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現場探訪 優れた工事成績評定の現場、話題の新技術、人材確保に役立つ情報をレポート

表彰工事

歴史的遺構を最新のICTで復元。
出来形と機能を両立させ、中国地方整備局
局長表彰を受ける。

2019/01/30

回の現場探訪は、平成30年度国土交通省中国地方整備局の局長表彰を受けた「百間川二の荒手改築他工事」。この工事を受注された蜂谷工業株式会社にて、当工事の監理技術者・塩津賢祐さんに工事の概要とICT土工への取組、土木遺産に認定されている遺構の復元への配慮等についてお話しを聞きました。

工事名 百間川二の荒手改築他工事
工事概要 掘削工、盛土工、法面整形工、残土処理工 等
発注者 国土交通省中国地方整備局 岡山河川事務所
工期 平成28年8月17日~平成29年6月30日
受注者 蜂谷工業 株式会社
施工場所 岡山県岡山市中区中島地先
請負金額 227,664,000円(税込)
監理技術者・現場代理人 塩津 賢佑
Q 今回の工事の概要について簡単にご説明ください。

百間川(ひゃっけんがわ)は岡山の市街地を流れる旭川の放水路として、江戸時代に開削されました。「百間川二の荒手改築他工事」は、1974年(昭和49年)より国土交通省が本格着手してきた「百間川改修工事」のうち、分流部の整備を行うものです。旭川の氾濫を防ぐために、江戸時代に「三段の荒手(越流堤)」が作られましたが、「三の荒手」は1892年(明治25年)の洪水で流失しており、現存する「二の荒手」「一の荒手」を改修して機能を維持することが目的です。当工事は、「二の荒手」の改修と導流堤の整備が主な工事となります。

資料1)百間川分流部改築事業の概要(資料提供/中国地方整備局岡山河川事務所)

資料1)百間川分流部改築事業の概要(資料提供/中国地方整備局岡山河川事務所)

  • 写真1)二の荒手着工前

    写真1)二の荒手着工前

  • 写真2)二の荒手着工後

    写真2)二の荒手着工後

Q 今回の工事で特に重視したこと、また大変だったことは何でしょうか?

「二の荒手」は土木学会の選奨土木遺産に認定されている歴史的な遺構ですので、それを復元しつつさらに機能を維持するための改修を行うことは、私としても初めての工事でしたし、着工前は不安が大きかったです。発注者からも「センス良く積んでください」というプレッシャーをかけられたので、余計に緊張しましたが、逆に重要な遺産を扱うんだ、昔の土木技術に触れるチャンスだというやる気も湧いてきました。

Q 土木学会選奨土木遺産にも認定されている「二の荒手」について、作業上工夫した点、配慮した点はありますか?
写真3)石積みの様子

写真3)石積みの様子

荒手(越流堤)としての機能を維持させることはもちろんですが、やはり見た目も大事だと思いました。昔から、この荒手の風景を知っている人にとっても、違和感のないものにしようと心がけました。具体的には、現存する石を活用する際に、少しでも目地を見せないようにするとか、欠けていたり、古くなって再利用できない石の代わりに、代替えの石を現場で探したり。積み方に関しては、専門の石工さんに任せましたが、「センス良く」のキーワードはずっと頭から離れませんでした(笑)。

Q 今回の工事は施工者希望型の「ICT活用工事」でしたが、具体的にどのようなICT技術を導入されたのでしょうか?また導入した目的は何ですか?
写真4)レーザースキャナーによる測量

写真4)レーザースキャナーによる測量

基本的には河川土工に使用するために導入しました。レーザースキャナーによるデータ収集からバックホウによる作業までです。これまでの工事でGNSSを用いた測量による締め固め等は行っていましたが、レーザースキャナーを使用したICT土工は初めての経験でした。会社としてこれからはICTを積極的に採り入れていこうという方針もあり、その最初の取組としてこの工事に採用しました。

Q 施工にICTを活用して、どのようなメリット(効果)がありましたか?また逆に今後の課題としてはどのようなことがありましたか?
写真5)ICT重機の応用

写真5)ICT重機の応用

他の現場も同じだと思いますが、丁張がいらないことによる工期の短縮、バックホウの作業中に補助員がいらないことによる安全面の向上が大きなメリットではないでしょうか。しかし、やはりコストの面では、多少課題があります。河川工事では、レーザースキャナーによる出来形管理を頻繁に行う必要があるため、その都度、外部のオペレータを頼んでいてはコストが嵩んでしまいます。当工事では、弊社も初めての導入でしたので、やむを得ず外注しましたが、次の「一の荒手」の改修工事では、レーザースキャナーのオペレーションは全て自社で行いました。また、バックホウなどのICT対応重機のレンタル料も決して安価ではありません。当初計画の作業だけでなく、工期中のいろんな作業に効率よく応用していくことが、コストのムダをなくすためには不可欠だと思いました。実際に、当工事でも、石張りの裏込砕石の施工にも応用してみました。結果、精度も良く、作業効率も向上しましたので、応用が成功だったと思います。

Q 初めての本格的ICT施工への取組だということですが、講習等を実施されたのですか?
写真6)現場講習会

写真6)現場講習会

会社の方針でもありましたので、北海道の「砂子組」さんのICT導入のための講習に参加してきました。そこでICT活用の流れや概要、導入にあたっての注意点等を学習したことで、今回の工事に活かすことができました。実際の工事では、メーカーによる現場での講習会を実施し、運転手も含めて、端末の操作方法を学びました。

Q 現場での工事情報発信について、モニターを設置して周辺住民にアピールしたそうですが、具体的にどのような情報を発信したのですか?
写真7)モニターによる工事情報発信

写真7)モニターによる工事情報発信

従来の現場では、パネル等を常設して、工事の内容や進捗状況等を掲示していました。今回、レンタル会社さんからクラウドを活用したモニターによる情報発信の方法を聞いて、映像の方が興味を持って見てくれるのではないかと思い、導入してみました。川沿いのマラソンコースに休憩所とトイレを作り、そこにモニターを設置しました。タッチパネル式でいろんな情報が見られるため、休憩中の人々も興味深く見てくれていたと思います。従来のパネルによる方式では、最新の工事進捗情報をリアルタイムで掲示することは難しいですが、このサービスなら、タブレットから情報を送るだけで、モニターに反映されますので、今日の作業予定等、詳細に案内することができました。

Q 塩津さんが監理技術者として工事を担当する際に日頃心がけていることは?
写真8)塩津賢佑さん(監理技術者)

写真8)塩津賢佑さん(監理技術者)

まず、現場全体が同じ目的、同じ方向を向いて作業できることを考えます。そのために、職長さんはもちろん、作業員とも積極的にコミュニケーションを取ることを心がけています。当工事でも、「二の荒手」の手前の導流堤の改修について、「現存のままでも機能するのではないか」といった意見もあり、4月まで結論が伸びてしまいました。最終的には、当初の予定通り改修することになりましたが、旭川は6月中旬には出水期を迎えるため、工期は約2か月しかありませんでした。職長さんは「絶対に間に合わない」と感じていましたが、二人で何度も計画を話し合い、「これなら間に合う」という方法を見つけ、意思を共有することができました。私ひとりが「できる」と思っても、現場で実際に作業を行う人たちが半信半疑であっては、工期内に完成することはできなかったと思います。

Q これから現場代理人や監理技術者をめざす若い技術者にメッセージをお願いします。

現場の人たちと積極的に話をして欲しいと思います。ベテランの職人さんは、これまでいろんな現場を経験しています。想定外のことが起きた時、自分で判断することが難しい時など、彼らのアドバイスで解決策が見つかることもあります。普段からその人の経験談を聞いたり、逆にいろんな相談をしたりして、何でも話せる関係になっておくことが大事だと思います。また、これは私自身にも言えることですが、ICT施工はどんどん進化していくと思います。そうした新しい技術や工法を勉強していくことが不可欠になってきますので、現状に満足せず情報収集をしていくことが大切です。

それから、建設業は発注者がいて成り立つ仕事です。常に発注者の期待していること、要望していることを理解して現場を動かすことが原則です。今回の工事であれば、最初に発注者からいただいた「センス良く積んで」も言葉としては漠然としていますが、やはり担当者としては、出来栄えも重視しているんだということを常に頭において作業することが原則となります。

おわりに

今回取材させていいただいた工事は、歴史的な構造物を復元しつつ、越流提としての機能を維持するというものでした。土木学会の選奨土木遺産にも認定されていることから、工事期間中も見学者が数多く訪れたそうです。そうした衆目の中で工事を行うことは、現場責任者としてはかなりの緊張感があったと思います。

塩津さんはこの工事の後、引き続き「一の荒手」の改築工事も担当されたそうです。しかもこの工期の完成間近の時には、まだ記憶に新しい西日本豪雨が発生しました。塩津さんは、雨の降り始めた7月5日から6日にかけ、工事事務所に泊まり込んで、見守ったそうです。工期は1か月延びたものの、水位が下がった後、復元した「一の荒手」はそのままのカタチで現れたそうです。改めて先人たちの土木技術の高さを知る機会になったと話していました。

コンコムでも4月から「土木遺産を訪ねて~歩いて学ぶ歴史的構造物」を掲載していますが、単に構造物を紹介するだけでなく、その役割や機能、造られた経緯等についても紹介できればと思いました。

取材協力/資料提供
資料提供
コンコム「土木遺産を訪ねて~歩いて学ぶ歴史的構造物」

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