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2015/06/29
「徳山高専には、機械電気工学・情報電子工学そして土木建築工学の三学科があり、土木建築工学科は⼀学年40人定員、そのうち3割〜4割は⼥子学⽣です。学⽣の大半は山口県内出身者が占めています。以前、土木建築工学科は他の科に比べて人気のない時代もありましたが、今年は⼀般受験で実質的に6倍の倍率があり、全国の高専の中でもトップでした。
高専は中学⽣が受験しますので、中学校に掲示する学⽣募集ポスターを在学⽣主体で制作しています。作業着を着てツルハシを持った学⽣たちが周南大橋を作ったというストーリーのポスターです。『この橋は私達が作った』というところがミソです。中学⽣目線で『この仕事につきたい』『道路や橋、建物など社会に役⽴つものを作ってみたい』と思わせるような内容になっています。土木・建築のファンを増やすという試みが成功しているといえます。
「中学⽣が持つ土木・建築のイメージは実は建築が大部分です。ですが社会の仕組みを教えると土木も好きになります。今回のポスターでも、1枚目のツルハシは正直言っていかがなものかとも思いましたが、4枚目の笑顔がカッコいい。ゼネコンに就職した学⽣が『責任が重くて大変な仕事だ』といいながらも⽂句も言わずに残業している様子をみると、好きな仕事であれば3Kという評価を吹き飛ばすことができると思います。土木・建築の仕事を好きにさせるところに高専の教育⼒が問われると思いますね。」
「高専は、『高校+大学』を⼀貫教育することでいわば『飛び級』をさせて、スーパーエンジニアを育てることを目的とした学校と思っています。『即戦⼒』となる優秀なエンジニアを社会に供給することが使命ですので、理論と現場をつなぐためのカリキュラムも充実させています。
構造⼒学や⽔理学、地盤工学など基礎系の学習も重視していますが、たとえば工学デザインという科目を1年⽣から5年⽣まで継続的に実施して、建築でいえば木造建築からコンクリート建築までの設計、土木でいえば土木構造物のトレースからプレートガーダ橋の設計ができるようになるカリキュラムもとっています。
また、『即戦⼒』ということではエクセル等の表計算はもちろんですが、CADなど最新のツールを使いこなせる人材を育成するカリキュラムもあります。おかげさまで同業4年制大学の教官や企業のみなさんからも高専のカリキュラム(学⽣)はすごいという評価をいただいています。」
「土木建築工学科では、約4割の学⽣が専攻科に進学あるいは4年制大学に編入し、残る6割が就職します。さらに就職する学⽣のうち10人程度は役所を選択しますが、これは⼥子学⽣が多いです。⺠間に就職する学⽣は15人程度になりますが、これは大手ゼネコンやJRなど、インフラを持つ企業に就職する傾向が強いですね。4年⽣と専攻科1年⽣時に、建設会社や役所でインターンシップを実施していますが、このときの印象も重要なポイントになっていると思います。300社以上から求人をいただきますが、学⽣の絶対数が少なくて、ご要望にお応えできていないのが現状です。」
田村隆弘教授
「役所を選択する学⽣は⼥子学⽣が多いと言いましたが、親御さんも含めて地元志向が強いためだと思います。また、⼥性が男性と同じように働ける職場としては発注者側である役所、という認識がまだまだあると思います。⺠間の会社を選ぶ基準としては、バブル期までは給料の良いところと言っていましたが、今は給料よりも⾃分の時間があることなどを重視しているように思います。
ただ、今の学⽣は好きな仕事でないと続かない、『就職したのだから我慢して続けよう』という気持ちが少ないです。反面、好きな仕事なら残業も苦にしないという特徴もあり、結局学⽣のうちにどれだけ土木や建築を好きにさせることができるかが重要ではないかと思います。先程紹介した学⽣も『橋が作りたい』とゼネコンに就職して、若くして橋梁工事の現場代理人をさせてもらっているようで頑張っています。」
「教員側に『コンサルタント業界は高専の学⽣には敷居が高い』という意識があるのは事実です。ですが、学⽣の目線でみると、コンサルタントはゼネコンと発注者の間にあって、果たしている役割がわかりにくいということがあるように思います。どんな仕事をしているのかよくわからないが、忙しいというイメージが影響していると思います。また先輩からの話しとして『忙しすぎる』という評判も影響しているように思われます。」
「地元の建設会社さんからの求人は多いのですが、その希望に応えられていないことはまったく申し訳ないと思っています。学校の開設にあたっては地元の大きな支援があってのことですので。
決定的に学⽣数が少ないということもありますが、教え子には好きな分野で思いっきり⼒を発揮させたいと考えているので、指導教員としては大きな工事を担うことの多い全国的なゼネコンを勧めるということになってしまいます。
また、地元の建設会社さんも『高専は敷居が高い、うちのような会社では無理でしょうね』という姿勢が強いです。『我が社であなたのやりがいや夢を実現できる』という将来像を示して、学⽣に訴えかけてもらいたいと思います。
山口県も発注者として県内の会社の⽴ち位置をどのように考えていくか、その時に高専の卒業⽣がどんな役割を果たすのか、というビジョンを示すべきだと思います。」
今回の取材では触れられませんでしたが、徳山工業高等専門学校では3年⽣を対象に、「集中測量実習」を測量合宿として実施しているそうです。起伏に富んだ郊外土地の地形図を、クラス全員で完成させることを目標に実施するこの合宿が、昭和60年から30年もの間、継続的に実施されているとのこと。15歳で土木・建築の道を選択した学⽣が、充実したカリキュラムで鍛えられ、土木・建築を好きになって巣⽴っていく高専には、技術者の未来が詰まっていると感じました。
あらためて、取材にご協⼒いただいた徳山工業高等専門学校のみなさまにお礼申し上げます。
⽂責:森田悦三、前田健二
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