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話題の現場

業界初ケーブルラック制振システム『NSYS』
「耐震」から「耐震+制振」へ、
JECA FAIR 2015 製品コンクールで中小企業庁長官賞を受賞。

2015/10/30

図1)ケーブルラック図1)ケーブルラック

ーブルラックとは、電力幹線や通信幹線、各種ケーブル類を整理して乗せる為の部材で、電線管工事に比べ施工性も高く、一度に大量のケーブル積載することも可能であることから、ビル、工場、駅、大型店舗には必ずといって良いほど施工される電気配線のシステムです。
ケーブルラックは、はしご形の構造で、天井のスラブに埋め込んだインサートや鉄骨に止められた吊り金具から吊りボルトを下し、サポート材を介して施工されます。(図1)

地震大国の日本において、建築物同様にケーブルラックについても地震対策が必要であり、ケーブルラックの地震対策については、通常の施工方法と異なった「建築設備耐震設計・施工指針(一般財団法人 日本建築センター発行)」(以下耐震指針)に準じた耐震支持となっています。

耐震指針に準じた耐震支持も地震に対して大きな効果はありますが、2011年の東日本大震災では、繰り返し発生した余震の影響もあり、耐震支持を行った場合でもケーブルラックの損傷、吊り金具や吊りボルトの破損等で、ケーブルラックの落下等の被害が発生しています。

ケーブルラックの施工は、幅1mを超えるケーブルラックを長さ100メートル以上も施工するケースもあります。又、多くのケーブルを積載することからケーブルの積載重量は1mあたり100kgにもなります。従って、ケーブルラックはかなりの重量物になることから、地震によるケーブルラックの落下は、大事故につながります。

そこで、震災後の2014年に耐震指針が改訂され、従来、金属ダクト等とまとめて表記されていたものに、ケーブルラックの地震対策が単独で追加されました(表1)。電気配線類の地震対策の重要度が反映された結果と考えられます。

  • 写真1)東日本大震災によるケーブルラックの被害写真1)東日本大震災によるケーブルラックの被害
  • 表1)建築設備耐震設計・施工指針表1)建築設備耐震設計・施工指針

今回の現場探訪で紹介する「ケーブルラック制振システム(NSYS・エヌシス)」は、ネグロス電工 株式会社が開発した製品であり、これまでの「耐震支持」に「制振機能」を付加するまったく新しい制振システムです。今までに無い、耐震指針の一歩先を行く試みとなっています。

当ケーブルラック制振システムは、2015年5月に開催された日本最大の電気設備機器の展示会『JECA FAIR2015 電設工業展~製品コンクール』にて、中小企業庁長官賞を受賞しています。

建築物の地震対策の種類は大きく3つに大別されています。それぞれ簡単に説明しますと、部材自身の強度で地震の揺れに耐える「耐震」、ゴムやバネやオイルを用いたダンパーなどの制振装置を装着し揺れを吸収する「制振」、積層ゴムやローラー等による免震装置を基礎部分に設置し地盤の揺れを構造物に伝えない「免震」に分かれます。

ケーブルラック制振システムは、今までの電路支持材の分野には無かった『制振』を設計思想に取り込んだ業界初のシステムで、繰り返しの地震によるダメージを軽減し、ケーブルラックの安全性を高めることを目的にしています。

このシステムを開発した電気設備メーカー『ネグロス電工 株式会社』、製品開発部の浅妻栄作さんのインタビューと併せてご一読ください。

「ケーブルラック制振システム(NSYS・エヌシス)」の特長

1.)「高い制振効果」で繰り返しの地震に強い

支持材自体の強度で地震の揺れに耐える耐震支持では、余震など繰返し地震を受けると、吊りボルト等の最弱部材に地震のエネルギーが蓄積され、金属疲労で破損してしまう恐れがあります。一方、ケーブルラック制振システムでは、吊りボルトを補強する『座屈防止金具』と特殊粘弾性ゴムを用いた『制振ダンパー』を取り付けることで、地震エネルギーを制振ダンパーが吸収します。(図2)

図2)「耐震」と「制振」の違い(イメージ)図2)「耐震」と「制振」の違い(イメージ)

従来の耐震支持と比較して、ケーブルラックへ与える地震加速度を約40%低減し、ケーブルラックの振幅を最大で150mm(吊り長さ1000mmあたり)に抑えます。性能については、振動実験や応答解析で検証、確認されています。

ケーブルラックへ与える地震加速度を減少させることで、ケーブルラックへ与えるダメージの蓄積が小さくなります。繰り返し発生する余震や長周期地震に対して大きな効果が期待できるシステムとなっています。

図3)構造解析の結果図3)構造解析の結果
2.)制振効果のメカニズム

図4)制振ダンパーの仕組み図4)制振ダンパーの仕組み

地震の際、制振ダンパーが伸縮することで、ダンパー内の特殊粘弾性ゴムが瞬時に地震エネルギーを熱エネルギーに変換して大気中に放出し、地震エネルギーを吸収します。(図4)

3.)メンテナンスフリー

制振ダンパーの特殊粘弾性ゴムは時間経過や温度による性能の変化が少なく、メンテナンスがなくても優れた効果を持続することができます。

4.)部品構成・取り付け方法

ケーブルラック制振システムの部品構成は、鉛直材として、吊りボルトの座屈を防止する『吊りボルト座屈防止金具』と、制振ダンパーから構成されます。(図5)

図5)部品構成・取り付け方法図5)部品構成・取り付け方法

図6)取り付け間隔図6)取り付け間隔

座屈防止金具は2枚の金具で吊りボルトを挟み込むようにボルト・ナットで固定します。座屈防止金具及び制振ダンパーには長さ調整が行える為、切断なしに微調整が行えます。

施工時間も1箇所あたり約20分程度で設置することができるなど、施工性も良好となっています。

新設の物件のみならず、簡単に既設の改修、補強施工も可能であり、耐震支持間隔と同様の8m間隔に、耐震支持と制振支持を交互に取付けることで、制振効果をもたらします。(図6)

また本製品は、建築設備耐震設計・施工指針記載のSA種、A種耐震支持の強度を満たすことのできる製品となっています。

動画でみる「ケーブルラック制振システム(NSYS・エヌシス)」

【開発者に聞く】

「NSYS(エヌシス)」を開発しようと思ったきっかけは?

「ご存じの通り、2011年3月11日に発生した東日本大震災は、日本列島の広範囲で甚大な被害をもたらしました。その中には、構造物だけでなく、非構造体の電気設備に大きな損傷・被害を受けたものもありました。こうした被害を受け、東北地方の大手電気設備施工会社から『より地震に強いケーブルラックの製品化ができないか』という声がかかり、制振ダンパーのメーカーとして実績のある住友理工株式会社(旧・東海ゴム工業株式会社)さんと共同で新しいケーブルラックの地震対策の開発に取り組むことになりました。」

  • 写真2)開発担当者/ネグロス電工 製品開発部 製品開発課 浅妻栄作 課長補佐害
  • 写真2)開発担当者/ネグロス電工 製品開発部 製品開発課 浅妻栄作 課長補佐
写真2)開発担当者/ネグロス電工 製品開発部 製品開発課 浅妻栄作 課長補佐
失礼な話ですが、NSYS(エヌシス)の概念図をみると建物でいう筋交いのように思います。御社以外でも開発できるチャンスはあったのではないでしょうか。

「JECA FAIR2015でも『やはり開発されたか』という声があったのは事実です。しかし、プロの陥りやすい盲点かもしれませんが、電気工事分野では建築設備耐震設計・施工指針、当時は2005年版ですが、これが唯一の拠り所で、地震対策は耐震という視点しかなかったのです。耐震指針に準じた耐震支持以外は受け入れられないのでは?と言う固定概念があったため、制振システムの具体的な製品化を行う会社がなかったのではないでしょうか。」

「当社としても指針の規範性はわかっていますが、それとは別のこととして『余震があっても壊れないラックがほしい』というユーザーの要望にお応えすることも大事と考え開発に踏み出したという次第です。ユーザーと共同開発した経験が多かったことも背中を押しました。」

製品の開発は順調に進んだのですか?

「これまで当社は電路支持材のさまざまな製品を開発販売してきましたが、制振をテーマとする製品を開発したことはありませんでした。当然ノウハウもなくゼロベースから取り組まなければなりませんでしたので、まさに手探り状態でのスタートでした。」

「基礎研究については東京工業大学と共同研究を行い、この基礎研究だけでも約2年かかりました。ダンパーをどの部分に設置すれば効果的なのか、どの程度の効果を出すことを目標とするのかなど、基本的な方向を決めることにかなりの時間を要しました。中でも苦労したのが、振動実験です。ケーブルラックの施工は短くても数10メートル、長い場合では100メートル以上にもなります。100メートルを超えるケーブルラックを振動実験できる設備はありません。通常の振動実験の試験台は数メートル程度ですから、その装置でいかに正確に揺れを再現して解析を行うかについては、大学の先生をはじめ、研究室のスタッフのみなさんに大変な手間をおかけしたと思います。」

「また、製品性能の限界を確認するために、何度も負荷をかけて、最終的にケーブルラックが損傷するまで実験を繰り返すわけです。私たちもその度に新しいケーブルラックを設置するのですが、1mあたりおよそ100kgのケーブルを毎回組むのはかなりの重労働でした。」「そうした歳月を経て、2014年9月に、「電気配線用ケーブルラックの制振化に関する研究開発」を日本建築学会大会(近畿)学術講演会に発表しました。ここからは、製品化に向けて約1年ということになります。」

今後の展開や目標は?

「『NSYS』は、新規の施工箇所だけでなく、既設の設備にも設置できます。企業の事業継続(BCP)対策が注目されていますので、コストは約2割アップしますが、より高度な『安全・安心』のための選択肢として、広くアピールしていく必要があると思っています。」

「電設工業展での展示以来、多くの施工会社から問合せをいただいています。また、専門雑誌等でも取り上げていただいたおかげで、反響も上々です。しかしながら、電気設備の地震対策で、制振システムは、指針に記載が無く全く新しい製品です。指針に記載がない新規製品はなかなか採用が難しいと思います。今は、施工実績を増やして、少しでも多くの施主の皆さんに製品の良さを実感していただくことが第一だと思っています。」

おわりに

今回、コンコム編集局としては初めて、電気設備メーカーに取材させていただきました。「BCP対策」としてケーブルラック等の電気設備の強靱性確保はより重要となってくると思います。そんな中でユーザーの要望に素早く対応し一歩先をゆくネグロス電工の取り組みは大変勉強になりました。また、産学連携の事例としても参考になる部分が多かったように思います。

ネグロス電工の製品開発は「試作(つく)って使う、使いながら製造(つくる)」。さらなる発展を期待します。

(文責 コンコム事務局)

取材協力・資料提供

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