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【コンコム/防災を考える~第四回】―メトロの防災について(1)―

【コンコム/防災を考える〜第四回】
―メトロの防災について(1)―
前 東京地下鉄株式会社 常務取締役鉄道本部長
現 メトロ開発株式会社 代表取締役社長 入江 健二

2015/07/30

はじめに

東京の地下鉄ネットワークは、東京メトロ9路線、都営地下鉄4路線の合計13路線である。東京における地下鉄ネットワークは概成したとされているが、2014年から運政審答申の見直しが始まっており、現在の内容を質的に向上させること等が加わることになると思われる。

図1)東京メトロ路線図図1)東京メトロ路線図

2013年度の東京メトロ各路線の営業概要は、営業路線数9路線、営業キロ195.1km、駅数179、車両数2,719両、1日平均輸送人員677万人で前年度より30万人増加している。これは震災の影響から脱し景気が回復したこと、副都心線が渋谷駅で東急東横線、横浜高速みなとみらい線と相互直通運転を開始(2013年3月16日より)したことが1日平均の輸送人員を上げた大きな要因である。従業員数は8,692人、グループ会社を含めると約1万人の規模である。1日平均の運行本数は平日約5,500本、休日約4,500本を数える。また、相互直通運転によって、シームレスなネットワークを形成してはいるが、1ヶ所支障をきたすと多方面に影響が出る面もあり、相互直通運転の各社間でその対応方策を検討実施している。以下、東京の都市機能を支える東京メトロの防災対策について詳述する。

1. 災害対応システム

写真1)総合指令所写真1)総合指令所

東京メトロに関わる防災対策には、自然災害(地震、大雨、強風)対策と火災対策、テロ対策がある。災害が起こると、現場(災害の発生場所)では「現地対策本部」をたてるが、そのおおもとは「総合指令所」となる。総合指令所は、運輸指令・車両指令・施設指令・電力指令から成り、各種の情報を司る中枢の場所である。セキュリティの関係で場所は非公開となっている。本社には「対策本部室」があり、災害発生時には現地対策本部、総合指令所、対策本部室が連携し、現地の状況等の画面をリアルタイムで見ながら対応するシステムになっている。

2. 3.11東日本大震災における状況と対応

1) 列車の緊急停止から運転再開までの状況

2011年3月11日14時46分18秒 東北地方太平洋沖で強い地震が発生した。東京メトロ沿線でも40ガル以上の揺れを推定し、地震発生から1分27秒後に早期地震警報装置が作動、列車無線で「緊急停止自動音声」が流れ列車は停止した。また、東京メトロの綾瀬車両基地で、40ガル以上の揺れを実測、14時48分20秒 地震警報装置作動、列車無線で緊急停止自動音声出力。その30秒後に同車両基地で100ガル以上の揺れを実測。14時48分51秒 地震警報装置作動、停止信号を自動出力し、東京メトロの全路線で全列車運転見合わせとなる。地震発生から約2分後のことであった。

駅間で停止した列車は86本あったが、最徐行(時速5km以下)の運転で次駅収容をするのが決まりであり、収容完了が15時36分であった。(駅ホーム停止列車は89本)

図2)列車の緊急停止から運転再開までの状況図2)列車の緊急停止から運転再開までの状況

16時00分から、全路線の全区間にて、技術係員による歩行点検を実施。施設に異常のないことを確認した路線では、安全確認列車(回送)を運転。安全確認列車運転後、他社局と運転再開のタイミングと運転区間について調整を行った。20時40分 銀座線全区間と半蔵門線一部区間で運転を再開。以降、各路線で順次運転を再開し、終夜運転も実施した。翌日、相互直通相手会社が順次運転を再開するに従い、該当路線において全区間で運転を再開した。

地震後には計画停電が開始され、相互直通相手会社の中には相当な影響が出た会社もあったため、地震発生後の数ヶ月間は間引き運転ダイヤでの対応となった。

2) 地震警報システム

東京メトロには、沿線に地震計が6箇所(小石川、代々木上原、深川、行徳、綾瀬、和光)、エリア地震計が36箇所設置され観測網を形成している。

地震が起きた際の対応には、運転規制(列車の緊急停止措置)と設備点検(エリア毎の点検レベル判定)の2段階がある。

地震が発生し、沿線の6箇所に設置された地震計が地震のP波を検知すると、その後に到達するS波の大きさを予測して、その予測値が40ガル(現在は震度4)以上の場合は列車に無線の自動音声で「緊急停止」を伝え、100ガル(同震度5弱)以上の場合はさらにATC(Automatic Train Control:自動列車制御装置)を停止信号として列車を速やかに停止させる。また、気象庁の緊急地震速報の情報を基に、配信会社のシステムが前述の6箇所の地震計設置個所におけるS波の大きさを予測し、その予測値が40ガル(同震度4)以上の場合は列車に無線の自動音声で「緊急停止」を伝える。

運転再開にあたっては、沿線の36箇所の地震計の実測値に基づいて、100ガル未満(同震度4以下)のエリアは列車を走行させての点検、100ガル(同震度5弱)以上のエリアは技術係員による歩行点検を実施することとしており、この点検レベルが総合指令所から点検を行う関係区所に対して指示される。

東日本大震災時には、全線にわたり100ガル以上の数値を示しており、全路線の全区間で歩行点検を実施した。東京メトロでの被害状況は、地上部での後楽園〜本郷三丁目間でコンクリート柱傾斜、南千住駅構内のコンクリート亀裂、北千住駅構内のトロリー線コネクタ垂下などがあったが、構築物には直接影響が無く、点検終了後、運転再開に向けての対応を始めた。

3. 耐震対策

1) 東日本大震災発生以前の耐震対策

東京メトロの耐震対策は、1995(平成7)年8月に阪神・淡路大震災を受けて運輸省から出された緊急耐震対策に関する通達に基づき実施してきた。

  • (1)RCラーメン高架橋柱補強(角柱) → 2012(平成24)年度完了
  • (2)開削トンネル(RC中柱)補強 → 2002(平成14)年度完了
  • (3)橋梁、高架橋落橋防止工設置 → 2008(平成20)年度完了

写真2)RCラーメン高架橋柱補強写真2)RCラーメン高架橋柱補強

また独自の耐震対策として、1996(平成8)年度にはトンネル坑口部(地上から地下への入り口)の液状化対策を3箇所で行い、2003(平成15)年度に完了した。対策箇所は南千住(日比谷線)、深川車庫線(東西線)、南砂町(東西線)である。

地盤の液状化は東日本大震災で話題になった。東京メトロでも深川車庫線坑口部の液状化対策(地盤改良により強度を高める)を行っていたが、その周辺の技術区の建物や会社厚生施設のグラウンドは液状化の被害を受けた。液状化対策を行った所は、車両基地から本線へと入る箇所で、この対策を実施せずにいたら車両の出入りが不可能になり、東西線は長期にわたって相当な運行支障が出たと予想される。

2) 震災後の取組み

(1)さらなる補強

写真3)高架橋柱のさらなる補強写真3)高架橋柱のさらなる補強

東日本大震災で震度7に見舞われた仙台地区では、鉄道施設の崩落や倒壊は起きなかったが、一部で運行再開に支障をきたす損傷が発生したという事例があった。そのため東京メトロでは、補強不要と判断していた全ての高架橋柱(1,239本)の補強工事を実施(2015年度に完了予定)。それにかかる費用は約40億円。同時に高架下店舗の補償等にも同額の予算を計上しており、総額約80億円となる。また路線の石積み擁壁(丸ノ内線茗荷谷〜後楽園区間の地上部分)を補強(円弧すべりが発生して崩落する可能性もあり、アンカーを打設して対応)も2017年度に完了予定である。アンカーを打設する工事は民有地に入ることになり、その地上権設定の費用も必要となる。工事費として40億円強、また地上権設定の補償費として19億円の予算を予定している。

(2)情報提供

ソフト面での取組みに、通信環境整備(Wi-Fiの導入)がある。駅構内及びトンネル内の通信環境を整備し、列車がトンネル内で停止した際にも、乗客が車内から外部と通信可能な状況となっている。また、改札口ディスプレイで運行情報等のみならず、NHKとの契約で非常災害時緊急放送を放映し、駅構内一斉放送を活用することで、必要な情報を提供する仕組みが整備された。

(3)安全ポケットガイドの配布

緊急時の東京メトロの安全対策や災害発生時の対応、また乗客の行動に関して留意する点をイラスト付きで紹介し、2012年8月から全駅で配布開始、2013年度には冊子を更新し9万部を制作・配布している。

(4)帰宅困難者対策

図3)帰宅困難者用備蓄品図3)帰宅困難者用備蓄品

帰宅困難者は原則改札外のスペースに誘導することとし、受け入れ対応のマニュアルを策定。備蓄については、非常用飲料水・アルミ製簡易ブランケット・簡易マット・携帯用トイレ・簡易トイレ・救急用品などを、他社委託駅を除いた149の駅事務所に備蓄している。備蓄品の内容・数量については都営地下鉄と今後の動向をみながら検討を行っていく。

(5)新たな技術開発

3.11では、電源が切れなかったために最寄り駅まで走行できたが、万一東京電力からの電力供給が途絶え、列車が駅間に停止した時でも最寄り駅まで自力走行ができるよう、車両に搭載したバッテリーあるいは地上に設置したバッテリーによって走行可能な新たな技術開発を行い、走行実験を実施中である。

バッテリー搭載については、丸の内線と銀座線は自社完結路線で車両に搭載する方法がとれるが、相互直通運転をしている路線での他社保有車両では、規格が異なることや自力走行対策について各社の足並みがそろわないなどの問題があり、車上搭載と地上設置の両面からの実験を行っているが、これは現在始まったばかりの段階である。

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