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現場探訪 優れた工事成績評定の現場、話題の新技術、人材確保に役立つ情報をレポート

話題の現場 

日々の疑問をアイデアへ、そして製品に。
熟練技術者不足を解消する「法面勾配指示器」。

2014/03/26

写真1)オービット製品写真写真1)オービット製品写真

設業界は永年つづいた厳しい状況から脱し、公共・民間工事ともに景気回復の兆しが見えてきました。しかしながら、次代を担う若手の建設業への入職率は依然として低く、また団塊の世代が卒業した後の技術の継承等、解決すべき課題は数多くあります。

今回の現場探訪は、法面工事等のバックホウによる作業で、ベテランの『勘』や『経験』といった技術に頼ることなく、より安全に、より早く、より正確に切土や盛土作業が行える「法面勾配指示器/オービット」を開発された会社を訪問し、開発のきっかけや製品化までの苦労、現在の販売状況などをお伺いしました。

開発された株式会社 アスカ技建の小谷博志社長、製造・販売を担当している株式会社 オービットの久徳義朗社長のお二人が主人公です。

法面勾配指示器(オービット)について

  • 概要
    法面の切土・盛土工事において、バックホウのバケットに取り付けた勾配指示器により、オペレーター自身の目視による作業を可能にする。法面工事の安全性・効率性を大幅に向上させる。
オービット動画(切土編)

( URL : http://youtu.be/rhg1FJ3OKKM )

製品規格 ステンレス製、5.0kg
特長 複雑なシステムを用いず、あらかじめ設定した目標の法面角度を保つことが可能。
従来必要とした補助員の作業頻度が軽減され、安全性向上、コスト低減を実現。
熟練オペレーターの人材確保難の解消。
軽量かつ簡易な取り付けのため、現場内での機器の共有が可能。
登録 特許/特許番号 特許第3650788号
NETIS(国土交通省 新技術情報提供)/登録番号 KT-120055-A
販売価格 189,500円(税込)
表彰 平成25年度 建設施工と建設機械シンポジウム「優秀ポスター賞」
  • 写真2)従来の切土工事のイメージ写真2)従来の切土工事のイメージ
  • 図1)オービットを使用した切土工のイメージ図1)オービットを使用した切土工のイメージ
オービットを開発しようと思ったきっかけは?

写真3)株式会社アスカ技建 小谷博志社長写真3)株式会社アスカ技建 小谷博志社長

「20年ほど前、鹿児島で左官業を営んでいた父親の影響で、建設会社で働いていました。まだ若かったので、いろんな重機の操作を行っていましたが、どうしてもベテランのオペレーターの人と比べ、時間がかかってしまいました。法面の正面切りにも、おそらく倍以上の時間がかかっていたと思います。仕上がりも、やはり熟練工の方とは比較にならないぐらい恥ずかしいものだったのではないでしょうか。『悔しい』気持ちと『何とかならないか』という思いで父親に相談したのがきっかけです」。

なぜ左官業の父親に?

「父は昔からアイデアマンで、自分で使う道具や機具を手作りで作ったりすることが好きでしたので。まぁ、軽い気持ちで相談した感じです。相談から半年ぐらいでしょうか、当時現場の職人さんが昼食で食べていた『サバ缶』を見て閃いたようです。『サバ缶』のような形状に重りを下げて平行を確認できないかと。そこから試作品を作り、私が実際の切土作業で使ってみたところ、思った以上に早く、また出来映えもなかなかのものだったので、実際の現場で使うようになりました」。

そこから一気に製品化へ?

写真4)試作品第一号写真4)試作品第一号

「いや、しばらくは身内で使っていただけです。若い職人も簡単に使いこなせるし、何より複雑なシステムでもなかったので、これは商品になればいろんな現場で使えるのではないかとは思っていましたが、実際に製品化をしようと思ったのは平成13年ぐらいです。知り合いの大阪の町工場に頼んで作ってもらったのが試作品第一号でした」。

「試作品が完成した後は、私としてはまさに『意気揚揚』と現場周りをして、製品の説明をしました。半年ぐらい、いろんなつてを頼って、重機工事会社の現場を紹介してもらい、昼休みなどの時間を借りてデモンストレーションを行いました。しかし、残念なことに、当時はまだ『団塊の世代』と呼ばれるベテランの職長さんやオペレーターがバリバリに活躍している時代でしたので、全く相手にされず、『こんなものいらない』『必要ない』といった厳しい言葉ばかりでした。そんなことを3年~4年ぐらいつづけていましたが、さすがに辛くなり、本業の方も忙しくなってきたこともあり『オービット』の事業から手を引いてしまいました」。

そのような経緯から再び『オービット』に注力した理由は?

「平成15年から和歌山で事業をスタートさせ、順調に仕事も増えてきていたころ、平成23年9月に、紀伊半島史上最高の雨量となった台風12号の被害に見舞われました。復旧へ向けた工事が進められる中、『人も重機』も全く足らない状況となり、鹿児島時代の先輩で、非常に可愛がってもらっていた久徳社長に『何とか人と重機を送ってもらえないか』と相談しました。その際に、『実はオービットという製品を開発したんだが、なかなか受け入れてもらえない。そちらの方も力を貸してくれないか』といった相談をしました」。

久徳社長がその相談を受けた時の印象は?

写真5) 株式会社オービット 久徳義朗社長写真5) 株式会社オービット 久徳義朗社長

「災害復旧のための支援は、人助けになると思い、何とかしてやろうと思いましたが、『オービット』に関しては、『よくわからなかった』というのが正直な感想です。小谷社長が熱く語るし、地元の後輩の頼みだから、まあ機会があれば何とかしようといった程度の想いだったと思います」。

現在の販売状況は?

「平成24年の8月に、株式会社オービットを設立しましたが、多い月は約40台の発注をいただいております。しかし、宮崎県の都城市にある工場では、月に20台程度しか生産できない状況です。ですから、発注をいただいた方に待ってもらうこともあります。なるべく早く納品したいのですが、手作りの部分も多く、ご迷惑をかけています」。

「この話だけをすると、非常に順調のようにも見えますが、宣伝費をかけられるわけではないですし、最初は、自分の会社が請負った復興工事の現場などで『口コミ』で広げていった感じです。その状況が一変したのが、平成25年の5月に宮城県岩沼市で行われた日本建設機械施工協会主催の『災害復興工事に役立つ情報化施工講習会』への出展でした。情報化施工委員会の復興ワーキンググループより講習会への参加を勧められました。両隣のブースは大手の重機メーカーと全国規模のレンタル会社で、機械もすごいし、ブースも賑やかでした。一方こちらは、機械は小さいし、一応手作りのシステムでデモンストレーションを行いましたが、非常に肩身が狭かったです。ところが、いざ説明を始めると、どんどん人が集まってきて、隣のブースのレンタル会社や重機メーカーから『ぜひ製品の提携をしたい』と声をかけられ、私もびっくりしたのと、嬉しいのとで、その場で業務提携を結んでしまいました。それをきっかけに、販売・レンタルとも一気に発注が増えました」。

  • 写真6)オービットの製造工場(宮崎県都城市)写真6)オービットの製造工場(宮崎県都城市)
  • 写真7)オービット製作風景写真7)オービット製作風景

「今、インドネシア(バリ島)から研修生を受け入れて、オービットを活用した法面整備の技術を教えている。現地の関係者からも『3D画面などを使用したシステムは経費も高く、導入は難しいが、これならできる。』と期待されています。

苦労して開発した製品ですが、開発者として小谷社長が考える改善点は?

「やはりもっと大量に生産されて、価格がもっと下げられるといいなとは思います。今、企業からの発注だけでなく、個人のオペレーターからも問い合わせがたくさんあります。本来なら、会社で買ってもらえばいいのでしょうけど、中小企業だとなかなかそうもいかないケースもあります。実際に現場で使ってみたオペレーターの方が、ぜひ個人的に使いたいと、自分も現場オペレーターの経験が長いですから、そういった職人の声に少しでも答えてあげられたらいいなと思います」。

「後は、取り付けの際に少しでも早く簡単にできるよう、もっと軽量化を図れたらいいなと思います。オペレーターがいろんな現場に手軽に持ち運べるようになれば、もっと用途は広がりますし、それを見た他のオペレーターの方にも宣伝になると思います」。

「今はまだ、知る人ぞ知るといった製品ですが、いずれは全国の現場の汎用品として普及してくれたらいいなと思います。今、建設現場は本当に人材不足に悩まされています。熟練工はリタイアし、若い人への技術継承もままならない状況です。そうした時代に少しでも貢献できたら、アイデアをカタチにしてくれた父親も喜んでくれると思います」。

若いころ現場で直面した悩みから生まれた「法面勾配指示器(オービット)」。昨年の3月に「コンコム/トピックス」でも紹介した『原子力災害復旧工事』の現場でも活用されたそうです。コンピュータも複雑なシステムも使わず、簡単に導入することができる製品として、また、熟練オペレーター不足に悩む現場の救世主として、全国に普及することを期待します。

取材協力

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