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話題の現場

現場の創意工夫で簡単な装置をつくり、
作業の安全性向上と2倍の作業効率を実現
防潮堤の法面用護岸ブロックを
据え付けるための専用吊具を開発

2015/02/26

岸を大波や高潮、津波から守る防潮堤。この防潮堤の法面保護工事では、護岸ブロックを用いる工法が一般的です。平成23年の東日本大震災に伴う大津波で壊滅的な被害を受けた仙台湾南部海岸での震災復旧工事において、特別な装置を使うことなく現場の工夫で安全かつスムーズな作業を実現した『防潮堤法面用護岸ブロック専用吊具』を紹介します。この吊具は、一般社団法人 日本建設機械施工協会主催「平成26年建設施工と建設機械シンポジウムのポスターセッション」で優秀ポスター賞を受賞しました。

開発した玉石重機株式会社 代表取締役社長 玉石修介氏、工事部技術室長 濵山祐司氏に開発の経緯、特徴、効果等を伺いました。

まず、開発吊具の使い方を紹介します。

吊り荷対象物

今回開発された吊具は、緩傾斜護岸の表法被覆用ブロックの『クラブロック50型』を対象として製作されています。しかし同型のサイズ違いのものや形状が似たものに対しても、寸法や強度を調整することにより活用が可能と考えらます。

図1)吊り荷対象物

図1)吊り荷対象物

開発吊具による水平吊りのイメージ

水平吊りの場合は、開発吊具の上部中央の孔に玉掛け用具を取り付けます。開発吊具本体をクラブロック50型中央の開口部に挿入し下部に固定用ロッドを差し込んで、地切りすることでがっちりと固定され、玉掛けの手間が容易です。

  • 図2)水平吊りのイメージ(断面図)図2)水平吊りのイメージ(断面図)
  • 写真1)水平吊りによる仮置き状況写真1)水平吊りによる仮置き状況

開発吊具による斜吊りのイメージ

図3)斜め吊りのイメージ(断面図)図3)斜め吊りのイメージ(断面図)

斜吊りの場合は、開発吊具の上部端部の孔に玉掛け用具を取り付けます。開発吊具本体をクラブロック50型中央の開口部に挿入し、下部に固定用ロッドを差し込みます。次に固定用ロッドの端部治具にレバーブロックのフックを連結し、規定の吊り角度になるようにチェーンの長さを調整します。

地切りすることで吊具と吊り荷ががっちりと固定され、玉掛けの手間が容易になります。

開発吊具の構成

図4)開発吊具図4)開発吊具

①本体はH鋼を現場で加工・製作しています。吊具本体の大きさは対象となるブロック中央の開口部に差し込み可能なサイズです。

②上部玉掛け部分には水平吊り、斜吊りどちらでも対応できるよう3箇所孔を設けます。ブロックの仮置き・移動等については真ん中の孔を使って水平吊りを行い、堤防斜面への据付は端部の孔を使って斜吊りします。

③H 鋼ウェブ部及びフランジ部には、本体の重量をより軽量化を図るため(作業員の負担軽減のため)孔抜きを行います。今回は18の孔があいています。

④フランジ下側にロックロッド差込用の孔を設けます。対象ブロックの底面には、胴巻き差し込み用と思われる溝状のくぼみがあり、このくぼみに噛ませてブロックを受ける固定用ロッドを差し込むための孔です。

⑤対象ブロックとの接触面は傷付け防止用のゴムを取り付けています。
ゴムはベルトコンベアのゴムを加工したもので、接触面全面に取り付け、ブロック本体の保護としています。

⑥対象ブロックに差し込んだ時の位置決め用のストッパーです。
吊具本体はブロック中央の開口部に差し込むことで、所定の深さ位置にセットされるようにストッパーを付けています。

⑦超硬質ロッドに吊り治具となる加工を施し、固定用ロッドとします。
固定用ロッドを吊具下部の孔に貫通させて差し込みます。
地切りすることにより対象となるブロックと吊具本体が確実に固定されます。

建設機材の開発メーカーやレンタル会社でもない建設会社が、なぜ、このような専用吊具を開発したのか、そのきっかけについて現場の状況を伺いました。

どのような経緯で今回の開発が生まれたのか、そのきっかけを教えてください。

写真2)玉石修介 代表取締役社長写真2)玉石修介 代表取締役社長

「仙台湾南部海岸の復旧工事では、再築造した堤防の法面部に護岸ブロック(重量2t)の据え付け作業がありました。車両からの荷卸しあるいは荷積み時の「水平吊り作業(仮置き作業含む)」と2割勾配の法面への据付するための「斜吊り据付作業」がでますが、いずれも吊り上げたブロックを作業員が微妙に角度を調整しながら据え付けるという不安定な作業でした。」

「水平吊りの作業には、玉掛け用の治具(埋込吊り金具4点)を設け、ワイヤーロープで吊り上げる方法と、吊り金具の無い2次製品等に、胴巻き用具を用いた吊り上げる方法がありますが、今回使用した2次製品『クラブロック50型』は、胴巻き用具および吊りワイヤーロープの掛け、取り外しに非常に手間がかかり、また、不安定な吊り荷状態による荷すべり、荷すべりによるワイヤーロープの擦れによる破断、吊り荷の落下が懸念されました。」

「こうした現状の中、現場の社員が、もっと安全に、もっと簡単に作業ができないものかと考え、今回の専用吊具を発案し、自ら手作りで作成しました。」

従来手法と比べて優れている点は?

「まず、玉掛けにかかる手間が容易で作業性が向上し、挟まれ等の危険性が軽減されます。また、斜吊りによる据付作業は、開発吊具と吊り荷をロックロッドで固定することにより安定します。さらに吊具の脱着が容易である、玉掛け用の治具を取り付ける必要がないなど、作業性、安全性が大幅に改善されます。」

現場で考えて手作りするという問題解決力がすごいですね。

「今回の吊具発案については以前、現場担当者が経験した都市型土木の工事において作業効率を高めるため専用の工具を製作したり、加工したりの経験が原点にあります。震災後の復興現場に立ち、現状の作業を見て『もっと安全に、もっと効率よく』という思いからこの発想に至っています。」

「製品(護岸ブロック)の搬入と同時にその原寸を計り、吊具のイメージ・形状を構想し、それに合う部材の調達・加工を行いました。まず試作品を1基製作し、実際に作業に活用してみました。」

「結果、想定以上の効果が得られたものですから、追加で2基目、3基目と製作し、現場で活用しました。

この吊具は数カ所の現場で使われ、数千回という吊り荷行為を行ってきましたが、簡易な構造にも係わらず、特に不具合が発生することもなく、大きな成果が得られています。近隣他工区の担当者もこの吊具に関心を持ち施工状況や吊具の写真を撮ったり吊具の原寸を図ったりされていたようですが、実際に製作した会社はなかったようですね。」

もともと玉石重機さんは技術開発に積極的ですよね。

「当社の社訓では『和、誠意、創意工夫』を掲げています。現場の第一線においてもこの精神は代々受け繋がれており、日々現場を担当している者は新しい方法や手法を模索しながら行動しています。その成果のひとつになると思います。また、会社の取り組みにおいても常に新しい技術の導入による技術革新に取り組み、社会に貢献できる企業を目指しています。当社のホームページでも紹介させてもらっていますが、土質・土壌改良、構造物取壊し、岩掘削、無人化施工、情報化施工等の特殊技術および特殊機材を使った工法についても積極的な取り組みを行い、実績を重ねています。」

濵山技術室長にもお話を伺っています。

開発した吊具の評価は如何でしたか?

写真3)濵山祐司 工事部技術室長写真3)濵山祐司 工事部技術室長

「今回の復旧工事において、近隣の工区でも同様の工種があり、同じ製品の据付作業が行われていました。他社については、従来の一般手法を用いた施工を行っていて、施工性・安全性・作業時間の短縮等において苦慮していたようでした。実際、当社現場への見学希望の依頼も多かったようです。」

「他社からの要望で当吊具の貸し出しを行い、他の現場でも活用してもらいました。作業効率は、施工方法の条件にも大きく影響されますが、この時は、近隣工区の従来工法と比べて2倍を超える作業量があったと聞いています。」

今後の展開は?

「東日本大震災大津波により被害を受けた海岸堤防および津波遡上により被害を受けた河川堤防の復旧事業は今後も進められると思いますが、被覆用ブロックによる緩傾斜護岸の保護工では、本工法を採用することで作業上の安全性・施工性の向上・作業時間の短縮等が期待できると思います。」

「当吊具は、今回の作業専用で開発したものですが、他社2次製品やサイズの違うブロックでも、改良を加えることで使用できると思っていますので、同様の現場ではぜひ使いたいと思っています。また今のところ製品化する予定はありませんが、もし使いたいという企業があれば、ご相談にのれます。」

今回開発された吊具は、既存のH鋼等を利用して簡単に低コストで製作できるものです。省力化・安全確保につながる優れた治具でした。現場での創意工夫で実際にやってみようと言う意欲がいかに重要かを改めて認識しました。

取材協力

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