに沈砂池の入口と出口を対角線上に設置し、沈砂池内の濁水の滞留時間が少しでも長くなるように工夫しました。さらに目視と併せ、常に濁度計で計測しながら濁水の発生状況を把握しました。

図2)瀬替え箇所

図2)瀬替え箇所

写真2)濁度計による濁水状況の把握

写真2)濁度計による濁水状況の把握

先手管理による取組み③

Q 現場見学所を設置したそうですが、その目的は?
写真3)見学所で談笑する様子

写真3)見学所で談笑する様子

周辺住民の方々には、現場説明会を開いて工事の内容と意義を知っていただくだけでなく、現場に「見学所」を設けて、常に住民の方に作業を見ていただけるようにしました。見学所の掲示板には、今どんな作業をしているのか、これからいつまでにどんな作業をするのかといったパネルを掲示しました。作業を「見える化」すること、作業員と住民の方々がコミュニケーションを取ることで、工事に対する安心感を持っていただこうという狙いでしたが、住民の方々が集まって談笑していることも多く、憩いの場としても上手く活用されていたと思います。

先手管理による取組み④

Q その他、着工前に行った事前調整等はありますか?

同時期に同じ大井川の上流の護岸工事と下流のバイパス下部工事が計画されていました。瀬替えによる影響がそれぞれの工事に及ぶことが想定されたため、着工前に関係機関で集まり、瀬替えの方法や段取りについてすり合わせをしておきました。これによって、想定外のトラブルもなく、それぞれの工事も円滑に進められたと思います。また、大井川の上流には、発電用のダムがあり、放水にも注意しました。濁水対策としてはもちろんですが、作業の安全を確保するためにも、事前にダムの担当者と打ち合わせをし、放水時の連絡方法等について細かく確認していたことで、問題なく対応することができました。

これまでコンコムで紹介した「現場探訪/表彰工事」は、想定外のトラブルを適切に解決し、さらに工事の仕上がりも万全であった現場を紹介することが多かったと思います。今回の山田組の護岸工事は、一見すると何のトラブルもなく、粛々と工事を終えたようにも見えます。しかし、そのスムーズな工事の裏には、事前にさまざまなケースを想定し、万が一に備えた先手管理がありました。
次項では、今回の工事に携わった三世代の技術者に、後輩の育成方法、自分の目標、将来像等について聞きました。

Q 村松さんが監理技術者として後輩に接する際に心がけていることは?
写真4)村松宏明さん(監理技術者)

写真4)村松宏明さん(監理技術者)

私たちの世代は、とにかく先輩が怖かった(笑)。怒鳴られながら仕事を覚えていった時代ですね。今はそのやり方では通用しないと思いますが、先輩から後輩に経験を伝えていくということは同じだと思います。今回の工事でも、現場代理人を任せている小花には、「お前に俺の知識と経験を10教える。その中で何を自分のものにするかは自分で判断していいよ。ただ、教わったことは、後輩に10伝えてもらいたい」と伝えました。小花がいろんな現場でいろんな先輩から「10」の教えを聞けば、彼の引き出しは5年後、10年後には相当増えると思います。実際に現場監督として使う引き出しは少ないかもしれませんが、たくさんの引き出しを持っていることが大事だと思っています。次の世代を担ってもらうエースですから、そこは期待も大きいです。上手く伝わっていると良いのですが(笑)。後は、キャラクターに合わせた接し方も考えています。仕事の覚え方も個性によって違いますから、ある程度厳しくした方が良いタイプとか、ヒントを与えて考えさせる方が良いタイプとか。

Q 小花さんは今回の工事でどんなことを学びましたか?
写真5)小花直樹さん(現場代理人)

写真5)小花直樹さん(現場代理人)

痛切に感じたのは、これは村松さんからも良く言われることですが、今日、明日の段取りに集中しすぎて、一週間、一カ月先が見えていないことが多いなということです。今回の工事でも、実は着工前にやっておくべきことが非常に多く、また、工期中も事前準備や確認しなければならないことがたくさんありました。もちろん日々の作業を滞りなく進めることは大事ですが、そうした先手管理ができるようにならないといけないと思いました。これからもいろんな現場に出ると思いますが、一日も早く「こいつなら安心して現場を任せられる」という存在になりたいと考えています。

Q 松島さんが土木の世界に入ったきっかけは? また入社一年目で安全管理を任されたそうですが、やってみてどうでした?
写真6)松島竜平さん

写真6)松島竜平さん

もともと父親が土木関係の仕事をしていたので、自然に高校も土木系を選びました。今回の工事で、小花さんから「安全管理を担当して欲しい」と言われた時は、不安しかありませんでした。実際に工事が始まってからも、年上やベテランの作業員を前に、毎朝、安全作業の確認を行うのですが、自信のなさから声も小さく、反省ばかりでした。施錠忘れ等、同じ失敗を繰り返してしまったこともあり、先輩方にはいろいろと迷惑をかけてしまったと思います。三年目になり、少しはマシになったとは思いますけど、まだまだ自分で考えて動くことができないレベルです。今はとにかく、先輩たちの話を聞いて、ひとつでも多く自分の身に着けること。任された仕事を確実にこなせるようになりたいと思います。

おわりに

今回の取材では、目に見えない準備や先手管理が、事故やトラブルの可能性を減らすことを学びました。また現在、建設業界は若手入職者の減少、技術者育成といった課題を抱えていますが、お話を伺った三人それぞれが、自分の立場を理解し、下の世代に伝え、上の世代から受け継ごうとしている姿勢が伝わってきました。建設業は間違いなく現場でしか学べない産業です。小花さん、松島さんが、現場で多くのことを学び、次の監理技術者として活躍する日を楽しみにしています。

取材協力・資料提供

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