コラム:編集委員の独り言…

「現場の失敗と対策」編集委員が現場や研究の中で感じた思いや、
技術者に関わる情報を綴っています。

2021/05/27

豪雨による土構造物被害 
―令和元年の台風19号から学んだ防災・減災の教訓―

1 はじめに

令和元年の台風19号では、台風の接近・通過に伴い、福島県内は10月12日夕方から13日未明にかけて非常に激しい雨となり、最大1時間降水量も40mmを超える激しい雨が降りました。降り始めからの総雨量は、県内の広い範囲で200mmを超え、なかには400mmに達する地域もあり、10月の降水量の平年値(約120mm/月)の2~3倍となりました。この大雨で、人的被害、河川堤防の決壊による浸水被害、土砂災害、道路の寸断による交通障害が発生しました。

県内の土木施設被害1)箇所の総数は2794箇所と、県内の台風・豪雨の災害では過去最大となり、現在も復旧の途上にあり、今後の梅雨や台風シーズンに向けて急ピッチで工事が進んでいます。筆者は、県内の中通り地区にある二本松市より災害査定の際に用いた調査資料(調査箇所数69地点)を提供いただき、現地調査を行って被害の素因・誘因を分析しました2)。ここでは被害の共通点、特徴的な被害例を紹介し、今後の類似の災害に備えるためのヒントを示します。

2 被害の概要と特徴

被災形態と箇所数の関係を図-1に示します。路肩崩壊が最も多く、護岸、法面、橋梁の崩壊や洗堀による被害も見られました。代表的な被災例として、路肩、護岸、流水による道路舗装の被害例を写真-1~3に示します。路肩崩壊(写真-1)では、隣接する斜面や道路から集まった雨水が路肩から法面に流下して崩壊に至っています。河川護岸の背面の土砂が侵食を受けて洗堀されることでコンクリート護岸のみが残った状況(写真-2)がよく見られました。この地域では、花崗岩が広く分布し、それらが風化したまさ土が土工材料として広く用いられています。まさ土は雨水や流水により侵食・洗堀を受けやすいため、被害が拡大したものと考えられます。増水した河川に隣接する道路では、流水の威力によってアスファルト舗装がはがれて路盤まで削られた場所もありました(写真-3)。なお、道路の左側法面上部の木の枝にゴミが絡まっていることから、道路自体は水没し、水深が2~3mあったことがわかります。このような舗装被害は水没して流水の影響があった道路の中でも一部の限られた区間で発生しました。これらの区間では、凍害あるいは舗装の老朽化等によってできた舗装表面のひび割れが起点となって、水がしみ込んで舗装が弱くなったことに加え、流水によって舗装の剥がれが進展し、路盤まで洗堀されたものと推察されます。

図-1 被災形態と被災箇所数の関係

図-1 被災形態と被災箇所数の関係

写真-1 道路の路肩崩壊例(延長約8mが崩壊)

写真-1 道路の路肩崩壊例(延長約8mが崩壊)

写真-2 護岸背後の洗堀崩壊例(図-1の護岸崩壊に分類)

写真-2 護岸背後の洗堀崩壊例(図-1の護岸崩壊に分類)

写真-3 流水による道路舗装の被害例<br>(図-1の洗堀崩壊に分類)

写真-3 流水による道路舗装の被害例
(図-1の洗堀崩壊に分類)

3 集水地形で発生した被害の原因と教訓

このように舗装が剥がれる被害は、河川近傍だけでなく、山間部の集水地形を通る道路にも見られました(図-2)。複数の枝状の谷が存在し、そこから流下した水が集まる箇所に排水用の管渠が設置されていましたが、排水能力を超えたために、あふれた水が道路上を川のように流れ下ったことで、傷んだ舗装面から破壊が進行したものと思われます。

図-2 集水地形にある道路舗装の被害例

図-2 集水地形にある道路舗装の被害例

路肩崩壊の被害は多数みられましたが、比較的小規模な被害が多い印象でした。一方で、写真-4に示すように高盛土が崩壊するといった規模の大きい被害も見られました。この事例について詳しく説明します。被害前の状況を写真-5に示します。道路の左側が盛土、右側は道路面よりも若干低いレベルバンクと呼ばれるフラットな地形になっています。この場所の道路建設前後の地形の変化を示す空中写真を写真-6に示します。道路は沢を横断するように建設されており、典型的な集水地形にあたります。被害前の空中写真を拡大したものが写真-7になります。道路右側のレベルバンクは周辺の斜面から水が集まりやすいことから、その周囲を取り囲むように排水溝が配置されていたことが見て取れます。さらに盛土法面には縦排水が確認できます。なお、この場所では、盛土部が最も低い位置にあり、道路からの流水が集中するため、排水に関して厳しい条件であるといえます。盛土の被害推定断面図を図-3に示します。高盛土は4段で高さ約20mです。レベルバンクに集まった水は排水溝から盛土内の暗渠を通じて法面の縦排水に導かれています。しかし、排水能力を上回る降雨であったため、排水が間に合わず、レベルバンクに水が溜まり、その水が盛土内に浸透して徐々に飽和し、土の重量が増加するとともに、強度が低下し、不安定化してすべり破壊に至ったものと考えられます。加えて、道路をオーバーフローした水が法面を流下して盛土が侵食された可能性もあり、被害が大きくなった要因と考えられます。

これまで見てきたように、被害は集水地形で発生しやすいこと、排水設備の能力を超えた場合に起きやすいことがわかりました。一方で、被害の軽減、未然防止のためには、排水設備の点検・清掃、舗装路面の維持管理を日頃から適切に行うことが重要であることもわかりました。加えて、まとまった雨が降った直後に積極的に点検を実施することで、流水とその排水状況についても確認しておくと良いでしょう。

写真-4 高盛土の崩壊例

写真-4 高盛土の崩壊例

写真-5 被害前の盛土の状況(2013年4月撮影、Google Earth Proより引用)

写真-5 被害前の盛土の状況(2013年4月撮影、Google Earth Proより引用)

写真-6 盛土建設前後の地形の変化

写真-6 盛土建設前後の地形の変化

写真-7 被害前の盛土の状況<br>(2013年4月撮影、Google Earth Proより引用)

写真-7 被害前の盛土の状況
(2013年4月撮影、Google Earth Proより引用)

図-3 盛土の被害推定断面図

図-3 盛土の被害推定断面図

謝辞)二本松市土木部より災害データを提供いただきました。記して謝意を示します。

参考文献
  • 1)福島県土木部:台風第19号等による土木施設の被害状況及び対応状況,福島県災害対策本部会議(第41回),令和2年3月12日現在
  • 2)小野崎雄太,吉田諒佑,仙頭紀明:令和元年の台風19号で被災した福島県二本松市の斜面崩壊の要因分析,土木学会東北支部技術研究発表会(令和2年度),Ⅲ-34,CD-ROM, 2021
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