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話題の現場

『ICT現場管理ツール群』
「使えるICT」で、現場業務を効率化、
仕事の質を上げる

2016/02/25

建設技術者・熟練技能者不足が深刻化しており、ICT(Information and Communication Technology 情報通信技術)を活用した施工の効率化、品質の向上が求められています。

今回紹介する鹿島建設株式会社の『ICT現場管理ツール群』は、一般社団法人 日本建設機械施工協会主催の「平成27年度 建設施工と建設機械シンポジウム」ポスターセッションで優秀ポスター賞を受賞されたもので、ICTシステムと現場を融合した取り組みとして大きな成果をあげています。現在進行形で開発にたずさわっている、鹿島建設株式会社 機械部 技術4グループ長 水谷亮氏、ITソリューション部 次長 岩井田英昭氏 建築管理本部 建築工務部 課長 國近京輔氏に開発の経緯、特長、効果等を伺いました。

『ICT現場管理ツール群』の概要を教えてください。

『ICT現場管理ツール群』は一言でいうと「ICTを活用して、繁忙な現場職員の業務を補助するツール」です。
①クラウド型現場情報データベース
②遠隔管理ツール
③現場俯瞰映像システム
④資機材所在・稼動管理システム
⑤レンタル品管理システム
の5つが主なメニューです。
デバイスの特徴としては
⑥スマートデバイス、ここではiPadです。
⑦Wi-Fiアンテナケーブル
を使うということです。

開発を進めるうえで、特に留意された点は何ですか。

写真1)機械部 水谷 亮氏写真1)機械部 水谷 亮氏

どの現場も職員は非常に忙しく業務に取り組んでいます。職員の繁忙さは長時間労働に繋がるだけでなく、十分に議論・検討する時間もない中で施工を進め、結果として手戻り工事などの不備が生じる原因にもなります。ICTを活用し、職員を繁忙から解放することで職務の質を上げることに専念させる。この目的をいつも頭においていました。

開発自体は、2007年に全社プロジェクトがスタートしました。現場を知る建築部門と機械部門やIT部門、技術研究所が共同で開発を進め、何が無駄か、どこに時間がかかっているのか、現場のニーズをヒアリングしながら、その業務負担をICTに置き換えようというところからスタートし、現場で使いながら改良を加えていきました。

ただし、これらツール群はあくまでも三現主義(現場に行き・現物をよく観察し・現実を把握する)を補助するツールです。早期に問題を察知して対応することが重要ですので、現場を見なくてもよいという意識にならないように、特に若手の職員には注意して教育しています。
当初は「ICTによる現場管理の将来像を模索する」という狙いで開発に着手しましたが、インターネット環境が整い、スマートデバイスが一般的に利用されるようになりましたので、これらを最大限活用し、結果として現場の仕事を変革させることができるようになったと考えています。

具体的にツールをご説明ください。

大きくは、プロジェクト情報を関係者間で共有化することで、情報伝達の手間や齟齬をなくすことと、従来業務の標準化・見える化による現場業務の効率化を目指しています。加えて、技術ノウハウの蓄積、評価といった2次利用にもつなげていくことも考えています。建築現場では既に様々なICTツールの導入が進んでいますが、今回発表したツール群は現時点での技術を包括的にまとめたもので、これが完成形ではなく、今後も現場の意見を聴きながら使い勝手や運用方法を改善していきたいと考えています。

クラウド型現場情報データベース
写真2)建築工務部 國近 京輔氏写真2)建築工務部 國近 京輔氏

クラウド上に、図面や検査記録・写真・工程表など様々な工事情報を保存し、現場と支店・本社はもちろん、協力会社や設計事務所・顧客との情報共有を行っています。スマートデバイス(スマートフォンやタブレット等)からクラウドにアクセスし、どこからでも“必要な時に必要な情報を”確認できるので、管理業務が大幅に効率化されています。また、大容量データのやり取りが可能ですので、重いBIMデータの受け渡しには必須です。

図1)クラウド型現場情報データベース図1)クラウド型現場情報データベース

※クラウドとは
インターネット上に保存したデータを、あたかも自分のパソコンなどにあるデータのように利用できるサービス。携帯電話やスマートデバイスなどから、いつでもどこでもデータを閲覧、編集、アップロードすることが可能。セキュリティー技術が向上したこと、低価格なプランが登場したことなどから、最近では中小企業でも積極的に導入されている。繋がっている先がイメージしづらい「モヤモヤ」したものであることから、 「クラウド:cloud=雲」と呼ぶという説がある。

※BIMとは
Building Information Modeling(ビルディング インフォメーション モデリング)の略称。コンピューター上に作成した3次元の建物のデジタルモデルに、コストや仕上げ、管理情報などの属性データを追加した建築物のデータベースを、建築の設計、施工から維持管理までのあらゆる工程で活用し、プロジェクト全体の流れを効率化して、より効果的により良い建物を造ろうというもの。

スマートデバイス、遠隔管理ツール

スマートデバイスについては、当社ではiPadを標準デバイスとして用いていますが、様々なシーンで活用されています。

iPadの一般アプリで図面や写真等さまざまな資料を現地で確認することが可能ですし、検査に関しては、iPadによる汎用検査システムを自社で開発しました。杭や鉄筋、鉄骨、仕上げなどあらゆる検査に対応できるシステムで、クラウドと連携することで検査進捗の共有も行っています。約150現場で活用されており、今後、全現場での標準利用を目標としています。また、将来的にはこれら検査データとBIMを連携することで検査進捗のBIMによる視覚化が可能になると考えています。

また、作業間連絡調整会議システムにより、協力会社も含めた各自のスマートデバイスで作業予定や搬入出予定、重機使用予定等の入力・共有が可能となっており、現在約200現場で導入され、効率的な作業間調整を行っています。

図2)iPad活用メニュー図2)iPad活用メニュー
現場俯瞰映像システム(Sky Site View ®
図3)現場俯瞰映像システム図3)現場俯瞰映像システム

タワークレーン等に「360°カメラ」を対角に2台取り付け、その映像を合成して平面化し、俯瞰の現場全体映像をパソコンやスマートデバイスに出力するシステムです。現場の平面図(総合仮設計画図等)を実写でみるイメージとなり、わかりやすい映像で現場全体をリアルタイムで確認することができるので、進捗管理・安全管理に効果を発揮します。

カメラ自体は市販されているものを利用しています。

資機材所在・稼動管理システム

資機材に加速度タグを取り付けることで、資機材の所在及び稼働状況をリアルタイムで把握することが可能となります。無駄なコストにつながる資機材の遊休を減らすだけでなく、現場を回って探す・使用状態をチェックするという作業や、「使っている!使っていない!」といった水掛け論議もなくなります。また、重機の稼働状況をデータ化することで、現場内のCO2排出状況もリアルタイムで算出が可能となります。

Wi-Fiアンテナケーブル
写真3)ITソリューション部 岩井田 英昭氏写真3)ITソリューション部 岩井田 英昭氏

配線したケーブルの周囲一帯がWi-Fiスポットとなるもので、AP(アクセスポイント)を大幅に減らすことが可能です。基本的な技術としては昔から使われていましたが、ケーブルを曲げやすく改良する等、取り扱い易くすることで現場での使用を可能としました。

元々は本設利用を想定していましたが、施工現場におけるスマートデバイスの活用が必須となったことから、Wi-Fi環境を構築しやすいように、アンテナケーブルと無線LANとAP機をセットにした現場向けパッケージを開発しました。職員は電波状況や通信速度制限、通信料金を気にすることなく、業務にあたることが可能です。携帯電波の届かない地下階や高層階等でも、データ送受信のための移動がなく、時間縮減に有効です。

  • 図4)Wi-Fiアンテナケーブル図4)Wi-Fiアンテナケーブル
  • 図4)Wi-Fiアンテナケーブル
レンタル品管理システム

レンタル用品にQRコードを付することで、レンタル情報や使用者情報等、全てのデータをクラウドで管理するシステムです。現場で何をレンタルしていて何が使われているかを把握することができるので、使われていないレンタル品を返却することでコスト削減に繋がりますし、使われているかどうかのパトロールに費やす時間を無くすこともできます。

また、建築現場ではレンタル品が大量に存在しますが、工事終盤でそれらの滅損が発生することもあります。このシステムにより誰が何を使用しているかが把握できるため、レンタル品の使用責任が明確になり、滅損の減少にも効果をあげています。

『ICT現場管理ツール群』を活用することによって
得られるメリットは?

図5)ITを活用した高生産性体制図5)ITを活用した高生産性体制

第一に時間短縮です。汎用検査システムは、検査準備・検査記録作成・写真帳票作成にかかっていた時間を大幅に削減できます。資機材所在・稼動管理システム、レンタル品管理システムはパトロールの時間を削減します。作業間連絡調整会議システムは「いつでも」「どこでも」「すぐに」予定を確認できるため、作業調整に掛かる時間を削減できます。先程もお話ししましたが、職員の日々の煩雑な業務時間を短縮し、本来必要な計画や品質管理、安全管理の職務にしっかり時間を充てることが可能となります。

ICTツール群が標準化し、帳票の形式、入力方法などが定型化することで生まれるメリットもあります。統一された形式で業務を行えるので、協力会社はもちろん、スポットで業務を依頼する場合や外国の方と作業する場合でも、一定レベルでスムーズに業務に入ることが可能です。

また、遠隔管理ツールや情報共有により、リアルタイムに現場の状況を把握することで、遠隔であっても多くの目で危険な状態を察知し、すぐに対応できるようになり安全性も向上しました。また、現場作業の見える化によって、作業員ひとりひとりが、より規律のある行動を取るなど、安全意識向上にも繋がっています。

導入当初は、特に年配の方から「スマホやタブレットは触ったこともないので抵抗がある」という声もありましたが、慣れてくると「搬入予定が手元のスマートフォンで確認できて良い」「巡回内容や安全指摘写真を職長さんと共有できる」など「これまでより便利」という声が多く得られています。

現場管理ツール群を普及していくための活動と
課題についてお聞かせください。

現在『ICT現場管理ツール群』を使用する現場はツールによって全体の7割~9割ですが、将来的には100%標準利用にしたいと考えています。普及させるために、社内イントラネットでの告知や報告会を実施していますが、まだまだ末端の職員まで情報が届いていないのが現状です。普及展開にあたっては、各支店の建築部門担当・IT部門担当の連携が必須であり、常に情報共有をしながら展開活動を進める体制が必要です。今後は情報提供のあり方も、動画でわかりやすく伝えるなど見直す必要もあると感じています。

『ICT現場管理ツール群』が本当に現場に浸透するまで、多くの現場の声を聞き、改善し続けることが必要です。増え続けるこれらのシステム、機材の管理、運用を効率よく活用できる体制を作るため、本店支店でのバックアップ体制も強化していきたいと考えています。

主として(高層)建設現場で活用されているようですが、
中小の現場等での活用は考えられていますか?

もちろん、中小現場や土木現場もターゲットにしていますし、実際に導入もしています。特に職員の少ない中小の現場では、一人の職員が担当する業務が多いので、業務効率をあげるという効果は大きいです。また、リニューアル工事などの緒口工事では複数現場を同時進行で管理する必要があるため、ICTツールを活用することで作業予定の情報共有など、各現場に常駐できない場合の管理にも効果を発揮しています。

おわりに

取材前、『ICT現場管理ツール群』は「大企業だから作れたもの」という固定観念がありましたが、取材を通じて、今あるツールや技術を組み合わせて、どうすれば生産性・安全性を向上させられるかという「発想」と、より便利に、より効果的にしていこうという「現場主義」から作られているものであると感じました。

「現場管理の将来像」を模索し続けている鹿島建設の『ICT現場管理ツール群』は、将来的には外販も視野に入れているとのこと。i-Constructionの先駆けとして大いなる発展が期待されます。

(文責 コンコム事務局)

取材協力・資料提供

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