ConCom 会員ログイン

ConCom 掲示板

こんなときはどうしよう? 今さら聞けないこんなこと これって正しいの?

建設現場で直面する課題、日ごろの作業の疑問、資格試験の相談など。みなさんで盛り上げてください。

掲示板を見る

建設産業図書館の優待利用方法 ConCom会員限定での優待利用です

お役立ちリンク集 日々の作業で使える情報へ一発リンク

ご意見・お問い合わせ ConComへの要望・ご質問はコチラから

現場探訪 優れた工事成績評定の現場、話題の新技術、人材確保に役立つ情報をレポート

建設ツール

建設工事の「すぐれもの」
山口県コンクリート施工記録データベースの活用

2017/03/31

設工事の品質確保と生産性の両立。建設技術者の皆さんは日々、その両立に苦労されていると思います。そこで、CONCOM「現場探訪~建設ツール~」では、より良い品質の構造物を作り上げるために役立つ、建設工事の「すぐれもの」を紹介していきます。

第2回として、施工時の情報を蓄積した「データベース」の概要とその活用事例と効果を、一般財団法人山口県建設技術センターの 福田 将之氏にご紹介いただきました。

第1章 山口県コンクリート施工記録データベースについて

【構築の経緯(背景)】

山口県では、新設コンクリート構造物に発生するひび割れの抑制を目的として、「コンクリート構造物ひび割れ抑制システム」を構築し、平成19年から運用を開始しました。平成26年には、システムの目的を品質確保に拡大し、「品質確保システム」として今日まで継続して運用しています。

また、運用にあたり山口県では、積極的な取組みを展開していくため、発注者、設計者、施工者、製造者の各関係者の技術的判断力を養うための手助けとなるよう「コンクリート構造物品質確保ガイド」(以下「ガイド」という)も取りまとめています。

このシステムは、図-1.1に示したように、ひび割れ抑制および品質確保を図り、構造物の耐久性の向上を目的にするものです。

まず、ひび割れ抑制としては、次の四つの方法によります。

「適切な施工時期」

・水和熱による温度ひび割れを減らすために出来るだけ夏の施工を避ける。

・避けることができない場合には、材料による対策を強化する。

「適切な打ち継ぎ間隔」

・先行リフトの拘束を軽減するために、可能であれば打ち継ぎ間隔を短くする。

「材料等による適切な対策方法」

・ひび割れに直交する補強鉄筋、誘発目地、膨張材などを発注仕様に組み込む。

「施工の基本事項の遵守」

・コンクリート標準示方書施工編に規定されている基本事項に対して忠実に丁寧な施工を行う。

さらに、ひび割れ抑制以外の品質確保としては、「施工の基本事項の遵守」により、表層(かぶり部分)の緻密化・均一化を行ったうえで、「鉄筋組立の精度確保」「防水対策」を行うことで品質確保を目指すものです。

なお、システムの詳細については、山口県ホームページの「コンクリート構造物の品質確保」をご覧ください。

「品質確保」概念図図-1.1「品質確保」概念図

「品質確保システム」の中核をなしているのが「コンクリート施工記録データベース」です。データベースに蓄積されたデータは、設計や施工の参考資料として活用されるとともに、基準書の改定にも活用されます。

図-1.2「システム構成図」図-1.2「システム構成図」

このデータベースに蓄積されている「コンクリート施工記録」は、構造物のリフトごとの詳細なデータです。工事の基本情報、構造諸元、ひび割れ抑制対策、コンクリート材料、施工時の諸条件、打込み後のコンクリートの温度履歴、養生条件、発生したひび割れの情報など、コンクリート構造物を施工した際の情報を記録しています。

図-1.3 「コンクリート施工記録(サンプル)」図-1.3 「コンクリート施工記録(サンプル)」

なお、山口県では、これから新たに建設する構造物のひび割れ抑制対策を検討する場合に、形状等が似た類似構造物の「コンクリート施工記録」を参考にするほか、ひび割れが発生した際には、発生原因を究明するためのデータとして「コンクリート施工記録」を活用しています。

このデータベースは、設計者・施工者・発注者が自由に閲覧やダウンロードができるよう、(一財)山口県建設技術センターのホームページで公表しています。

これにより、自社の施工実績のデータを豊富に保有していない施工者でも、山口県が発注する工事全体の施工実績を分析できるため、適切なひび割れ抑制対策を検討し、実施することが可能となっています。

【データベースの現状】

「データベース」と言えば、特別なシステムと思われがちですが、現状のデータベースは、「エクセル」を利用した集計表と「コンクリート施工記録」の閲覧機能から構成されています。

平成19年のシステム運用開始から平成29年2月現在まで、1,300件を超える「コンクリート施工記録」が蓄積されています。

図-1.4 「エクセルのデータベース画面の抜粋」図-1.4 「エクセルのデータベース画面の抜粋」

第2章 データベースの活用方法について

山口県では、設計段階からデータベースを活用して、ひび割れ抑制対策の検討を行っています。また、実際の施工において、「打込み時期」や「リフト高」を変更する場合や、設計段階で検討されたひび割れ抑制対策と異なる対策に施工者が変更したい場合にも、データベースを活用して発注者と協議することができます。

本章では、具体的な2種類の構造物を題材として、データベースを活用したひび割れ抑制対策の検討例とコンクリート施工記録にある温度計測記録の活用例について紹介します。

1.データベースの活用によるひび割れ抑制対策の検討例

(1)橋台たて壁

ひび割れ抑制対策を検討するA1橋台とA2橋台たて壁の諸元は表-2.1及び図-2.1に示すとおりです。橋台幅(橋軸直角方向の長さ)がA1橋台では15.2m、A2橋台では23.2mと比較的長い構造物で、ここではひび割れ抑制対策として補強鉄筋の設置の要否について検討します。

表-2.1「施工(設計)する構造物の諸元」表-2.1「施工(設計)する構造物の諸元」
図-2.1「施工(設計)する構造物の配筋図」図-2.1「施工(設計)する構造物の配筋図」

まず、データベースからに類似した構造物のデータを抽出します。

ここでは表-2.2に示す条件で抽出しました。

次に、抽出したデータをもとに図-2.2に示すグラフを作成します。ここでは、横軸を鉄筋比、縦軸を最大ひび割れ幅としてグラフを作成しました。

本構造物はA1橋台、A2橋台ともに鉄筋比は0.09%ですが、鉄筋比0.09%程度では、打込み時期を問わず最大ひび割れ幅が0.15mm以上の有害なひび割れが発生していることがわかります。また、鉄筋比が0.3%以上になると、「有害なひび割れ」の発生事例が少なくなっていることが分かります。

そこで、本構造物では、ガイドに示す橋台たて壁の補強鉄筋追加後の鉄筋比の目安である0.3%を確保するように、補強鉄筋を設置することとしました。

「有害なひび割れ」についてですが、山口システムでは、ガイドにおいて補修を要するひび割れ幅の基準を定めており、この規準に満たないひび割れを「無害なひび割れ」、超えたものを「有害なひび割れ」と呼んでいます。

表-2.2「類似構造物の抽出条件」表-2.2「類似構造物の抽出条件」
図-2.2「鉄筋比と最大ひび割れ幅のグラフ」図-2.2「鉄筋比と最大ひび割れ幅のグラフ」
図-2.3「補強鉄筋を追加した配筋図」図-2.3「補強鉄筋を追加した配筋図」

(2)ボックスカルバート

ガイドでは、外部拘束による温度ひび割れが発生しやすいボックスカルバート側壁におけるひび割れ抑制対策として、誘発目地の設置による対策が明記されています。

例えば図-2.4に示すボックスカルバートと類似した構造物のデータを抽出すると、表-2.3のとおり誘発目地を設置していない構造物で有害なひび割れが発生していることが分かります。

このため、本ボックスカルバートにおいては、ひび割れ抑制対策として誘発目地を設置することとしました。また、誘発目地の設置間隔は、施工時期が12月~4月と比較的コンクリート温度が低い時期であることから、ガイドに示す目安を参考に、誘発目地間隔が5.0m以内となるように設置することとしました。

図-2.4「断面図及び側面図」図-2.4「断面図及び側面図」
表-2.3「類似構造物のデータを抽出結果」表-2.3「類似構造物のデータを抽出結果」
2.コンクリート施工記録に記載された温度計測記録の活用例

一般的に、ひび割れの発生の確率は、打込み時のコンクリート温度が高い場合に高くなります。また、コンクリート表面の温度が急激に下降した場合も、コンクリートの内外温度差が大きくなるため、ひび割れの発生確率が高くなる傾向があります。したがって、外気温とコンクリート内部温度を計測しながら、適切な養生方法や時期を選定し、実施する必要があります。

データベースには、施工記録として「養生方法」や「温度計測記録」が蓄積されています。養生方法や期間などに関する施工計画を作成する際には、類似構造物の施工記録を活用して、図-2.5に示すとおり養生方法や時期等を参考にすることができます。

図-2.5 「コンクリート温度履歴と養生方法例」図-2.5 「コンクリート温度履歴と養生方法例」

このほか、「コンクリート施工記録」には、運搬・打込み、締固めの状況や養生の状況等も記録されていますので、類似構造物を施工する際の参考にしていただきたいです。

第3章 新システムの運用について

現在のデータベースは、エクセルの集計表により広く公開していますが、将来的にデータが増えてくると、エクセルでは検索に時間を要するため、データベースの管理やデータの活用に支障が生じる可能性があります。

データが増加した場合でも、利用者が検索やコンクリート施工記録の閲覧を容易に利用できるように、新システムをデータベース化し再構築しています。

なお、データ検索機能により抽出したデータは、CSV形式で出力できることから、出力後は、これまでのエクセル形式の集計表と同様にグラフの作成やデータの分析が可能です。

この新システムは、現在(一財)山口県建設技術センターのホームページで公開し試行的に運用しています。(図-3.1は、新システムの検索画面と検索結果の抜粋を示す)

図-3.1「試行中の新システム検索画面と検索結果の抜粋」図-3.1「試行中の新システム検索画面と検索結果の抜粋」

第4章 課題と今後の展開について

データベースには、様々な施工者が作成したコンクリート施工記録が蓄積されており、これらのデータを活用し、適切な品質確保対策を導き出すためには、「施工由来の不具合のない」、「記載ミスのない」良質なデータが蓄積されていくことが求められます。

こうした良質なデータを蓄積していくためには、システム管理者とシステム利用者が連携し、図-4.1に示すようなサイクルを活性化することが求められます。サイクルの活性化により、データベースの利用が高まることで、品質が確保された多くのコンクリート構造物が生み出されていくと考えています。

なお、サイクルを活性化するためには、コンクリート構造物の品質確保に向けた、コンクリートに携わる各プレイヤー(発注者、施工者、設計者、製造者)の協働意識が欠かせません。各プレイヤーが技術力の向上を図り、自発的また積極的にコンクリート構造物の品質確保に取組むとともに、今後は、品質確保された構造物の中から、立地条件等により「会いに行ける模範的構造物」を選定し、品質に関する長期間の観察・分析への活用や、関係者の研修・見学にも活用することで、品質が確保された構造物の建設につなげていきたいと考えています。

図-4.1「データベースシステムの良質化に向けたサイクルの活性化イメージ図図-4.1「データベースシステムの良質化に向けたサイクルの活性化イメージ図

また、データベースには、施工時の材料、打込み、ひび割れの状況など、構造物の維持管理を行っていく上で、非常に有益な情報が蓄積されています。

将来、不具合が発生した場合には、使用した材料が適切だったのか、また、施工時から発生していたものなのか、あるいは、外的要因により新たに発生したものなのか、分析を行うためには、施工時のデータが欠かせません。今後は、蓄積されたデータを維持管理へ繋ぎ、引き継ぐ仕組みを検討していきたいと考えています。

最後に、山口県の品質確保に関する取組みや、その他活用事例等は、山口県土木建築部技術管理課および(一財)山口県建設技術センターのホームページに掲載しています。

なお、掲載のデータ等は、山口県内の施工記録が保存されていますので、ご活用等の際には、気候等の環境条件や骨材等の使用材料が各地で異なることを念頭に参考にして頂ければ幸いです。 

参考HP

山口県土木建築部技術管理課
http://www.pref.yamaguchi.lg.jp/cms/a18000/hibiware/hibiwareyokusei.html

(一財)山口県建設技術センター
http://www.yama-ctc.or.jp/data/index.html

関連記事

2017/11/29

話題の現場“ええもん技術使こて、ええモン創ろ!” 建設技術展2017近畿

毎年秋に開催される近畿地方の建設技術展。2017年も10月25日(水)~26日(木)の二日間にわたって、マイドーム大阪で開催されました。...

2017/10/30

表彰工事小さな事故も“ゼロ”、現場内でのトラブルも“ゼロ” 鋼製スリットメーカーも巻き込んだ、安全対策を実施。

今回の現場探訪は、平成29年度国土交通省四国地方整備局の局長表彰を受けた「平成27・28年度 上尾後谷堰堤工事」。この工事を受注された株式会社 山全にて...

2017/09/28

話題の現場話題のマンホールカードの発行にも参画
「マンホール蓋」製造メーカー 長島鋳物株式会社

今年8月、東京ビックサイトにて開催された「下水道展'17東京」において、注目を集めているブースがありました。色とりどりのマンホールが展示され...