「現場の失敗と対策」編集委員が現場や研究の中で感じた思いや、
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2019/05/30
真空圧密工法は、今から約70年前にスウェーデンのKjellman(チェルマン)によって考案された地盤改良工法(図1)1)で、軟弱な粘性土地盤にバーチカルドレーンを打設し、地表面を気密シートなどで覆って密封した後、真空ポンプを用いて地盤内の間隙水圧を低下させて圧密沈下の促進を図る工法です。大気圧載荷工法と呼ばれたこともあり、その原理は、フトン圧縮袋の中で空気を吸い出されたフトンが、袋の外の大気圧によってギュッと縮んでいく様子に例えられることもあります。「水をたっぷり含んだフトン」から圧縮袋で水と空気を吸い出している状況をイメージしてみると分かりやすいかもしれません。
ただし、当初は高い真空圧の維持が難しい等の課題があり、長く休眠工法となっていました。しかし、1990年代にドレーン材や気密シート及び施工システムの改良によって、改めて真空圧密工法が実用化され普及が進みました2),3),4)。
現在、日本国内で用いられている真空圧密工法は、気密シートを用いる工法5)と気密シートを用いない工法6)の2種類に大別されていますが(図2)、軟弱地盤の改良工法として広く普及するまでには様々な工夫があったようです。今回のコラムではそれらを取り上げてみたいと思います。
まず、真空圧密工法の用途として着目されたのが、軟弱地盤上の盛土(図3)の急速施工です。バーチカルドレーンを通じて作用した真空圧によって地盤内が減圧されるため、地盤の外向きの変位が抑制され(図4)、盛土施工時のすべり破壊等に対する安定性が向上します。そのため、バーチカルドレーンのみでは数cm/日の緩速施工となるような盛土工事が、真空圧密工法を併用することで10~20cm/日程度の盛立てが達成されています(図5)。深層地盤改良工法等に比べれば、圧密促進工法であるために工期はやや長くなりますが、工費は安くて、固化材を使用しないために環境面でも優れている点が評価されています。
さらに注目すべき用途は、真空圧密工法による減容化です。調整池等の造成工事に適用すれば、地盤の圧密沈下によって掘削工及び掘削土の搬出が大きく低減でき、工費低減だけでなく環境面でもその優位性が発揮されます。
2008年の岩手・宮城内陸地震で被災した荒砥沢ダムの災害復旧事業の一環で造成された代替調整池の工事9)では、軟弱地盤の圧密沈下対策および調整池容量確保のために面積163,790m2の真空圧密工法が施工されました(写真1)。対象範囲を48ブロックに分けて、調整池の堤体盛土材を利用した載荷盛土併用の真空圧密工法(気密シート方式)を順次施工し、調整池底面の沈下量として平均1.18mの減容化を達成しています。
また、東京都の新海面処分場の延命化を目的に実施された減容化工事では、水面下でも施工可能な真空圧密ドレーン工法6)(図2(b)の粘性土密封方式)が大きな効果を発揮しました。写真2に示すCブロックにおいて延べ383,000m2の真空圧密を実施し、圧密沈下によって得られた容積は2,167,000m3(2015年4月時点での平均沈下量は5.13m)に達したと報告されています10)。
以上、真空圧密工法の用途を拡大したトピックス的な事例を紹介しました。次回は真空圧密の地盤改良効果を高めるためのアイデアや、施工上のトラブルを回避するために行われてきた工夫等を紹介します。
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