「現場の失敗と対策」編集委員が現場や研究の中で感じた思いや、
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2017/02/27
建設関連業務に関わって40年近くになる。入社したての頃、すでにオールケーシング工法による鉄筋コンクリート場所打ち杭の施工が一般的に実施されていたが、鉄道高架橋の基礎杭の施工中にいきなり鉄筋の共上がりを起こして、まだ固まっていないコンクリートを鉄筋とともに再掘削したことが鮮やかに記憶に残っている。
最近では性能規定による設計が広く行われるようになり、杭工法も様々なものが採用され、杭の支持力も施工法や管理方法によって設計性能を満足するように決定されており、より合理的になってきている。逆にいうと、設計者や施工者の役割がより重要になってきているともいえる。
今まで示方書や設計施工便覧、ならびにマニュアル等にならって杭の設計や施工を行ってきたが、わが国の杭工法が歴史的にみてどのように変遷してきたか振り返ってみるのも面白いと考え、少し調べてみたところ、以下のような流れのようである※1。 1.明治以前---掘削→玉石突き込み・砂利隙間充填→礎石据付け→柱建方(杭基礎なし) 2.明治時代---木杭(摩擦杭としての利用) 3.大正~戦後復興---ペデスタル杭、既製コンクリート杭(三角杭・普通RC杭)、深礎 4.昭和後期~平成---各種場所打ち杭(オールケーシング、アースドリル、リバース) 鋼管杭、既製プレストレストコンクリート杭(PC・PHC・SC) また、最近では上記4.の工法に加えて、場所打ち鋼管コンクリート杭、鋼管ソイルセメント杭、回転(鋼管)杭なども広く使われるようになっている。
それでは最新の我が国の建築物の基礎は、どのようなものなのか。頭に浮かんだのは、①あべのハルカスと②東京スカイツリーⓇである。両者は、詳細な構造は異なっているが、いずれも各種基礎を組み合わせて、最も合理的な基礎構造を設定されているようである。
①あべのハルカス※2 パイルド・ラフト(場所打ち杭と直接基礎の複合;図1) ・場所打ち拡底鋼管コンクリート杭と直接基礎を組み合わせて、建物に働く大きな力を地盤に伝達している。 ・基礎の支持能力:直接基礎(約12万ton)+杭基礎(約32万ton)=パイルド・ラフト基礎(約44万ton)
②東京スカイツリー※3 ナックル・ウォール(地中連続壁と場所打ち拡底杭類似のナックル(突起)の複合;図2) ・地中連続壁にナックル(突起)を付けた壁状の杭で、上下の大きな力に対応している。 ・スカイツリーの塔体3本の足元にある「ナックル・ウォール」の間を、水平方向の力に耐える巨大な壁(地中連続壁杭)がつないでいる。 ・足元全体が3本足と3枚の壁による巨大な三角形で構成され、地震や風による揺れ に耐える特別な基礎杭となっている。
余談ではあるが、いろいろ調べている過程で、日本の城閣建築の基礎の中で「松本城」の基礎(図3)※4を見た。素人目ではあるが、あべのハルカスで採用されている「パイルド・ラフト」に似ていると感じ、少し驚いた次第である。また、昨年末にあべのハルカス60階の展望台に昇る機会があった。展望台からみた風景のなかで、昨年のNHK大河ドラマ「真田丸」で話題となった「大阪城」がビルの間に随分小さく見えたのが印象的であった(図4)。
1)杉村義広:日本における杭基礎の起源と変遷,土と基礎,Vol.54,pp.1~4,2006
2)株式会社竹中工務店ホームページ内:http://www.abeno.project-takenaka.com/saigai/sai-01.php
3)株式会社大林組ホームページ内:http://www.obayashi.co.jp/news/skytreedetail22
4)松本城ホームページ内:http://www.matsumoto-castle.jp/about/tower
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