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2015/8/27
建設業が扱う仕事は、工事ごとに工種が異なり、また期間や設計もさまざまで、注文を受けてから施工する完全受注生産という面で他産業と大きく違っています。このため、総合建設会社等は元請会社として工事を全体的に管理し、自社で施工できない或いは品質や効率の面から適切な施工が期待できる作業を、専門としている会社に下請として発注する形態をとります。しかし、品質や効率だけでなく、コストの面でも下請会社の状況を把握するという考え方をとっている企業はまだまだ多くありません。請負った工事の採算性を考える場合は、一部企業にしわ寄せがいかないように各企業が適切な利益を捻出できる考え方が重要です。専門工事業の会社との信頼関係が維持できないと、将来の発展はありません。本号では、工事管理をリードする元請会社として協力企業とWinWinの成果をあげる3つの視点について紹介します。
まずは元請会社の監督さん次第で、自社も協力企業も生産性やコストが増減するという意識をもちましょう。元請会社のコストは発注時点である程度固定します。そのため、“発注した工種は下請会社に任せている、進捗も数量ベースで抑えることはしていない“ということが往々にしてあります。しかし、協力企業の出来高確認を怠ってしまうと、元請会社としては下請への発注コストは変わらないとしても
等の問題が生じます。下請会社の進捗出来高も、自社施工を行う場合と同じように、出来る限り短いタイムサイクルで確認しましょう。
※出来高数量を出来るだけ簡単に算出し、工程表と連動する考え方は、ポイント2絵に描いた餅にしないためのコツ〜実行予算・生産管理〜の視点3を参照してください。
下請契約単価は、①実行予算作成後にその範囲内で取り決める場合と②実行予算作成前に下請会社から提出された見積を参考にして実行予算を作成する場合があります。
一般的に①の場合は実行予算単価≧発注単価、②の場合は実行予算単価=発注単価になります。出来高(金額)は実行予算単価×出来高数量、元請のコストとしては、発注単価×出来高数量で算出されます。つまり元請の場合、出来高数量を把握すれば、一度に「出来高」「コスト」「損益」がわかります。一方、元請のコスト=下請の出来高となります。
下請の出来高を把握するためには、数量の把握しやすい「運搬土」の出来高数量を基準にグループ化した他の作業の出来高を算出する方法が簡単です。
以下の事例では、掘削工3000m3 、運搬工2000m3、 残土処理工2000m3を同時に進行する作業グループと想定しています。その中で運搬土量を指標として、運搬台数などから出来高を算出します。220m3の運搬量とすると進捗は11%となり、同時に進行する他の作業の進捗率も11%とし、それぞれ出来高金額を算出しています。
表1)実行予算及び発注単価例
下請請負契約の際はコスト管理を軽視しがちですが、「本日のコストは請負契約内の作業であるか?」「コストとなる出来高を適正に算出できているか?」等、下請会社のコストにも目を向けることが大切です。特に契約外作業が施工中に発生した場合では、後々の金額交渉のためにも、協力企業の要した労務作業人数や機械などを詳細に書き留めておくなどの工夫が必要です。
先に説明したように、元請のコスト=下請の出来高となります。下請会社が直営施工型の場合は、「原価要素」とその「数量」がコストとなります。元請会社には、元請下請間の信頼関係を築き、共に利益を出せるように工夫するという考え方が必要です。そのために、大方の原価要素から下請会社のコストも予測してみましょう。
以下の事例は、上記同様、掘削工・運搬・残土処理の土工事を下請へ発注した場合の下請会社の出来高管理の例です。同じく「運搬土」を指標に、日々の出来高を把握します。
表2)下請会社の本日の出来高例
労務費や機械費が出来高以上にかかっていると思われる場合は、元請下請間でよく情報を共有し、原因を分析して生産性を伸ばすなどの解決策を適宜対応していきましょう。
協力企業のコストまで把握するのは手間がかかりますが、協力企業も適正な利益を確保できるようにすることに留意すべきです。そうでなければ結果として下請会社の体力が低下し、人材不足や社会保険未加入業者などの課題を根本的に解決することはできません。
建設業界のことも考えて、お互いに発展できる関係を目指していきましょう。
次号では、コスト管理の「見える化」で変化した企業の事例を紹介します。
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