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現場探訪 優れた工事成績評定の現場、話題の新技術、人材確保に役立つ情報をレポート

話題の現場

自然環境の保全と再生へ向けて、
建設業のイメージを変える新しい挑戦
~エコミーティング。

2017/12/25

加藤建設 イメージキャラクター ビオトくん加藤建設 イメージキャラクター ビオトくん

回の現場探訪/話題の現場は、愛知県海部郡に本社を置く「株式会社 加藤建設」が進めている環境配慮活動『エコミーティング』を紹介します。加藤建設といえば、「パワーブレンダー工法」に代表される地盤改良技術や「アーバンリンク圧入工法」等の高い技術力。おそらくコンコムの読者の皆さんも、ご自身が担当する現場で、一度は加藤建設の名前を聞いたことがあるでしょう。

しかし今回ご紹介するのは、高い評価を受けている技術のお話ではなく、加藤建設が取り組んでいる新しい試み、『エコミーティング』について。地域の建設会社が建設業のイメージを大きく変える可能性を秘めた活動は、これからの建設業のスタンダードとなる可能性を秘めているかもしれません。

『エコミーティング』を導入した加藤 徹代表取締役社長に導入のきっかけや現状、これからの課題等についてお聞きしました。また、自然環境課石濵 謙一さん、久坂 耕さんに、これまでの実施事例や今後の目標についてお伺いしました。

Q まず、エコミーティングの概要について教えてください。

『エコミーティング』という活動は、弊社が受注した工事において、①自然環境への配慮、②住民環境への配慮、③コミュニティづくりの3つのテーマのもと、実際の工事現場でどのような配慮・対策および工夫ができるかを検討・提案・実施するものです。さまざまな目線から環境について考えられるよう、現場担当者や技術系職員だけでなく、営業や事務・女子社員も参加してアイデアを出し合いながら進めています。

Q なぜ(いつから)このような活動を始められたのでしょうか?きっかけとなったエピソードなどありますか?
写真1)加藤 徹 代表取締役社長 写真1)加藤 徹 代表取締役社長

2009年の7月からこの活動をスタートさせました。きっかけとなったのは、建設青年会議や商工会議所等のさまざまな集まりに参加する中で、建設業に対して、未だに「自然破壊」や「無駄な公共工事」といったイメージがあることにショックを受けたことです。私たちが子供のころは、周りに自然がたくさんあり、昆虫を追いかけたり、魚を釣ったりすることが当たり前でした。インフラの整備が進み、住民の暮らしが安全になり便利になるに従って、そうした原風景が減っていくこともやむを得ないことだとは思います。しかし、何とか少しでもその環境を残し、時には再生できることはできないだろうか。それができれば、きっと建設業のイメージも変わるのではないかと思いました。

Q エコミーティングを始めてから、どのような変化がありましたか?

実はエコミーティングには環境配慮という面の他にもうひとつのねらいがありました。活動を通じて働く側の意識を変えたい、建設業本来の魅力をもっと感じて欲しいというものです。建設業の仕事は、人々の生活を便利にしたり、災害から守ったり、憩いの場を創造したりするわけですから、工事に関わったすべての職員が大きな達成感とやりがいを感じるはずなのに、必ずしもそうはならない。職員に、この工事は世の中の役に立ったとか、住民に感謝されたとか、もっとやりがいを感じさせてあげることができれば、さらにいい工事をやりたい、さらに自分の知識・技術を高めたいという意識につながっていくと考えました。そのきっかけとして環境配慮活動を採り入れようと思いました。

実際、エコミーティングを実施して環境に配慮した工事をすることで家族に話す機会も増え、家族が仕事に対してこれまで以上に興味を示してくれるようになったようです。そのお陰で誇りをもって日々の仕事に関わるようになったという話を聞きました。現場に携わる一人ひとりが環境や生態系を意識することで、新しいコミュニケーションが生まれ、現場の雰囲気が和やかになる効果もあると思います。

Q これまでに実施したエコミーティングの代表的な施工事例を紹介してください。

●施工事例①
工事名:橋りょう補修事業 県道佐屋多度線立田大橋下部補強工事
工事場所:愛知県愛西市立田町地内
工期:2010年8月25日~2011年6月30日
発注者:愛知県建設部

写真2)玉石撤去前の様子 写真2)玉石撤去前の様子
写真3)3年後の様子 写真3)3年後の様子

当工事は木曽川に架かる立田大橋の橋脚補強工事でした。写真2)のように、玉石がヨシの生育を妨げるように置かれていたことから、この玉石を撤去してヨシの繁茂を再生できないかと考えました。現場には工事用の重機もありますし、玉石の撤去自体は大きな負担とはならないため、発注者である愛知県ならびに河川管理者でもある木曽川下流工事事務所に相談しました。この時は、撤去した玉石を護岸に活用することも提案し、設計変更まで認めていただきました。施工から3年が経過した頃には、写真3)のように繁茂エリアが広がっています。また、現場では絶滅危惧種に指定されている植物「タコノアシ」を調査で確認したので保護した結果、今では着実に増加しています。

●施工事例②

写真4)現場で守ったエノキの大木 写真4)現場で守ったエノキの大木

工事名:最終処分場土木施設建設工事
工事場所:愛知県大府市大東町地内
工期:2013年6月4日~2015年3月13日
発注者:東部知多衛生組合

最終処分場を建設する工事対象地には大きなエノキが立っていました。当初設計では、このエノキは伐採する予定でしたが、エコミーティングの結果、地域に生息するヒヨドリやメジロ、蝶などの生態系のネットワークの一部となっていると判断しました。地域の周辺環境を調査し、生息する生物をまとめた資料を作成。発注者に提案した結果、伐採を回避することができました。現在では、このエノキは周辺地域のシンボルツリーにもなっています。

●施工事例③

図1)設計変更の概略図 図1)設計変更の概略図

工事名:平成25年度 二級水系員弁川水系志知谷川砂防(遊砂地工)工事
工事場所:三重県桑名市大字志知地内
工期(当社):2014年7月5日~2014年8月19日
工事概要(当社):砂防堰堤下部の地盤改良工事
発注者:三重県桑名建設事務所

写真5)ヒメタイコウチ 写真5)ヒメタイコウチ

地盤改良工事の対象地に市の天然記念物である『ヒメタイコウチ』が生息しているとの情報があり、現地調査ならびに保護活動を実施しました。また、ヒメタイコウチには湿地の存在が重要であるため、元請会社と発注者に通水性能を有する地盤改良を提案。設計変更協議を経て、改良率50%にて施工を行いました。

Q エコミーティング後に、設計変更に関わるような検討事項が発生することもあると思います。必ずしも発注者に認めてもらえるわけではないですよね。
写真6)石濵 謙一課長 写真6)石濵 謙一課長

その通りです。エコミーティングによる提案には、工事啓発のためのかわら版や環境掲示板作成のような身近なものから、工事内容の変更にかかわるような大きなことまでさまざまです。当然、工事内容の変更に関わるものについては、なかなか実現できるものではありません。
ただ、エコミーティングの究極の成果は、たずさわる人が常に自然環境に配慮する意識を持って行動することだと思います。まずは自分たちの工夫やちょっとした配慮で可能なことから始めようというスタンスで取り組んでいます。

写真7)地域の生態系を紹介する環境掲示板 写真7)地域の生態系を紹介する環境掲示板

この活動を始めるにあたり、ネーミングについても社長を中心に議論しました。「エコプロジェクト」や「エコパトロール」といった案もありましたが、あまり肩肘を張ったネーミングでは、聞いた方も構えられてしまうでしょうし、職員にもプレッシャーがかかってしまうのではと思い、“みんなで考える”というイメージを残して「エコミーティング」としました。

Q 企業としては、活動を事業化して一定の営利を得ることも考えられたと思いますが。

確かに開始前は、「せっかくこんなに良い取組なのだから、営利企業として他社との差別化をアピールした方がいい。」という意見もありました。しかし、私たちはあくまでも建設業のプロフェッショナル集団であり、環境配慮活動は地域と生物の共生を考えた付加価値の創造のひとつと位置づけました。

Q エコミーティングの今後の目標や課題について教えてください。
写真8)久坂 耕係長 写真8)久坂 耕係長

2009年の開始以来、社内には確実に浸透してきました。現在、公益財団法人 日本生態系協会が認定している「ビオトープ管理士」の資格も全社員の約半数近い、128名が取得しています。これからのステップは大きく広めていくことです。多くの建設会社が環境の維持と再生を考えるようになることで『建設業=環境破壊』のイメージから脱却し、最終的には建設会社や発注者だけでなく、学生さんや周辺住民の方々にも参加していただけることが目標です。

まとめ

加藤建設のエコミーティングを知ったのは、10月に行われた「建設技術フェア2017 in 中部」の出展ブースでした。建設技術の紹介ブースが並ぶ中、水槽が置かれ、希少生物が展示されている様子に興味を持ちました。簡単な説明を伺い、資料をいただきましたが、取材する前には、「これをどうやって事業化するのだろう」「利益はどこから出すのだろう」というのが疑問として残りました。今回、加藤社長をはじめ、関係部門の皆様にお話しを聞き、私たちは大きな勘違いをしていたことに気づきました。エコミーティングの根本にあるのは、建設会社の新しいビジネスモデルではなく、環境を守ること、さらには建設業全体のイメージアップを考えた取組でした。
“事業”ではなく“活動”としての取組に、大きな感銘を受けました。また、加藤建設の活動は、『生物多様性アクション大賞2017』並びに「環境人づくり企業大賞2016」の環境大臣賞を受賞するなど、建設業界のみならず環境保全のさまざまな分野で確実に評価され始めています。コンコム編集部としても、この活動が今後、さらに普及し、建設業のスタンダードとなる日がくることを期待しています。

取材協力・資料提供

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