ConCom 会員ログイン

ConCom 掲示板

こんなときはどうしよう? 今さら聞けないこんなこと これって正しいの?

建設現場で直面する課題、日ごろの作業の疑問、資格試験の相談など。みなさんで盛り上げてください。

掲示板を見る

建設産業図書館の優待利用方法 ConCom会員限定での優待利用です

お役立ちリンク集 日々の作業で使える情報へ一発リンク

ご意見・お問い合わせ ConComへの要望・ご質問はコチラから

現場探訪 優れた工事成績評定の現場、話題の新技術、人材確保に役立つ情報をレポート

話題の現場

耐久性の高いコンクリート構造物を
つくるための品質評価ツール
~SWATとトレント法~

2016/05/30

コンクリート構造物の劣化現象は、塩化物イオン等の劣化因子がコンクリート内部に侵入して鋼材腐食を引き起こす化学的現象と凍害、すり減りなどの物理的要因による劣化現象の二つに大別できる。いずれもコンクリートの表層の品質(緻密性)と関係が深く、表層を緻密にすることでコンクリートの耐久性を向上できることが分かってきた。

注:東北地方整備局の「コンクリート構造物の品質確保の手引き(案)」では、表層を「コンクリート構造物の中で、養生や環境条件等の影響を受けて性能が変化する領域」と定義しており、「一般にはかぶりの領域と考えて良い」としている。また、緻密性を「硬化コンクリートが持つ劣化因子の侵入に対する抵抗性」としている。

  • 図1)緻密さと中性化の進行速度の関係図1)緻密さと中性化の進行速度の関係
  • 図2)表層品質とスケーリング抵抗性図2)表層品質とスケーリング抵抗性

しかし、従来、コンクリートの品質はひび割れの程度や強度で示されることが多く、緻密性が前面にでることは少なかったように思われる。これは表層の緻密性を測定する方法が普及していなかったことも原因の一つと考えられている。

今回のコンコム・現場探訪は、このコンクリートの表層品質を測定するための技術として、表面吸水試験(SWAT)と表層透気試験(トレント法)の2つを紹介する。使用する写真等は4月22日に行われた「久慈地区におけるコンクリート構造物の品質確保に関する講習会」によっている。

1. 表面吸水試験(SWAT)について

1)SWATとは、Surface Water Absorption Test の略で、細田(横浜国大)、林(香川高専)で開発されたものである。

計測装置を写真1-1に示す。左右のパーツは装置を固定するためのもので、真空ポンプを使って内部の空気を吸い出してコンクリート壁に吸いつかせる。中央のカップと上に伸びたシリンダーが吸水抵抗性の計測装置となっている。

写真1-2では2箇所同時に計測を行っている。左端の技術者が持っているのが計測装置に水を注入するための容器で、水が漏れないように中央のカップを壁に押し付け固定したうえで注水し、中央のカップとシリンダーが満水になったら、カップ下部のバルブを閉めて計測が開始される。

  • 写真1-1)表面吸水試験(SWAT)の計測装置写真1-1)表面吸水試験(SWAT)の計測装置
  • 写真1-2)表面吸水試験(SWAT)計測の様子写真1-2)表面吸水試験(SWAT)計測の様子

2)カップとシリンダー部分を水で満たした後、600秒(10分)間、中央の円形カップ部分からコンクリート構造物側へ吸水させ、シリンダー部の水位の減少の程度を圧力センサーで自動計測する。計測対象のコンクリートに空隙が多い場合、吸水量が多くなり、水位の低下が大きくなる。水位の低下の状況を分析することで、表層コンクリートの緻密さ(表層コンクリートの空隙構造あるいは物質移動抵抗性)を評価することが可能となる。

3)水位の変化量から算出される吸水速度(表面吸水速度、ml/m²/s)を評価指標とする。評価レベルは表1のように3段階となっている。

表1)表面吸水試験(SWAT)の評価レベル
一般
注水完了から
600秒時点での吸水速度
ml/m²/s
0.25以下 0.25〜0.5以下 0.5より大きい
2. 表層透気試験(トレント法)について

1)トレントという名称はこの手法の開発者の名を取ったものである。

計測装置の全体像は写真2のようであり、直径15cm程度のお椀状のチャンバー、真空ポンプ、解析用パソコンからなっている。チャンバーを裏からみると写真3のようになっており、パッキンにより外周部の空間と中央部の空間の2つから成っている。

  • 写真2)表層透気試験(トレント法)の計測装置写真2)表層透気試験(トレント法)の計測装置
  • 写真3)表層透気試験(トレント法)のチャンバー(接着面)の様子写真3)表層透気試験(トレント法)のチャンバー(接着面)の様子

2)このチャンバーを調査個所のコンクリート面に押し付けて固定したうえで、真空ポンプでチャンバー内の空気(圧力)を抜く。抜き終わったらポンプを止めて、コンクリート内部を通ってチャンバー内に空気が戻ってくる(気圧が回復する)過程を計測する。

3)計測するのはチャンバー中央部の圧力であり、この圧力の変化をもとにコンクリートの透気係数kT値が自動的に算定され、グラフ化される(横軸がkT値、縦軸が圧力、写真4)。チャンバーに外周部を設けているのは、チャンバーの中央部が吸引する空気の流れを一方向に制御するためとされている(図3)。

  • 図3)表層透気試験(トレント法)図3)表層透気試験(トレント法)
  • 写真4)表層透気試験(トレント法)の測定結果写真4)表層透気試験(トレント法)の測定結果

kT値が小さいほど表層が緻密であると評価され、評価レベルは表2に示すように5段階となっている。

表2)表層透気試験(トレント法)の評価レベル
一般 極劣
kT値 0.001~0.01 0.01~0.1 0.1~1 1~10 10~100
kT値:10-16m2
3. 手法の特徴等

両手法とも非破壊検査であり、簡単に据え付けして計測できるという特徴を持っている。なお、試験対象面が水掛かりしていない安定的な含水状態(目安として市販の含水計CMEXⅡで含水率が5.5%以下)にあることを推奨している。

品質の測定可能領域でみると、表面吸水試験(SWAT)は表層透気試験(トレント法)より浅く、有効な測定範囲は最大でも表面から20mm程度とされている。これはSWATの試験方法が、加圧しない自然状態の吸水現象によっているためだが、実際の構造物が曝されている状態と同じであり、主たる劣化因子である水の挙動を再現した実験方法ということもできる。また、目に見える「水」を使用しているため、水漏れ等の試験のミスに気付きやすい試験方法でもある。

一方、真空ポンプを活用して強制的に空気を吸引する表層透気試験は、より深いエリアまで測定することが可能とされている。また、スイスで開発された手法ということもあって世界的にデータの蓄積が進んでいるという特徴もある。

4. まとめ

SWATあるいはトレント法を使った実構造物での計測によると、表層の緻密性を高めるためには、共通仕様書に定められた養生期間のほかに脱型後も追加養生をすることが効果的であることが分かってきている。共通仕様書に定められた養生期間は、基本的には強度発現や初期凍害を考慮した規定と考えられ、コンクリート構造物の表層品質の確保という点では不十分である可能性がある。

しかしながら、寒冷地等の厳しい環境作用で供用されるコンクリート構造物に必要とされる緻密性と、それを達成するために必要な追加養生の期間について、その定量的関係性を明確に示すまでには至っていないことも事実である。現時点では表層品質に関するデータを蓄積していくことが重要であり、より多くの現場で今回紹介した手法が適切に使い分けられながら広く普及していくことが期待されている。

耐久性の高いコンクリート構造物を造るためには、打設時期、配合設計、施工の丁寧さ、養生の仕方などが複合的に関係している。このため、土木学会350委員会が推奨する施工状況把握チェックシートや表層目視評価シートを活用した施工の改善活動、SWATあるいはトレント法を用いた表層品質の定量的な把握、そして管理者を巻き込んだ当該構造物の長期的な点検の実施などを組み合わせて、関係者(施工者のみならず管理者、設計者、研究者を含む)全員が一体となって品質向上のためのPDCAサイクルを回していくことが求められている。

(文責 森田 悦三)

参考文献
販売元

関連記事

2017/11/29

話題の現場“ええもん技術使こて、ええモン創ろ!” 建設技術展2017近畿

毎年秋に開催される近畿地方の建設技術展。2017年も10月25日(水)~26日(木)の二日間にわたって、マイドーム大阪で開催されました。...

2017/10/30

表彰工事小さな事故も“ゼロ”、現場内でのトラブルも“ゼロ” 鋼製スリットメーカーも巻き込んだ、安全対策を実施。

今回の現場探訪は、平成29年度国土交通省四国地方整備局の局長表彰を受けた「平成27・28年度 上尾後谷堰堤工事」。この工事を受注された株式会社 山全にて...

2017/09/28

話題の現場話題のマンホールカードの発行にも参画
「マンホール蓋」製造メーカー 長島鋳物株式会社

今年8月、東京ビックサイトにて開催された「下水道展'17東京」において、注目を集めているブースがありました。色とりどりのマンホールが展示され...