「現場の失敗と対策」編集委員が現場や研究の中で感じた思いや、
技術者に関わる情報を綴っています。
2018/12/25
通常、道路橋の下部工と上部工は別々の業者に発注されることが多い。このため下部工の設計図面には、沓のアンカーボルトの箱抜きが描かれている。
道路橋支承便覧((社)日本道路協会,平成16年4月)に、箱抜きの標準形状が示され、アンカーボルトの箱抜きの径の大きさは「3dまたはd+100mm以上」と書かれている。これは、「3d」または「d+100mm」のどちらか大きい方以上の箱抜き径を確保するという意味である。直径が50mmを超える太径のアンカーボルトを用いる場合には、箱抜き径として3dを確保することになり、桁受け部の配筋が困難になる。
先日、道路橋の桁受け部のコンクリートの打込みを見学する機会があり、アンカーボルトの箱抜きに注目した。桁受けコンクリートの表面に布状に一枚の合板が設置され、その合板には円形の穴がくりぬかれ、その中にボイド管が整然とセットされていた (図1)。私の経験では、鉄筋・型枠を組み立てたあと、アンカーボルトの位置に印をつける作業行っていたことが思い出され、この方法はそれと比べると職員の手間が省けて良いと思った。
さらに、ボイド管の上部は桟木によって型枠と固定されていたが、ボイド管の下部はフリーな状況であった。可能ならばボイド管の下部は鉄筋等を井桁に組立て、固定すれば良いのだが、そのようにしない方策として、コンクリートの打込み方法で対処していた。具体的にはボイド管は下部で固定されていないため、コンクリートの流れに沿って傾く(図2)。そこで、ある程度コンクリートが上がってきた段階で、ボイド管の中に単管パイプを入れ、揺らしながら傾斜したボイドを垂直に修正していた。それでも直らないときは、ボイド管の周囲にバイブレータをかけながら単管パイプで修正していた。ただし、ボイド管が半分以上コンクリートで埋もれると、このやり方では戻らなくなることが多い。
推奨する方法を図3に示す。①全体に1層目のコンクリートを打込む。ボイド管の下端がコンクリートに10~20cm埋まった状況で打込み作業を一旦中断し、ボイド管の曲りを修正する。②ある程度コンクリートの硬化が始まった段階で、打込み作業を再開する。コンクリートがある程度硬化したことでボイド管の下端が固定されるので、ボイド管は動かない。ただし、打込みを再開するまでの時間によってはコールドジョイントが発生する恐れがあるので、現地の気候などに応じてコンクリートの硬化が始まる時間を把握しておく必要がある。
鉄道橋の場合は、道路橋と比較して鉄筋径は太く、鉄筋間隔も密である。このため、支承部のアンカーの箱抜きは道路橋より難渋する。また、工事区間内は下部工、上部工といった区別がなく一括で発注されていたため、手間のかかるアンカーの箱抜きをせず、直接アンカーをコンクリートに埋設する方法に挑戦したことがある。
支承の形に合板を加工し、アンカーボルトの位置に穴を開け、そこにアンカーボルトを溶接により取り付けた。後日、いざ沓をセットしてみると沓の穴にアンカーボルトがはまらない。大ハンマでボルトを何度もたたいて、やっとの思いではめ込んだ。また、所定よりボルトの高さが高いものがあり、1本のボルトに対し、1個のナットでは締められず、ナットを2個重ねてボルトを締めつけた40年前の苦い経験を思い出す。アンカーボルトはコンクリートに直接埋設するより箱抜きで対応するのがベターのようである。
土木遺産を訪ねて
2024/09/02
今回の歩いて学ぶ土木遺産は、JR鹿児島駅から鹿児島市電を楽しみながら、鹿児島市の海の玄関口・鹿児島港にある選奨土木遺産「鹿児島港旧石積防波堤」を目指す行程です。
今月の一冊
2024/09/02
4月から建設業にも適用が始まった罰則付き時間外労働の上限規制もあり、いよいよ〝超人手不足時代〟に突入した建設業。長時間労働などの課題をデジタルで解決する「建設DX...
現場の失敗と対策
コラム
働き方改革
2024/09/02
労働時間管理には3つの大きな役割があります。1つめは、法定の労働時間を遵守しているかを確認するため、2...
Copyright © 2013 一般財団法人 建設業技術者センター All rights reserved.