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現場探訪 優れた工事成績評定の現場、話題の新技術、人材確保に役立つ情報をレポート

表彰工事

砂防堰堤工事に、新技術を積極的に採用。
想定外の仕様変更にも的確に対応。

2013/09/20

写真①/奥ノ院砂防堰堤完成写真写真①/奥ノ院砂防堰堤完成写真

成24年度の国土交通省 北陸地方整備局の局長表彰を受けた「奥ノ院砂防堰堤工事」。その工事について、発注者である北陸地方整備局 飯豊山系砂防事務所の川村修蔵副所長、酒井優工務課長、当工事の監理技術者である株式会社 富樫組の太田貴博さんに伺いました。

【工事概要】
工事名 奥ノ院砂防堰堤工事
工事目的 土石流危険渓流対策
工期 平成24年3月10日~平成25年3月25日
発注者 国土交通省 北陸地方整備局 飯豊山系砂防事務所
請負者 株式会社 富樫組
施工場所 新潟県新発田市菅谷地先
請負金額(税込) 117,495,000円
監理技術者 太田貴博

軟弱地盤対策に、砂防工事ではあまり例のない
トップベース工法(NETIS)を採用。

川村副所長川村副所長

ず、今回の工事の概要について、北陸地方整備局 飯豊山系砂防事務所の川村修蔵副所長、酒井優工務課長にお伺いしました。

『現場である奥ノ院の沢は、氾濫区域に8戸の人家と市道、公園、公共施設を抱える土石流危険渓流です。ポイントは軟弱地盤への対応と保全対象家屋が上水として利用している井戸水への対応でした。水質を悪化させることなく、堰堤の基礎地盤支持力不足を解消しなければなりませんでしたので、完成写真からは想像もできないほど苦労の多い工事だったといえます』。

写真②/バックホウ沈下の様子写真②/バックホウ沈下の様子

『軟弱地盤の堰堤工事ということで、計画前は置換工法と地盤改良工法の両方を検討しましたが、セメント系の改良材は、上水の水質悪化を招くことが懸念されたため、施工実績も多く、経済性にも優れた置換工法を計画採用しました。しかし、実際に現場で試掘をしてみると、想像以上に含水率が高く、表土をはぎ取る程度で水が浮き出てくる状況で、掘削作業開始時には、バックホウが埋まってしまうほどでした』。

『再度の現地調査の結果、堰堤下流の不透水層が堰のような役割を果たしているため、地下水が流下せずに現場に貯まり、結果として地下水位が上がっていることがわかりました。地下水位を下げるため、地下水が流下しやすくなるよう不透水層に仮排水工を設置しました。また、施工エリアに流入してくる地下水を事前に排除するため、計画堰堤の上流に流入地下水排除用の井戸を設置して、水中ポンプによる常時排水を行いました。これによって地下水位は大幅に下がりました』。

『しかし、地下水位が下がったとはいえ、元々の含水率が高く、この現場で3メートル(地盤面より5メートル)もの掘削を行うことは非常に困難であり、施工中に湧水等による法崩れの可能性も高く、安全面からも根本的な工法の見直しに迫られました。その間、事務所の所長以下、工務課の全職員が現場に入り、現状確認と対策検討を行いましたが、この再検討によって、約二カ月の工事中断を余儀なくされました』。

写真③/暗渠排水のための掘削写真③/暗渠排水のための掘削

酒井工務課長酒井工務課長

『数度にわたる検討の結果、砂防工事ではあまり例がないものの、道路工事等の軟弱地盤の改良工として実績のある「トップベース工法」を検討してみようということになりました。トップベース工法であれば、水質に影響を与えることなく、掘り下げの深さを減らし安全施工ができるのではないかと期待したからです』。

『トップベース工法の採用にあたっては、あらかじめ負荷テスト等も実施しましたが、受注者側もトップベース工法のノウハウを短時間で良く理解してくれたと思います。今回表彰した理由も、設計変更や想定外の事象に対して、その都度的確に対応し、新しい工法にも積極的に取組みつつ、かつ品質を担保した点が挙げられます』。

受注から完成まで想定外の連続にも、
工夫とチャレンジ精神で工事を完遂。

下水・軟弱地盤への対応、新技術「トップベース工法」へのチャレンジなど、想定外の対応が多かった工事で実際の施工者は、どんな現場監理を行ったのか、当工事の監理技術者、株式会社 富樫組の太田貴博さんにお話しを伺いました。

いろいろとご苦労の多い工事だったようですが、受注時に遡って、当時の想いや行動を振り返っていただけますか?

富樫組・太田貴博さん富樫組・太田貴博さん

『私自身、飯豊砂防の工事をここ六年ぐらい担当していますので、この工事を受注した際も、特別な不安はありませんでした。しかし、実際に現場に入ると、あまりの軟弱地盤に驚き、「この現場で、なぜ地盤改良でなく置換工法なのか?」といった設計への疑問がわきました。事務所に確認したところ、住民の地下水利用などの状況を知り、納得はできましたが、実際に掘削を始めた直後、バックホウが沈下してしまったときは、不安というより、「大丈夫なのか?」という怖さが先にたちました』。

軟弱地盤への対応として、まず地下水位を下げるための井戸を作ったそうですね?

写真④/井戸の設置写真④/井戸の設置

『はい。しかし、現場に商用電源を引いて強制排水を行うためには、申請や手続きで一カ月近くかかることがわかり、何とか代替え案はないものかと、社内検討しました。結果、良く使うコルゲート管に穴を開けて地中に埋め込み、ポンプと発電機でくみ上げるといった簡単な仕様の仮設井戸を提案しました。これで十分に排水効果は得られましたと思います』。

地下水位はある程度下がったものの、工事はそのままスムーズに進んだわけではなく、トップベース工法の採用という設計変更に至ったわけですが、その経緯は?

『地下水位は下がったとはいえ、含水率は高く、その中で置換基礎のために約3メートルも掘り下げることは非常に危険を伴うと思いました。そこで事務所の所長さん以下、工務課のみなさん全員に現場へ入ってもらい、地盤の現状を確認していただきましたが、想いは同じでした』。

『この時点で、設計変更が検討され、工事は約二か月間中止となりました。本来であれば、工期のヤマを迎える7~8月の二か月間の中止でしたので、非常に残念でしたが、安全面を考えれば仕方がなかったと思います。中止の期間中、何度も事務所と対策を検討しましたが、適切な解決策はなかなか見つかりませんでした。そんな中、川村副所長が発言した「道路工事などで軟弱地盤対策に使用しているトップベース工法はどうだろう?」の一言がきっかけで、一気にトップベース工法の採用に動くことになりました』。

『トップベース工法は私自身も初めての工法でしたので、まずノウハウを持つ専門業者を現場に呼んで、適応できるかどうかの試験を行いました。結果、十分に適応できるという判断を確認した上で、工事を進めていきました。当初は全く不安がなかったと言えば嘘になりますけどね。トップベース工法の採用によって、掘削深も3メートルから1メートルに減らすことができ、安全面に関してはかなり安心できました』。

図2)トップベース工法を採用した設計書図2)トップベース工法を採用した設計書

図1)計画当初の置換工法による設計書図1)計画当初の置換工法による設計書

二カ月間の中止や新工法の採用などによって、秋完成が翌年に延び、寒中コンクリート対応になりましたね?

写真⑤/除雪で生コン車の通行を確保写真⑤/除雪で生コン車の通行を確保

『コンクリート打設の面では一番いい時期に中止になりましたね。私自身、寒中コンクリートの施工経験は何度もありますが、これまでの工事と同様、養生や温度管理に気を遣いながら工事を行いました。温度管理にはデータロガーを用いて、リアルタイムに外気温、仮囲い内温度、コンクリート内部温度を測定管理しました。打設の前日には、練炭を焚いて型枠材の凍結防止対策を行ったり、打設当日は、朝、運搬路の除雪をして生コン車の通行を確保しました。

また、打設中は氷雪の混入を防ぐ為、コンクリートホッパーをシートで養生したり、締固めの完了した箇所にシートを敷設したりしながら細心の注意を図りました。

  • 写真⑥/材料の品質低下を防ぐため、コンクリートホッパーを養生写真⑥/材料の品質低下を防ぐため、
    コンクリートホッパーを養生
  • 写真⑦/温度管理の工夫写真⑦/温度管理の工夫
その他、特別に対応された点はありますか?

写真⑧/現地で実施したボンテラン工法写真⑧/現地で実施したボンテラン工法

『堰堤の掘削で発生した土は、埋戻しに使用するため、現場近くに仮置きする予定でいたんですが、あまりにも含水率が高く、公園等に流出する恐れがあり、対処に困りました。冬期ということもあり、受け入れてくれる業者もなかったので。幸い、当時の事務所長さんが、砂防工事の経験が豊富な方で、状況を見るなり、「ボンテラン工法を使えばいい」と教えてくれました。掘削土に古紙破砕物等を混ぜ、含水率を調整する工法で、これによって問題なく仮置きすることができました』。

参考
最後に、監理技術者として日ごろ心がけていること、今回の工事を通じて学んだことを教えてください

『私が今主に担当している砂防の現場は、「山ありき」の工事です。掘ってみないとわからないことも多く、変更があるのが当たり前のような工事だと思います。そうした中で、大事に思っているのは、「決断力」です。臨機応変に対応することが当然のように求められる現場ですので、何か気になることがあれば、発注者とすぐに協議する。その際には必ず自分なりの意見を言うように心がけています。自分の判断が一日遅れれば、工期はすぐに数日単位で遅れます。その結果、下請業者の方の作業日程にもロスが発生し、人件費などの上昇にもつながりますから』。

『今回の工事では、私自身これまでにない勉強をさせていただいたと思っています。事務所の所長さんや副所長さんから教えていただいた「トップベース工法」や「ボンテラン工法」といった新しい技術の経験もできましたし、社内で思案した仮設井戸の製作など、これからの工事に活かせる「私の幅」を広げてくれた工事でした』。

コンコム事務局より

注時の計画から大きく変更になったこの「奥ノ院砂防堰堤工事」。計画通りに完成していれば、もしかしたら「表彰工事」の対象にはならなかったかもしれません。砂防工事という特殊な現場ゆえの事象とはいえ、起きた想定外の事項に対して、常に前向きに、「どうしたら対応できるか」を発注者、受注者がともに考え、見事に完遂した工事だったのではないでしょうか。僭越ながら、コンコム事務局では、今回の工事は発注者も同時に表彰されるべき工事ではないかと思いました。

取材協力

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