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話題の現場

軟弱地盤の改良で改良期間の短縮と
周辺環境の保全を実現する『真空圧密工法』。

2019/02/27

空圧密工法は1940年代にスウェーデンで考案された地盤改良技術です。我が国にも1960年代前半、軟弱地盤の強度増強を図る工法のひとつとして導入されました。以降、多様な工法が開発され、また圧密の際に利用する真空ポンプや気密シートの改良が進むなど、現在はさまざまな工事で活用されています。今回の現場探訪では、『真空圧密工法』の概要とメリット、今後の可能性等について、株式会社アサノ大成基礎エンジニアリングの荒井幸夫氏にご寄稿いただきました。また、『真空圧密工法』を用いて施工されている「東北中央自動車道/南陽高畠~山形上山間」(NEXCO東日本 株式会社)の現場を見学させていただきました。その事業概要や『真空圧密工法』による軟弱地盤対策等について紹介します。併せてご一読ください。

1. 真空圧密工法とは

基礎地盤が軟弱な粘性土や有機質粘土である場合、こうした地盤上に構造物を構築すると、圧密現象により沈下が長期間にわたって生じることになります。その結果、構造物に変状が生じる等、維持管理に多大な労力が必要になる場合があります。これを防ぐため、地盤を改良することが考えられますが、地盤改良の原理は一般に、①置換、②圧密・排水、③締固め、④化学的処理、⑤補強に分類され、真空圧密工法は②圧密・排水の一つの工法になります。

真空圧密工法は真空ポンプや鉛直ドレーンなどを用いて、地盤内に負圧を作用させ、地盤内の間隙水を排出することで、圧密により地盤の強度増加を図る工法です。ちょうど、ストローでコップの水を飲むのと同じ原理で排水されます。この時、全応力が変化しない状況下で、有効応力が増加し圧密を促進させるものです。

真空圧密工法には、改良原理は同じですが真空の載荷方法の違いから、(1)シート式真空圧密工法、(2)キャップ式真空圧密工法、の2つの工法があります。それぞれ特長がありますので、採用する際には技術資料などを参考に検討してください。

(1)シート式真空圧密工法

改良対象範囲を減圧するために、伸縮性を有する気密シートで地表面を覆います。真空ポンプによる減圧は、気密シート内部に伝達し、地表に敷設された水平ドレーンを介して、鉛直ドレーンに作用し、地中の水と空気を吸い上げます。シート内に設置された気水分離タンクを経由して排出されます。

図1)シート式真空圧密工法概要図<br>(出典:真空圧密技術協会、高真空N&H工法 技術資料、2013.) 図1)シート式真空圧密工法概要図
(出典:真空圧密技術協会、高真空N&H工法 技術資料、2013.)
鉛直ドレーン打設後に、水平ドレーン設置(写真左側)、<br>その後に気密シート設置(写真右側)<br>写真1)シート式真空圧密工法設置状況図 鉛直ドレーン打設後に、水平ドレーン設置(写真左側)、
その後に気密シート設置(写真右側)
写真1)シート式真空圧密工法設置状況図
(2)キャップ式真空圧密工法

排水ホース付き気密キャップを取り付けたプラスチックボードドレーンを軟弱地盤中に設置し、排水ホースと集水管を通して負圧作用装置に直結して負圧を作用させると、ドレーン内部は減圧され外部よりも圧力が小さくなります。この圧力差を利用して粘性土中の間隙水をドレーン内に誘導して上部へ排水します。

図2)キャップ式真空圧密工法概要図<br>(出典:真空圧密ドレーン工法研究会、真空圧密ドレーン工法 技術資料、2016.) 図2)キャップ式真空圧密工法概要図
(出典:真空圧密ドレーン工法研究会、真空圧密ドレーン工法 技術資料、2016.)
写真2)キャップ式真空圧密工法設置状況図<br>(出典:真空圧密ドレーン工法研究会、真空圧密ドレーン工法 技術資料、2016.) 写真2)キャップ式真空圧密工法設置状況図
(出典:真空圧密ドレーン工法研究会、真空圧密ドレーン工法 技術資料、2016.)

2. 真空圧密工法の特長・メリット

真空圧密工法の特長を以下に記します。

・短期間でしかも安定した改良効果が得られます。
・真空圧の作用により、外向きの地盤変位が抑制されるため、盛土の急速施工が可能で、工期を短縮できます。
・セメントなどの固化材を使用しないため、環境面で優れます。
・強度増加を図るため、載荷盛土との併用が可能です。

また、載荷盛土工法に比べ、載荷盛土がないため、以下の特長があります。

・盛土材の搬入・搬出がないため、工期短縮が可能となります。
・盛土載荷による周辺地盤への影響が小さくなります。
・盛土がないため、円弧すべりのようなせん断破壊を生じません。
・サンドマットが不要です。

図3)載荷盛土工法における地盤の変形概要図 図3)載荷盛土工法における地盤の変形概要図
図4)真空圧密工法における地盤の変形概要図(シート式の例) 図4)真空圧密工法における地盤の変形概要図(シート式の例)

3. 今後の活用と課題

真空圧密工法は、開発されてから近年に至るまで実工事でほとんど採用されることはありませんでした。高真空を維持する装置と気密性の高いシートが開発された1992年頃から実績が増加してきており、先行したシート式真空圧密工法で約200件、後発のキャップ式真空圧密工法で約90件となっています。用途は、道路、河川、造成、と幅広く、超がつくような軟弱地盤に対しても採用されています。また、水中でも可能なキャップ式では海面処分場の減容化など、用途を広げています。他の地盤改良工法に比べれば実績が少ないのですが、工期を短縮でき、周辺地盤への変状が軽減できるのは大きな利点となっています。

真空圧密工法では、真空圧や設備などの運転に関する定常管理の他に、周辺への影響計測、盛土の安定管理、沈下管理などを動態観測しながら施工することで、品質と安全の管理を行います。これらの結果は、これまでも多く公表されていますが、今後も工法の発展のために継続していく必要があると考えています。

4. 現場レポート「東北中央自動車道/南陽高畠~山形上山間」整備工事

【工事概要】
路線名 東北中央自動車道 相馬尾花沢線
区間 山形県東置賜郡高畠町大字深沼から山形県上山市金瓶まで
延長 24.4km
車線数 完成4車線(暫定2車線)
発注者 NEXCO東日本 東北支社 山形工事事務所
完成予定 平成30年度
資料1)東北中央自動車道の概要図 ※提供:NEXCO東日本 山形工事事務所 資料1)東北中央自動車道の概要図 ※提供:NEXCO東日本 山形工事事務所
概要

東北中央自動車道は、福島県・山形県・秋田県の内陸主要都市を結ぶ、全長約268kmの高規格幹線道路です。現在整備が進められている「南陽高畠~山形上山間」の開通によって、すでに供用されている区間と併せ、東北自動車道と連結する福島JCTから東根ICまでつながります。全線開通の際には、福島~山形の移動時間の短縮はもちろん、並行して走る国道13号の慢性的な渋滞の緩和等、さまざまな整備効果が期待されています。

整備効果

東北中央自動車道の開通による効果は以下の通り。

①周辺交通路との相互補完
国道13号の東北中央自動車道並行区間の渋滞緩和と併せ、国道13号の交通障害時の代替路となる。東北自動車道、山形自動車道との連結で、山形エリア、福島エリアおよび仙台エリア間に高規格幹線道路のダブルネットワークが構築される。

資料2)山形、福島、仙台間のダブルネットワークのイメージ<br>※提供:NEXCO東日本 山形工事事務所 資料2)山形、福島、仙台間のダブルネットワークのイメージ
※提供:NEXCO東日本 山形工事事務所

②所要時間の短縮
南陽高畠IC~山形上山IC間の開通により、山形市~米沢市、山形空港~米沢市の移動時間がともに約20分短縮される。

③地域医療環境の改善
南陽高畠IC~山形上山IC間周辺には、生命の危機に瀕している患者に緊急対応する「三次救急医療施設」が三か所あり、開通により複数の施設の選択が可能となる。また、信号による停止もなく、大きなカーブもないため、傷病者を早く安全に搬送することができる。

④物流効率化の支援
全国1位の出荷量を誇る「ラ・フランス」や「さくらんぼ」といった特産物を早く安定的に首都圏へ運ぶことで、農産物の物流の効率化が期待できる。

資料3)東北中央自動車道を活用した首都圏への輸送 ※提供:NEXCO東日本 山形工事事務所 資料3)東北中央自動車道を活用した首都圏への輸送 ※提供:NEXCO東日本 山形工事事務所

⑤広域的な交流・連携強化
東北中央自動車道の周辺に点在する温泉地をはじめ、全国的に著名な観光地間の移動の利便性を向上させ、県外観光客の増加等、広域的な観光促進が期待される。

⑥地域産業の支援・地域の活性化
すでに供用されている南陽高畠IC、山形上山ICの周辺には工業団地が数多く分譲されている。今後は首都圏へのさらなるアクセス向上により、地域産業の一層の活性化が望まれる。

軟弱地盤対策

南陽高畠IC~山形上山IC間の整備事業の最大の課題ともいえるのが、当該地域の大規模な軟弱地盤(白竜湖軟弱地盤)対策です。現在は水田として利用されている白竜湖付近一帯は、かつては広大な湿原地帯でした。このため地質は、地表面から非常に柔らかい高有機質土が厚さ10m以上堆積し、その下位は柔らかい粘性土や緩い砂質土が複雑に堆積し、深さ100m以上においても基盤が確認できません。こうしたわが国でも有数の超軟弱地盤地帯といえる当該地域の地盤特性から、計画段階から非常に難しい工事となることが予想されました。地盤改良のさまざまな手法が検討され、開通後の維持管理までを考慮した経済性と施工性の優位性から、施工区間に「真空圧密工法」を採用することとなりました。実際の施工にあたり、NEXCO東日本では、平成23年から平成25年にかけ、3つの工区で異なる試験盛土を実施しました。この試験施工で得られた改良範囲と周辺地盤の沈下等の動態観測を基に、「真空圧密工法」によって十分な効果が得られることが確認されたことから、平成26年に本格的な整備工事に着工し、平成30年にはすべての区間で真空圧密を完了しています。ちなみにこの時の最大改良深度35mは、「シート式真空圧密工法」を用いた陸上地盤改良では国内最大級の施工であったそうです。

資料4)3つの異なる盛土試験施工<br> ※出典:東日本高速道路株式会社 稲荷雄太郎 他4名<br>「軟弱地盤に建設する高速道路の試験施工に対する一考察」<br>地盤工学フォーラム東北2014,2015.1 資料4)3つの異なる盛土試験施工
※出典:東日本高速道路株式会社 稲荷雄太郎 他4名
「軟弱地盤に建設する高速道路の試験施工に対する一考察」
地盤工学フォーラム東北2014,2015.1

おわりに

コンコム事務局が現場を見学させていただいたのは平成30年の12月下旬。当日の現場は雪がなかったものの、本格的な降雪シーズンを目前に控え、まさに急ピッチで工事が進められている最中でした。それにも関わらず、現場の状況をご説明いただいたNEXCO東日本 東北支社 山形工事事務所の皆様には改めて御礼を申し上げます。また、無事に完成の日を迎えられますよう、祈念しています。開通後は、開通式の写真等、改めてご紹介する予定です。

取材協力・資料提供

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