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建設ツール

建設工事の「すぐれもの」

2016/10/03

設工事の品質確保と生産性の両立。建設技術者の皆さんは日々、その両立に苦労されていると思います。そこで、CONCOM「現場探訪~建設ツール~」では、より良い品質の構造物を作り上げるために役立つ、建設工事の「すぐれもの」を紹介していきます。

第1回として、これまでもCONCOMにて取り上げている、土木学会350委員会の委員長 田村 隆弘氏(徳山工業高等専門学校 教授)に品質確保に対する思いをご寄稿いただきました。また、「すぐれもの」第一弾として「追加養生」の効果とその実例を350委員会委員 阿波 稔氏(八戸工業大学工学部 教授)にご紹介いただきました。

「コンクリート構造物の品質確保と大和魂」

田村 隆弘

ブラジルのリオで選手たちが熱く戦いを繰り広げた、オリンピック・パラリンピックが終了した。オリンピックでもパラリンピックでも金メダルを目指して自身の限界と戦い流す汗と涙は、自ずと観戦する者をも歓喜の渦に巻き込んでいく。そして、表彰式。国旗を背に金銀銅の表彰台では、高いところに登った選手ほど深く頭を下げてメダルを首にかけてもらう。「実るほど、頭(こうべ)を垂れる稲穂かな。」を絵に描いたような光景である。

4年後の2020年は、東京オリンピック・パラリンピックである。首都圏では、世界中からトップアスリートのみならず観客を迎える準備、インフラの整備が佳境に入ってきた。競技は選手たちに任せるしかないが、オリンピック・パラリンピックのためのインフラの整備は、建設業界が主役である。「日本のコンクリート構造物の品質を世界中から訪れる人々に感動を与えるものに」と、思うのは食(和食)さえも世界遺産にしてしまう大和魂DNAの仕業か。

近年、コンクリート構造物の品質が、特に耐久性の観点からも追求されるようになってきた。それは、決して根性論ではなく、日本人の“良いもの”に対する執着心と誠実さが生み出す成果である。鉄筋コンクリート構造物の耐久性に影響を及ぼす品質は、アルカリ骨材反応などのコンクリート自体の自己破壊を除けば、内部の鉄筋を腐食から守ることが出来るか否かに掛かっている。故に、ひび割れ対策を施し、かぶりコンクリート(表層品質)を緻密にすることが品質確保に繋がることは自明である。

では、緻密なコンクリートを作り出すにはどうすれば良いか。

テーマが決まると工夫が始まるのが日本人である。さまざまなアイデアが出始めた。材料の製造管理から施工時の工夫、そして、養生まで。勿論、コストにも配慮した上で、目的を達成する機能を備えたアイデア用品が建設現場に登場し始めている。これらのアイデア用品で、これからの日本のコンクリート構造物の耐久性は着実に進化する。まさに高品質のコンクリート構造物が各国からのお客様を“お・も・て・な・し”する。

養生~橋梁下部工・函渠工を対象とした追加養生による緻密性の向上~

八戸工業大学 阿波 稔

1.はじめに

「養生」はコンクリートが所要の品質を確保するための重要なプロセスである。適度な温度のもと十分な湿潤状態を保つことでセメントの水和反応が促進されるとともに、急激な温湿度の変化や有害な作用を受けないよう保護することによりひび割れ等の抑制も期待することができる。土木学会コンクリート標準示方書「施工編」では、十分な給水養生を行った場合を想定し、コンクリートの強度や初期凍害に及ぼす養生条件の影響を参考に検討された湿潤養生期間の標準が示されている。さらに、コンクリートの品質向上が期待できる場合には、施工の効率性や経済性等に悪影響を及ぼさない範囲でなるべく湿潤養生期間を長くすることが望ましいとされており、実際の現場おいては簡便、かつ効果的な養生を実施することが肝要となる。

このようなことから、2015年に国土交通省東北地方整備局が策定した橋梁下部工や函渠工等を対象としたコンクリート構造物の品質確保の手引き(案)では、現場条件や経済性を考慮した上で、コンクリートの緻密性の向上を図るため、共通仕様書に定められた養生期間に加えて「追加養生」として封緘養生または湿潤養生を行うことが推奨されている。特に現在建設が進められている復興道路等のコンクリート構造物は、冬期間に凍結防止剤の大量散布が予想されることから、リーズナブルな養生を実現し劣化因子に対する侵入抵抗性を確保することが求められる。

ここでは、主に復興道路の現場で表層部コンクリートの緻密性を向上させる目的で実施されている追加養生の取組みやその効果について報告する。

2.緻密性の向上を目的とした追加養生の例

筆者が関係した復興道路等の現場で実施されているコンクリートの追加養生の事例を紹介する。工期に支障がない範囲での型枠存置期間の延長や型枠脱型後にシート被覆(写真-1)を行うことで、表層部コンクリートからの水分逸散を抑制することが可能となり、標準養生と追加養生を合わせて2~3週間程度の期間を設けている現場が多い。特に冬期施工においてはコンクリート表面の保湿・保温対策を踏まえてポリエチレンシート(気泡緩衝材)が使用されている。このようなシート被覆による追加養生を実施する場合、脱型直後の乾燥防止やシートの密着性を向上させるため、コンクリート表面を適度に散水してから速やかにシートを敷設するとよい。これらの保水を主目的とした封緘養生(型枠存置期間の延長、シート養生)は工程への影響も限定的であることから経済的にも優位といえる。

また、湿潤状態を確実に維持するため湛水養生(写真-2)や水搬送シートによる給水養生(写真-3)を実施している現場も一部で見られる。さらに、事例は少ないがマスコンクリートの温度ひび割れ抑制のためのパイプクーリングと散水養生(写真-4)も構造物の状況に応じて併用されている。

  • 写真-1 ポリエチレンシート(気泡緩衝材)による保湿・保温養生写真-1 ポリエチレンシート(気泡緩衝材)による保湿・保温養生
  • 写真-2 湛水養生写真-2 湛水養生
  • 写真-3 コンクリート給水養生用水搬送シート写真-3 コンクリート給水養生用水搬送シート
  • 写真-4 パイプクーリングによる温度ひび割れ抑制と散水養生写真-4 パイプクーリングによる温度ひび割れ抑制と散水養生
3.脱型後の追加養生の効果

脱型後の追加養生の効果を評価するため表層透気試験(写真-5)を実施した。図-1は脱型後に追加養生を実施していないケース(六戸大橋下部工)、脱型後にポリエチレンシート(気泡緩衝材)により保温・保湿養生を実施したケース(玉川大橋下部工)、脱型後に乾燥収縮低減型の養生剤(塗布量:約200g/m2)を塗布したケース(夏井地区橋梁下部工)の試験結果である。この内、玉川大橋下部工と夏井地区橋梁下部工は、施工者、生コン工場、コンクリートの仕様が同じ構造物である。脱型後に追加養生を実施していない六戸大橋下部工では、面的な微細ひび割れの目視評価点が2点台(4段階評価の下から2番目)であり、表層透気係数も10×10-16m2を超える部位も認められた。一方、脱型後にシート養生を実施した玉川大橋下部工では、面的な微細ひび割れの評価点は多くの部位で3点であり、表層透気係数も0.1×10-16m2程度であった。これは、脱型後に速やかにシート被覆を開始することによって保水や保温効果が発揮され、コンクリートの緻密性が向上したものと推察される。また、追加養生として養生剤を塗布した夏井地区橋梁下部工の表層透気係数は、0.3~12×10-16m2の範囲にあり、シート養生と比較して面的なバラツキも多い結果となった。このことから、脱型後の追加養生として養生剤を使用する場合には、施工や構造物の設置環境等を考慮して適切な材料選定を行うとともに、均質な施工が実現できるよう配慮することが望まれる。

  • 写真-5 表層透気試験写真-5 表層透気試験
  • 図-1 表層目視評価の結果(六戸大橋下部工、玉川大橋下部工、夏井地区橋梁下部工)図-1 表層目視評価の結果
    (六戸大橋下部工、玉川大橋下部工、夏井地区橋梁下部工)

表層透気係数と脱型後の追加養生も含めた養生日数との関係を図-2に示す。この図は筆者がこれまでに⻘森県・岩⼿県内で調査した実構造物(橋梁下部工、函渠工)の中から高炉セメントB種、W/C:50~55%、一般型枠の条件のコンクリートの結果をもとに整理したものである。追加養生は封緘養生(型枠存置期間の延長、シート養生)を行っているケースとした。なお、参考として函渠工において給水養生および湛水養生等を行ったケースも記載した。追加養生として封緘養生を行った場合、養生日数の経過に伴い表層透気係数は大きく低下する傾向が認められる。このことから、現場において実用性の高い封緘養生を行うことはコンクリートの緻密性を向上するための有効な手段の一つといえる。また、理想的な湿潤養生に近い給水・湛水養生等を採用した場合、封緘養生と比較して表層透気係数がさらに減少している。特に夏期施工においてはコンクリートの温度上昇を抑制することにもつながり、より高い養生効果を実現することによって養生期間の短縮が期待できる可能性がある。

図-2 表層透気係数と養⽣⽇数の関係
図-2 表層透気係数と養⽣⽇数の関係

4.おわりに

実構造物において適切な追加養生を行うことは、コンクリートが本来有している緻密性を引き出せる可能性があり、工期や経済性を考慮し所要の品質を確保するための養生期間を設定することが大切である。しかしながら、実構造物において養生期間と耐久性を確保するために要求される緻密性との関係を示すデータは必ずしも十分ではなく、今後さらに寒冷地域での耐久性の視点から必要とされる養生方法・期間について室内試験と現場調査の両面から検討を深める所存である。

参考文献

1)土木学会:コンクリート標準示方書「施工編」、2012

2)国土交通省東北地方整備局:コンクリート構造物の品質確保の手引き(案)(橋脚、橋台、函渠、擁壁編)、2015

3)阿波 稔・迫井裕樹・金濱巨晃・音道 薫:函渠工・橋梁下部工におけるコンクリート構造物の品質確保の取組とその検証、コンクリート工学年次論文集、Vol.38、No.1、pp.1611-1616、2016

4)阿波 稔:寒中コンクリートを用いる構造物の品質確保、シリーズ「コンクリート構造物の品質確保物語」⑦、道路構造物ジャーナルNET、2016

5)CONCOM:耐久性の高いコンクリート構造物をつくるための品質評価ツール~SWATとトレント法~、2016

「目視評価」についてのCONCOM記事はこちら
  • 【特別レポート】
    コンクリートのひび割れ問題と品質確保に真向から取り組む
    ~山口県発の品質確保システムと東北、近畿への展開~

    http://concom.jp/contents/report/vol31.html(要ログイン)
「表層透気試験」についてのCONCOM記事はこちら

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