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現場監理の達人 現場監理に役立つチェック項目を、工程ごとにご紹介

集合住宅編
第8回 鉄筋工事-3

2015/07/30

合住宅建設における工事監理者の業務を主体とした「現場監理の達人 集合住宅編」では、全37回にわたり工種ごとの工事監理のポイントについて、専門用語の解説や事例写真を使いわかり易く解説しています。工種別のチェックリストもPDF形式でダウンロードできますので、ぜひ業務に活用ください。

ここでの監理者の心構え

筋量が不足していたために必要な耐震性が確保できず、2005年に発覚した構造計算書偽装問題では、建物を解体する社会的問題になりました。鉄筋配筋仕様の間違いがコンクリート打設後に見つかり、コンクリートを部分的に解体した事例もあります。鉄筋工事は建物の安全性を担う重要な工事です。

施工者に自主検査をしておいてもらいますが、基本的に工事監理者は各階のコンクリート打設前に、配筋検査(工事と設計図書との照合及び確認)を実施します。工事監理者の配筋検査で修正点があれば、修正してからコンクリートを打設します。配筋検査で大きな指摘があれば、コンクリートは予定通り打設できなくなります。

鉄筋工事はコンクリート打設後に隠れてしまうため、コンクリート打設前に工事監理者が現物を見て検査します。工事監理者の配筋検査が最後の砦となりますので、確実に設計図書通りに配筋されていることの確認が重要な役割になります。

5. 鉄筋の継手の仕様

重ね継手の長さ(SD295の場合)

重ね継手の長さ(SD295の場合)

出典:公共建築工事標準仕様書(建築工事編)

建物の長さが30mあった場合に、30mの鉄筋を使えればいいのですが、それでは現場に運び込むことも組み立てることもできません。鉄筋工事では鉄筋加工図を作成して、どこでつなぐかを検討します。鉄筋は所定の長さに加工したものを運び込み、現場でつなぎ合わせながら施工します。つなぎ合わせた部分を継手といいます。

柱筋の場合には、SRC造などで2階ごとにつなぐケースもありますが、普通は1階ごとに鉄筋を組立て、コンクリートを打設していきます。

鉄筋に応力がかかった時に、継手で応力が伝達されなければ、継手が弱点になってしまいます。継手で確実に応力が伝達されるように、継手の仕様が決まっています。継手の種類には重ね継手、ガス圧接継手、機械式継手、溶接継手があります。

鉄筋の重ね継手の仕様は表(右上)のようになっています。径が異なる鉄筋の重ね継手の長さは、細い鉄筋の径(d)によります。柱及び梁の主筋ならびに耐力壁の鉄筋の重ね継手の長さは、特記によります。耐力壁の鉄筋では、特記がなければ40dと表(右上)の長い方の値とします。工事監理者は配筋検査で、壁筋、スラブ筋などの重ね継手の長さを確認します。

6.継手の位置

継手の位置は、設計図書の仕様によります。日本建築学会の「建築工事標準仕様書・同解説 鉄筋コンクリート工事」では、継手位置は図のようになっています。基本的な考え方は、鉄筋にかかる応力の大きな箇所を避けて継手を行うということです。柱の継手位置は、柱の中央部分です。スラブから500上がった位置から、圧接可能範囲になります。

柱の継手位置
柱の継手位置
大梁の場合の継手位置

大梁の場合の継手位置

梁下端筋の継手位置は、荷重がかかったときに引張り応力が大きい梁中央は避けています。逆に、梁上端筋は梁の中央で継手を設けます。基礎梁では、耐圧盤がない場合には、柱際の応力が大きいので中央で継手を設けます。耐圧盤がある場合は、下から荷重がかかるので、梁上端筋の梁中央を避け、梁下端筋は梁中央で継手を設けます。

小梁の場合の継手位置
小梁の場合の継手位置

7.圧接工事

柱主筋、梁主筋の継手では、主に圧接もしくは機械式継手が用いられます。圧接工事は建設現場で多く使われていて、鉄筋を加熱し溶融して接合する方法です。

① 有資格者証、作業手順、設備の確認
圧接工事の資格者証の確認
圧接工事の資格者証の確認
圧接工事の資格者証の確認

施工後に圧接部分を見て、形状が適正であるか、鉄筋同士に偏心がないかなどを目視で判断できますが、内部の接合状況はわかりません。テストピースをとって、鉄筋引張試験を行いますが、サンプリングによる検査です。圧接工事では川上管理を確実にすることで、結果の品質を守ります。事前に確認するものは、有資格者証、作業手順(施工要領書)、設備になります。

圧接工事は技能を持った有資格者に施工させます。鉄筋径によって資格も変わりますので、圧接する工事内容を満たしているかどうか資格者証を確認します。

設備の確認では加熱する火口に種類があり、鉄筋径に適合した火口が使われていることを確認します。

② 外観検査

外観検査で、圧接部分の形状や鉄筋同士の偏心の程度を確認します。接合部がクシャとつぶれた形状になっていると、鉄筋に引張力が働いたときに引っ掛かりとなって、応力が集中してしまいます。なだらかな形状であることを確認します。

外観検査

圧接部のふくらみの直径 D≧1.4d
※径の異なる場合は細い方の鉄筋径

圧接部のふくらみの長さ L≧1.1d
かつ、その形状がなだらかであること

外観検査

圧接部における鉄筋中心軸の偏心量 e≦(1/5)×d
※径の異なる場合は細い方の鉄筋径

出典:公共建築標準仕様書(建築工事編)

外観検査では鉄筋径に対して必要寸法を満たしていることを確認します。

ガス圧接部の外観検査
  • 圧接部が一列に並ぶと応力が集中するので、隣り合う圧接部は400以上離し、千鳥に圧接します

    圧接部が一列に並ぶと応力が集中するので、隣り合う圧接部は400以上離し、千鳥に圧接します

  • 梁筋を組んだ後で、「馬」を外して落下させ、型枠内に納めます

    梁筋を組んだ後で、「馬」を外して落下させ、型枠内に納めます

③ 鉄筋引張試験

圧接本数に対して規定されたテストピースをつくり、鉄筋引張試験を実施します。テストピースを引っ張って、圧接部分ではなく母材で破断すれば合格です。圧接部のふくらみの直径は、母材の直径の1.4倍以上が基準なので、面積にすると(1.4×1.4=1.96)で約2倍になります。しっかりと接合されていれば、接合部ではなく母材が先に破断します。接合部に欠陥があると、接合部で破断してしまいます。工事監理者は、鉄筋引張試験報告書で、破断した強度を含め合格であることを確認します。

  • ガス圧接部のテストピース
    ガス圧接部のテストピース
  • テストピースの抜き取り箇所
    テストピースの抜き取り箇所

    梁主筋のテストピースを抜き取った後で、鉄筋片を入れて2ヵ所圧接してつないだ部分です。

鉄筋引張試験で不合格となった場合には、施工者は直ちに作業を中止し、欠陥発生の原因を調査して、必要な改善措置を定め、工事監理者の承諾を受けなければなりません。

8.機械式継手

カプラーの取付(柱主筋)

カプラーの取付(柱主筋)

機械式継手の活用も増えてきました。写真の機械式継手は、異形鉄筋同士をカプラーでつなげて、樹脂グラウトを注入して固定します。

  • グラウト材注入(柱主筋)
  • グラウト材注入(梁主筋)

グラウト材はブルー色をしているので、充填状態を確認できます

「鉄筋工事の確認」ができる
チェックリストをダウンロード

工事監理では、「工事と設計図書との照合及び確認」が求められていますが、具体的に何を確認するのかは明確ではありません。どのような確認項目があるのか、体系的に理解していただけるように、チェックリストをご提供します。

チェックリストは2つあります。1つは、工事監理ガイドラインの「確認項目及び確認方法の例示」です。もう1つは、公共建築工事標準仕様書(建築工事編)を参考に作成した「工事監理チェックリスト」です。しっかりとした確認をするために、これらのチェックリストをご活用ください。

PDFファイルをご覧になるには、Adobe® Reader®がインストールされている必要があります。インストールされていない場合は左のアイコンからダウンロードが可能です。

原稿協力

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