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砂丘を守るサンドパックを用いた
「浜崖後退抑止工」を国土交通省国土技術政策総合研究所とメーカー3社で共同開発

2013/08/20

はじめに

図1)海岸侵食速度(国総研HP掲載)と我が国の長大砂丘・浜堤の分布(福本紘[1989]地理学評論62A-2 pp.108-128.)を重ね合わせた図図1)海岸侵食速度(国総研HP掲載)と我が国の長大砂丘・浜堤の分布(福本紘[1989]地理学評論62A-2 pp.108-128.)を重ね合わせた図

岸侵食によって日本では毎年160haもの国土が失われている。特に、砂丘の前面で、海岸侵食が起きている場所が多く、浜崖を形成している。

浜崖とは、海岸の砂丘等に波が衝突することにより、切り立った崖面を形成する現象である。特に砂丘は、風等で長時間かけて形成されるが、ひとたび削り取られると自然に戻ることは難しい。しかしながら砂丘は、集落形成の場を提供したり、高波浪・津波・しぶきや塩害から背後地を守る自然の防災施設の役割を担っており、砂丘を保全する重要性は非常に高いと言える。

海岸侵食に対する対策は、離岸堤やヘッドランドを建設し海岸から下手・海域への土砂移動を抑制して堆砂を促す手法と、直接海岸に養浜する・総合土砂管理等で河川から海岸への土砂供給量を増加させる手法に大別される。海岸から下手・海域への土砂流出を抑制する新たな手法としてサンドパック(砂袋詰め工)を用いた「浜崖後退抑止工」が加わった。

サンドパックは、ジオテキスタイル製の袋に砂を充填する工法である。海外では広く用いられているが、波浪が大きく砂礫浜が多い日本の海岸では摩耗や波の作用に対する不安から普及していなかった。

国土技術政策総合研究所は、民間土木繊維材料メーカー3社と共同で「海岸保全における砂袋詰め工の性能評価技術に関する研究」(H22~H24)を行い、日本の厳しい海岸環境においてサンドパックに必要とされる性能を明らかにした。また、耐候性土のうよりも強度・耐久性がはるかに高いサンドパックを開発し、新たな海岸保全工法「浜崖後退抑止工」として活用するマニュアルをとりまとめた。

共同研究参加メーカー

  • ナカダ産業株式会社
  • 前田工繊株式会社
  • 三井化学産質株式会社
参考

浜崖後退抑止工

図2)浜崖後退抑止工の断面図図2)浜崖後退抑止工の断面図

崖後退抑止工とは、浜崖の基部をサンドパックと養浜で保護することにより浜崖の後退を抑制する工法である。また、サンドパックは、現場砂浜又は養浜材料となる砂を土木用繊維でできた大型の布袋(幅4m、高さ1.5m、長さ20m)に充填するものである。

共同研究を担当した国総研河川研究部海岸研究室諏訪義雄室長に浜崖後退抑止工について、特徴と施工例、今後の課題を伺った。

なぜ今まで日本で砂袋詰め工サンドパックが普及しなかったのか?

写真)国土技術政策総合研究所 河川研究部海岸研究室 諏訪義雄室長写真)国土技術政策総合研究所 河川研究部海岸研究室
諏訪義雄室長

海外では既に用いられていますが、海底勾配が急で海浜材料が粗く波浪の大きい日本の海岸では、既存のサンドパックでは、劣化や流失の心配も大きく、普及しませんでした。

しかし、日本の厳しい海岸環境に適応できるサンドパックが開発できればその長所である施工の迅速性・経済性を生かして、保全効果の早期発現が期待できるのではないかということで、私たち国総研海岸研究室とメーカーとの共同で、サンドパックに必要とされる性能評価法について研究を行うことにしました。

共同研究では、現地実験、水理実験、劣化促進試験等によってサンドパック(SP)の劣化予測や波力に対する必要重量算出等ができるようにし、適用可能な海岸の条件を明らかにしました。

技術開発にあたって苦労した点は?

今回の共同研究のポイントの1つは、現場に実際にサンドパックを施工し、高波浪に対して大丈夫であることを実証する現地実験を行うことでした。そのためには、現地実験に協力していただける現場を提供いただく必要がありました。現場の海岸管理者や利用者等関係者のご理解が不可欠でした。幸い、大磯海岸や宮崎海岸、千里浜海岸、浜住海岸、伊良部島等現地実験に協力いただけたことはありがたかったです。

また、共同研究は2年間の予定でスタートしましたが、途中で東日本大震災が発生し、私ども海岸研究室は震災対応で手一杯になり、1年延長せざるをえなくなりました。共同研究参加メーカーさんにはご心配をおかけしたと思います。

浜崖後退抑止工の特徴

  • 天端高を低くするとともに現地の砂浜になじんだ色のサンドパックを用いることで景観に配慮できる。
  • 現地の砂や養浜材をポンプ等で布袋に充填することで迅速かつ経済的に施工できる。コストはコンクリート製護岸の約8割。
  • コンクリートに必要な養生期間が不必要なので短期間で施工可能である。
  • 撤去が容易であることから、構造物による効果や副作用を確認する現地実験の試験構造物、仮設物としての利用にも向いている。
  • サンドパックが常に露出して日射や雨にさらされる、摩耗が厳しく作用すると想定した場合には寿命は最短約10年(コンクリート製護岸の寿命より短い)。しかし、砂に埋まり気象要因劣化や摩耗劣化がやわらげば寿命は延びる。
  • コンクリート製に比べて強度が劣るので、定期的に点検を行い、劣化具合等をチェックする必要がある。
  • 摩耗劣化外力が厳しい、常に波浪が作用する砂浜が消失した砂礫海岸では、適用が困難。
  • サンドパック袋材は重機の接触で損傷しやすいので、施工にあたっては留意が必要。
現地実験
施工場所 宮崎県住吉海岸
施工期間 H24.2~H25.3
試験概要 本現地実験は、幅4m、高さ1.5m、長さ20mのサンドパックを2段積もたれ式で設置し、浜崖保護、養浜保護に用い、効果の確認を行った。
サンドパックは3種類。うち2種類は、水槽に中詰め材と水を混合して流動化させた状態で、サンドポンプにて圧送充填する方式を採用。もう1種類は中詰め材を土のうに入れてサンドパックに重機で並べて充填する方式を採用。前面に複砂する養浜を行った。3種類のうち2種類は、設置後1年が経過しても波浪に対して試験体自体の大きな変形や袋材の破断は確認されなかった。1種類は変形により袋材が破損した。
サンドパックを設置していない養浜部分は侵食されていたが、サンドパック設置箇所は大きく侵食されていなかったことから、サンドパックの養浜保護効果が確認された。
  • 写真①施工途中写真①施工途中
  • 写真②完成写真写真②完成写真
実施例
施工場所 福井県浜住海岸
施工期間 H24.5~H24.6(延長100m)、H25.3(延長20m)、(H23.3施工実験)
工費 9,409,050円
施工者 山田建設株式会社、株式会社松田(幸)組
袋材提供 前田工繊株式会社
事業概要 浜住海岸は福井市の西方に位置する海岸で、福井市で唯一の砂浜の海水浴場として人気のある場所であるが、侵食が進んでおり、 浜崖が顕著になっている。そこで浜崖後退を抑制することを目的に、護岸型施設としてサンドパックを120m設置し、養浜盛土を行った。
  • 写真③施工前写真③施工前
  • 写真④サンドパック完了写真④サンドパック完了
  • 写真⑤養浜盛土完了写真⑤養浜盛土完了
情報提供

海岸研究室が考える今後の課題と期待

共同研究により、サンドパックの大きさ・重量の設定方法や袋材の摩耗や紫外線等に対する強度劣化の評価法、適用可能な海岸の条件等が示されましたが、海岸管理者がサンドパックを採用するためには、耐久性の一層の向上が望まれます。また、海岸利用者等からは堅固なコンクリート構造の工法以外の砂浜を復元する保全手法に期待する声も多く寄せられています。さらに、財政の悪化等から公共事業全般へのコスト縮減も必然とされています。サンドパックは現地の砂礫や養浜材を袋に詰める工法であり、設置や撤去が容易でこういった期待に応えられる可能性を秘めていると思います。

今後、耐久性の問題等を改良し、多くの現場で採用されるよう期待しています。

取材協力

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