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現場探訪 優れた工事成績評定の現場、話題の新技術、人材確保に役立つ情報をレポート

話題の現場

交通規制不要で道路鋼床版を補強・補修。
現場目線で専用冶具も開発。
~下面補強用高性能ワンサイドボルト(TRS)~

2017/01/30

鋼床版のUリブ当て板補修

在、日本全国には約70万橋の道路橋があります。高度成長期以降に整備された橋梁が急速に老朽化しており、平成35年には建設後50年を経過する橋梁が4割を超えると見込まれています。

予算・人的要因からすべてを更新することは難しく、適時適切な補強・補修を行い、長寿命化を図るメンテナンスの重要性が叫ばれています。

今回の現場探訪は、道路橋の鋼床版を交通規制や通行止めをすることなく補強・補修が可能な「下面補強用高性能ワンサイドボルト」および、現場施工の手間・負担を軽減させる専用冶具群を開発された株式会社巴製作所を訪問しました。本製品は建設技術展2016近畿にて審査員特別賞を受賞されました。

製品の特長と開発のきっかけや製品化までの苦労などを豊田社長、研究開発部の西山部長と鶴澤さんにお伺いしました。

製品の概要について

高速道路や橋梁等の鋼床版に生じた疲労損傷に対する補強・補修工事を、舗装を掘り返すことなく施工可能とする下面補強用高性能ワンサイドボルトです。雌ネジを転造して形成しながら打ち込みます。

従来の方法では、上面の舗装を撤去してから当て板をデッキプレートに締結する補強・補修となり、通行止めや交通規制が必要でした。通行止めや交通規制を行うと渋滞や事故の発生する可能性もあり、環境・経済活動への影響が大きいことに加え、工期や時間帯も制限されてしまいます。

そこで、下面からのみの施工で補強・補修が完了するように、鋼床版に使用されている鋼板(デッキプレート)に当て板補強・補修をする方法を検討し、完成したのがこのワンサイドボルト(TRS※)です。施工は道路下面だけとなりますので、通行止めや交通規制は不要であり、工期短縮にもなります。また、開発をしたのはボルト単体ではなく、施工冶具も併せて開発しました。現場での施工性を重視することで、工期短縮や作業員の負荷を軽減し、適切・安全な施工が可能となっています。

TRS:スレッドローリングスクリュー

写真1)ワンサイドボルト(TRS)写真1)ワンサイドボルト(TRS)
図1)当て板補強・補修詳細図1)当て板補強・補修詳細
開発の経緯をお聞かせください。
写真2)西山部長写真2)西山部長

関西大学の坂野昌弘教授が代表を務める「東大阪橋梁維持管理研究会」という研究会に声をかけられたことがきっかけです。

「東大阪橋梁維持管理研究会」は老朽化してきた橋梁をより長く利用してくために、大手の建設会社ではなく、小回りの利く中小企業が連携をして問題解決のためのツールを開発していくことを目的に平成26年に発足しました。

当社は東大阪市ではありませんが、60年以上に渡って水道・ガス管路を接合するボルト・ナットを製作しているメーカーであり、7年前からは新幹線延伸工事に代表される新設橋梁を対象に部材を納入していたことから、声がかかりました。

その頃ちょうど関西大学に、本四高速さんから橋梁の補強・補修に関する工法の研究委託(写真3)があったことから「東大阪橋梁維持管理研究会」内ワーキンググループの一つとして、当社が中心となって開発が始まりました。

開発はスムーズに進んだのですか?
写真3)実際の荷載試験状況写真3)実際の荷載試験状況
写真4)鶴澤さん写真4)鶴澤さん

開発には丸2年かかりました。1年目に関西大学での200万回を超える疲労試験によって十分な強度を確認することができました。ワンサイドボルト自体はその時点で完成したともいえます。ところが原寸大供試体で試験施工をしてみたところ、いくつかの課題が見つかりました。狭小な空間で上方を向きながらの作業となるため、施工上での問題点が生じたのです。

まず、ワンサイドボルト施工の際に斜めに締め込んでしまった場合、ねじ山が損傷して期待した強度を得ることができないことがわかりました。誰がどこで施工しても垂直にボルトを締め込めるような工夫が必要でした。

また、下穴施工の際にドリルの先端が上面に突出してしまい、防水層及びアスファルトに損傷を与えることが危惧されました。また、上向きに下穴を開けるので、切削屑が落下する危険性をなくす必要もありました。

加えて、約15kgの当て板を上方に押し当てながらの作業となるために作業者の負担が大きく、簡易に当て板を支えることのできる冶具も必要であることがわかりました。これらの問題点を解決する冶具の開発に1年かかりました。

具体的にはどのような冶具を開発されたのでしょうか?

(1)タッピングボルト案内装置

誰がどこで施工しても垂直にボルトを締め込めるように、ボルトを締める工具の外径にあった筒状の案内装置を製作しました。上向きの作業ですので、当て板との接地面にマグネットを取り付け、ずれが生じないように工夫しました。また、締め付けの際には目視での確認もできるように半透明の仕様としました。

写真5)タッピングボルト案内装置冶具(写真左)写真5)タッピングボルト案内装置冶具(写真左)
図2)使用方法図2)使用方法

(2)切削深さ調整装置

デッキプレートの上には防水層とアスファルト舗装があります。上部にボルトが出てしまうと防水層や路面を破壊してしまうので、ボルトは当て板とデッキプレートの中に納まらなければなりません。当て板に工場で開けた穴をガイドとして磁気ボール盤でデッキプレートに下穴を切削するのですが、磁気ボール盤には深さを指定して切削する機能がありません。そこで、環状刃物の内部にストッパーピンを溶接し、切削深さの調整が可能な構造としました。調整した深さまで切削すると、ストッパーピンと切削屑が干渉し、刃物が止まる仕様となっています。防水層及びアスファルトに損傷を与えることなく下穴加工が可能となりました。

また、施工場所は河川や海の上になります。切削後の屑が落ちてしまわないように、ストッパーピンの先端にもマグネットを取り付けることとしました。

写真6)切削深さ調整装置写真6)切削深さ調整装置
図3)使用方法図3)使用方法

(3)ワーク保持器具

当て板の固定にもマグネットを活用しました。これは市販の「マグスイッチ」という海外メーカー製品を使用しています。この製品は2つのマグネットを重ねて、上部のマグネットを180度回転する構造を作り、2層のマグネットの極性を合わせることにより磁力を発生させ、極性をずらすことにより磁力を打ち消す構造となっています。手動でON/OFFが可能ですので、当て板を挟み込んでスイッチをONにすれば、約300kgの負荷に耐えられる仕様となっており、作業者の負担を減らし、かつ安全な施工が可能となっています。

写真7)ワーク保持器具写真7)ワーク保持器具
図4)使用方法図4)使用方法

すべてアナログでの工夫ですが、様々な問題にも細やかに対応できることが中小企業の強みだと考えていますので、今後も現場からの声に耳を傾けて、改良を続けていきたいと考えています。

これらの冶具は使用マニュアルを準備していますが、現状は我々が出向いて実際の施工をレクチャー・補助しているという状況です。

今後の展開は?

鋼床版の総延長は、首都高速と阪神高速だけでも200km近くあります。数千か所の損傷数が報告されており、その数は増え続けると予想されます。各高速道路会社や公共工事も加味すると、年間100万本の市場となることを予測しています。まずは高速道路会社の補強工事を対象とし、国道等の一般道路橋に対する補強工事をターゲットとしていきたいと考えています。

また、先々のことを考え、現在の「東大阪橋梁維持管理研究会」をNPO法人化し、東京にあるNPO法人橋守支援センターの関西支部として活動をしていく予定です。NPO法人とすることにより、役所等からの相談に乗り、本製品を紹介することができます。公共工事に積極的に活用してもらえるように働きかけていきたいと考えています。

写真8)豊田社長写真8)豊田社長

当社は創業より、ボルトの製造を起点として様々な継ぎ手を開発してきました。ただ、今後はモノづくりとメンテナンスが同時に求められる時代となってきます。全国的な課題である「橋梁補強・補修」に当社も取り組んでいきたいと考えています。

ワンサイドボルト、タッピングボルト案内装置、切削深さ調整装置は特許出願済です。公共工事でも活用してもらえるようにNETISの登録にも着手をしたいと考えています。

そのためには製品名も工夫するべきかもしれません。現在はワンサイドボルトとその施工冶具としていますが、施工者の方に覚えてもらいやすい名称を検討したいと考えています。

今回、初めてボルト・ナットの製造メーカーさんに訪問しました。負担を軽減するために少しの工夫を実現させる発想と行動力は大変勉強になりました。長大橋などの大型構造物も、一本一本のボルトから重要であるという当たり前のことと、日本の「ものづくり」の強みを感じました。全国への展開を期待いたします。

(文責 前田 健二)
取材協力

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