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2024/02/01

『世界一長い鉄道トンネル スイス・アルプス山脈をほりすすむ』

『世界一長い鉄道トンネル スイス・アルプス山脈をほりすすむ』

(表紙画像は出版社ホームページより)

発行/株式会社Gakken
著者/笹沢教一
発行日/2023年8月
価格/本体1,650円(税込み)
ISBN/978-4052057090

スイス・アルプス山脈を南北に貫く鉄道トンネル「ゴッタルド・ベース・トンネル」(全長57.1km)。青函トンネル(全長53.9km)を上回る世界最長の鉄道トンネルとして2016年に開通し、今なお話題を集める。本書は、数億年前にまで遡った山脈の成り立ち、険しい岩壁に悩まされながらも交通手段を確保してきた先人の苦労の積み重ねに触れつつ、その発展の先にあった大気汚染の深刻化から、トラックによる貨物輸送を鉄道にシフトするべく、壮大な建設計画に挑んだ人々の熱意と決断を描く。
児童向けノンフィクションとあって、内容を伝える写真や図、コラムも豊富。何より分かりやすく飽きのこない筆致が大人にとっても心地良い。地質学の専門知識を持ち、ジュネーブで新聞社の支局長も務めた著者ならではの緻密な現地描写をちりばめ、開通までの山あり谷ありの道のりを駅(章)に見立てた構成は、「読む旅行」に出かけるようで楽しい。
旅の大詰めは「4駅目」。技術者チームの前に、計画ルート上を横切るドロマイト主体の地層「ピオラ帯」の難所が立ちはだかる。試掘による調査段階で細かい砂の混ざった砂糖水のような地下水が噴出したことから、掘削は不可能だと誰もがあきらめかけた中、トンネル上部に硬い岩石を見つけ、無事に完成にこぎつける。土被り2300mのトンネル掘削時に岩盤の温度が高温になるという過酷な環境も克服、17年にわたる難工事に挑んだ技術者らのたゆまぬ努力、緊張感ある描写が印象深い。
小・中・高校生はもちろんのこと、親子でも楽しめる一冊。みなさま、どうか何億年もの時空をかけぬける長旅に、〝乗り遅れ〟のありませんように。

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