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2014/02/26
まず、今回の工事の概要について、関東地方整備局 宇都宮国道事務所の鹿島秀昭工事品質管理官にお伺いしました。
当該工事は、足利市堀込町地先にある国道50号(足利バイパス)の堀込高架橋(上下線)において、地震時における落橋や倒壊等の甚大な被害を防止するため、下部工(12基)の底版補強や橋脚コンクリート巻立てを施すとともに、落橋防止用の変位制限装置(112基)・落橋防止装置(16基)を設置するなど、橋梁の耐震性を高めることを目的とした耐震補強工事です。
この橋は、昭和61年度に完成しましたが、緊急輸送道路としての機能向上により、阪神・淡路大震災や東日本大震災のような大規模地震時における安全性及び信頼性の向上が期待されます。
本工事は、耐震補強という工事の特徴として細かい工種が多く作業環境も狭隘です。特に落橋防止用の変位制限装置の据付けに際しては、アンカーの位置決めのため、現地での鉄筋探査、探査結果に基づく照査、発注者側の承諾、工場製作側への指示が必要となってきます。このようにクリアーすべき段取りが多く、工期に余裕がなかったと思いますが日々監督職員や専門企業と連携を密にして工程管理を行って、工期内に工事を完成させています。
さらに、橋脚コンクリートの表面処理に新技術の「バキュームブラスト工法」を採用したり、巻立てコンクリートのひび割れ防止用の混和剤を工夫したり養生にも工夫を凝らすなど、品質確保に積極的であったこともポイントだと思います。
また、高架橋下には交差点があり、小学校の通学路にもなっていたことから、児童等の安全対策にも十分留意した施工を行うとともに、工事期間中には独自に小学校と調整を図り、児童が作成した絵画(足利の花火)の展示や自社の過去の施工の段取りを写真で掲示し、わかりやすく作業内容をPRするなど、公共工事のイメージアップにも積極的に取組んでいたことも評価の一因になりました。
では、実際の施工者は、工程管理や品質確保について、どのように対応し工期通りに完成できたのか、当工事の監理技術者である大協建設株式会社の柴田匠さん、現場代理人の河内康修さんに話しを伺いました。
今回が4回目の橋梁補強工事でした。この経験を踏まえてコンクリートのひび割れ対策が重要と考えました。また、工程が多様であるので、段取り良く工程を進めることも重要と考えました。
通常は、コンクリート巻立ても変位制限装置据付けも一つの足場ですませていますが、これではどうしても巻立てグループに遊び時間ができてしまうので、変位制限装置等のためのつり足場と巻立て用の足場を別々に組むことで、上部の作業とは独立して巻立て作業ができるようにしました。
また、事例は少ないのですが、幅木付きの手すり先行足場を採用しました。下請企業と相談して決めたのですが、結果的に幅木を取り付ける手間が省け、工程上も有利となり安全性も高く、使用して良かったと思っています。
落橋防止用の変位制限装置は数が多く、据付けには既設鉄筋の位置を現地で確認し、位置が当初設計と相違すれば、鉄筋を切断しないようアンカー部の再設計、照査をした上で発注者の承諾が必要でした。
そこで、発注者の承諾がスムーズにいくよう、メールをフル活用してコンサルタントと打合せを行い、設計変更のシミュレーションや変更した場合のコストの試算など議論されるテーマを想定して資料を作成し、打合せにのぞみました。打合せは毎日のように行っていましたが、発注者側もその日の打合せで結論を出そう、という気持ちでのぞんでくれたのがありがたかったです。
また、細かい工種が多く、工種ごとに発注者や専門企業と立会をしながら次の工種に移るという工事なので、手戻りや作業待ちを防止することに気をつけました。専門企業とは本立会の前に事前立会を行い、施工後に品質証明員(社内)の立会を行い、最後に発注者との本立合に臨みましたが、このすべての立会日を週間工程に組み込んで、下請企業も含めて週一回の工程会議で確認、計画通りに作業を進める意識を徹底しました。
1回目の耐震補強工事では、薄いコンクリート厚であることを考慮し、充填重視でスランプ12cmで打設しましたが、ひび割れが発生してしまいました。そこで、2回目以降の耐震補強工事はスランプ8cmで打設してきたのですが、今回はさらに良い品質にしたいということで、ひび割れ防止に良い添加剤を検索したところ、NETIS登録のひび割れ防止剤「モアクリート」を発注者に提案し使用してみました。
バイブレーターの締め固めについても、コンクリート屋さんに任せ切りにはせず、50cm以内の打設高を守るようチェックしました。 さらに、湿潤養生を続けるため型枠はずしも3日後でなく7日後とし、脱型後も工場用ラップを巻いて水を加え、乾燥させないようにしました。結果、ひび割れの低減、耐久性・表面品質の向上に充分な効果があげられたと思います。
着手前に現場説明を行うのは当然ですが、工事の段取りが変るたびに周辺のみなさんには説明しました。工事終了後もアンケートをとって我々の対応にご意見をいただいています。最初から最後まで地元との連絡調整をとっていました。
具体的には、作業帯を確保するため側道を狭めてガードレールで常設規制帯を区分するのですが、このガードレールに、停電の心配がなくメンテナンスも簡単なソーラ式LED点滅灯(新技術)を設置し、視認性の向上を図りました。子供たちには、工事に対する関心を持ってほしい反面、絶対に現場立入りを防止する必要があったので、ガードレールに併せてネットフェンスを設け二重ブロックを施しました。また、朝夕の通学時間帯には、自発的に誘導員を一名増員して安全に配慮しました。
本工事は、耐震補強という特殊性から、書類による協議事項や工種ごとの立会を必要とする工事でした。そのため、円滑な打合せができるように事前準備や工程会議での連絡調整の徹底を図りました。結果、発注者や専門企業等との日々のコミュニケーションとお互いの信頼関係が築き上げられ、ひとつひとつの作業が計画通りに進み、良い品質で工期内に工事が完成できたことが高く評価されたのだと思います。
また、周辺住民や周辺環境への配慮に心がけるとともに、公共工事のイメージアップにも取組んでいたことも評価に繋がったのではないでしょうか。
発注者側に対して、どうしたら満足して、気持ちよく引渡しができるかを、日々心がけながら施工管理しています。
なので、工期が1年以上ありましたが、日々の仕事に追われながらあっという間に過ぎて行った気がします。特に意識した訳ではないので、仕事への配慮や日々の積み重ねが、結果として評価に繋がったのだと思っています。
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