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話題の現場

技術開発の拠点として、半世紀にわたり
建設業界の発展に寄与する五洋建設技術研究所。

2017/06/29

五洋建設株式会社 技術研究所 五洋建設株式会社 技術研究所

設業界の話題の現場を訪問する「現場探訪~話題の現場」。今回は、ゼネコンの技術開発の拠点、技術研究所を探訪します。訪問させていただいたのは栃木県・那須塩原市にある『五洋建設株式会社・技術研究所』。普段は固いセキュリティに守られている施設を、特別に見学させていただきました。以下、紹介します。

1.技術研究所の概要

五洋建設技術研究所は、海外の技術を国内に導入することを目的に、1967年に設立。以来半世紀にわたって五洋建設の技術開発の拠点としてだけでなく、建設業界の発展に寄与する技術の開発研究を行っています。

技術研究所の組織は「土木技術開発部」と「建築技術開発部」に大別され、各開発部の中に複数の分野を設置し、新たな技術ならびに製品の開発、開発へ向けたさまざまな研究が行われています。

【土木技術開発部】
地盤分野
写真1)遠心載荷装置写真1)遠心載荷装置

地震時における液状化対策に代表される防災技術、浚渫土や建設発生土、スラグや石炭灰など産業副産物のリサイクル技術等の開発を行っています。また、遠心載荷模型実験装置等を活用した数値解析技術を用いて、地盤改良工法の検証等を実施しています。

耐震構造分野
写真2)水中振動台写真2)水中振動台

構造物の耐震補強工法などの防災技術、劣化した構造物の耐力評価などの維持管理技術の開発を行っています。また、水中振動台を用いて海域構造物をはじめとする構造物全般あるいは地盤と構造物一体の地震対策効果の検証等を実施しています。

土木材料分野

コンクリートや各種土木材料の品質や施工性能の向上技術、社会インフラの劣化や老朽化を正確に把握するため最新の技術を取り入れた維持管理技術に関する研究・開発を行っています。

海岸海洋分野

津波・高潮・高波対策などから人命・資産を守るための防災技術、海岸侵食や港内堆砂問題を解決する漂砂制御などの環境技術、海域の複雑な波・流れ・水質などを評価する解析技術を開発しています。

ICT分野

情報通信技術(センシング技術、VR、AR、省力化施工、人工知能、UAVの活用等)を土木技術に導入し、生産性の向上(コスト削減)、安全管理や品質管理の高度化を実現するための研究開発を行っています。

陸上土木分野

山岳トンネル、シールドトンネル、橋梁などのコンクリート高品質化をめざした材料および打設方法の技術開発を行っています。また、トンネル工事における安全性向上を目的とした坑内環境の計測設備・換気設備の総合管理システムの技術開発やシールドトンネルの掘進管理の計測技術、安全性と効率性向上のための新材料開発も行っています。

【建築技術開発部】
構造材料分野
写真3)反力壁写真3)反力壁

免制震技術や耐震補強などの防災関連技術、品質向上、工期短縮、コストダウンなど建築物の合理化をめざす躯体構築技術、超高強度コンクリートや高流動コンクリートをはじめとする特殊材料などの開発や技術対応を行っています。また、反力壁を含む載荷実験装置や万能試験機を用いて、新規構造部材の性能検証や各種建築材料の力学的性能評価を行っています。

建築環境分野

ゼロエネルギービルディング(ZEB)の実現に向け、フィールド実験や建物におけるエネルギーモニタリングの実物大による効果検証、数値解析等を用いた省エネ効果予測手法などの省エネルギーに関する技術開発や、安全で快適な室内環境を創造するための空気浄化技術などの開発を行っています。

2.身近な建設現場で活用される技術の開発

土木、建築のあらゆる分野で、将来を見据えた技術の開発研究を行っている技術研究所。特に近年は、海外での現場も多く、日本発の技術に対する期待は高まりつつあります。一方、建設労働人口の減少、生産性の向上等、建設業界の現状のニーズに合わせ、工期の短縮、省力化、低コスト化といった課題の解決も研究所の新たな使命として求められてきています。こうした業界のニーズに対して、五洋建設技術研究所では、ゼネコンならではのダイナミックな技術開発だけでなく、普段、コンコムの読者がすでに活用しているような技術や製品の開発にも積極的に取り組んでいます。

今回は、その身近な技術開発の事例を二つ紹介します。

【曲がり削孔式浸透固化処理工法】

耐震基準が改正された2000年以降、新たに建設される構造物だけでなく、既設の構造物にも新基準への適合が求められました。特に東日本大震災以降、液状化への早急な対応・対策も求められることとなりましたが、構造物の基礎部分の耐震性を強化するためには、コスト面、施工効率の面等、多くの課題がありました。こうした構造物基礎の液状化対策を目的に当工法は開発されました。

図1) 曲り削孔を用いた液状化対策工法の施工イメージ図1) 曲り削孔を用いた液状化対策工法の施工イメージ
特長(メリット)

・省スペースかつ隣接した場所から構造物や施設の直下を地盤改良できるため、作業中も上部施設の供用を止める必要がない。
・長距離かつ広範囲の改良が可能なため、工期の短縮につながる。
・支持杭などの地中構造物や埋設物を避けながら施工することができる。

施工実績(代表例)

・2014年「東京国際空港C滑走路地盤改良工事」滑走路脇の緑地帯から24時間体制で改良工事を実施。供用中の滑走路に影響を与えることなく、また最大削孔長140m、滑走路直下32,000㎥の範囲を工期内に完了した。

※曲がり削孔式浸透固化処理工法について(五洋建設株式会社ホームページ)
http://www.penta-ocean.co.jp/business/tech/civil/ground/bend_hole.html

※曲がり削孔式浸透固化処理工法紹介映像(五洋建設株式会社ホームページより)
http://www.penta-ocean-int.com/wp-content/uploads/2015/03/f46649d5feaaa6d9b33ab2a9a5df44aa.mp4?_=2

【T&C防食-塩害用-/コンクリート塩害劣化防止表面含浸工法】
(NETIS登録番号 HKK-110001-V)

既存のコンクリート構造物の劣化に伴う維持・修繕工事は、現在の建設業界のひとつの柱ともいえる工事です。併せて、新設のコンクリート構造物をいかにして長く使えるものとするか、いわゆるコンクリート構造物の長寿命化も大きな研究テーマとされています。この製品は、新設のコンクリート構造物の耐久性を大幅に向上させることを目的に開発されました。

図2)T&C防食-塩害用-のメカニズムイメージ図2)T&C防食-塩害用-のメカニズムイメージ
特長(メリット)

・撥水性を高めるシラン系と緻密性を高める珪酸系の双方の性能を併せ持ったハイブリット型の含浸材。
・港湾コンクリート構造物等、塩害による劣化が想定される構造物で優れた抵抗性を発揮する。

また、この「T&C防食-塩害用-」をより汎用的に使用できるように開発された製品「バリア シラン」もあります。こちらは塩害による劣化がそれほど厳しくないと予測されるコンクリート構造物用のシラン系表面含浸材。未処理と処理済の写真を比べると、撥水の違いが良くわかります。

写真4)バリア シラン未処理と処理済の撥水比較写真4)バリア シラン未処理と処理済の撥水比較

最後に、今回、特別に見学の許可をいただき、また施設のご案内をいただいた林健太郎所長に、五洋建設技術研究所の使命、これからの方向性、さらに将来の研究所を支えていく人物像などについてお聞きしました。

Q:林所長が考える「技術研究所」の使命とは
写真5)林健太郎 所長写真5)林健太郎 所長

五洋建設の技術力を国内外の建設業界に発信していくことはもちろんですが、もうひとつ重要な使命があると思っています。それは、五洋建設の現場の工事を支える最後の砦であるということです。全国あるいは海外でもさまざまな工事を受注していますが、すべての現場がスムーズに進むわけではありません。さまざまな施工現場で、作業を進める上での課題や問題に直面します。そうした現場のピンチを技術的な裏付けを持ってサポートすること。それが最後の砦という意味です。

Q:建設労働者の減少や生産性向上といった建設業界の現状を鑑みて、これから技術研究所が進むべき方向性は

ICT施工の取り組みが本格化してから、研究環境もより複雑になってきていると思います。これまでは、土木、建築、海外戦略に対応する各分野といった分野ごとの研究に特化していた傾向がありました。今は、そうした専門分野に加え、他分野の経験やデータを活用してより複雑なプロジェクトに全体で取り組むことが最適とされています。
また、業界全体の受注が増えているので、省力化・低コスト化・工期短縮を実現するためのICT化の流れは、今後も加速していくと思います。研究所としても最大のテーマとして取り組んでいきたいと考えています。

Q:コンコムの読者には、これから建設業界をめざす学生もいます。また、建設技術者の中には、現在大学等で土木や建築の研究をしているご子息をお持ちの方もいます。これからゼネコンの研究部門での活躍をめざす方にメッセージを

五洋建設では、卒業後すぐに研究職に配属することはほとんどありません。少なくとも3~5年は、実際の現場に出て、さまざまな人と関わりをもつことが大切だと考えるからです。現場にはいろんな作業を担当する人たちがいます。そうした人たちとのコミュニケーションを通して、建設業を俯瞰する目を養ってほしいと思います。自身が学生時代に学んだ専門的な分野のスペシャリストになることはもちろん大切ですが、建設業はチームで進める仕事です。そういった意味では常にゼネラリストの指向を持って欲しいと思います。

また研究開発は、100のアイデアから実現するのはせいぜい20ぐらいでしょうか。大切なのは常にアンテナを張って、業界の動向や現場が求めていることをいち早くキャッチし、アイデアの源泉を増やすことだと思います。

まとめ

これまでコンコムでは、大学の土木系研究室や高等専門学校の実習の場、寒地土木研究所などを見学させていただきました。今回、初めて民間の研究所を取材させていただきましたが、実は、まだ正式に技術発表がされていない技術もいくつか見せていただきました。残念ながら今回の原稿では紹介できませんが、五洋建設らしい技術、今の建設業界の大きなテーマに合わせた製品だと感じたとだけお伝えしておきます。

取材協力

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