土工事、コンクリート工事、基礎工事の事例
土工事
2)盛土・軟弱地盤
2019/05/30
軟弱地盤に道路盛土を建設する際に発生したトラブル事例である。軟弱地盤は、層厚が約10mの高含水比の粘性土層からなり、道路盛土(計画盛土高約7m)の建設に伴い、圧密沈下および盛土のすべり破壊が想定された。そこで、盛土の法面下には深層混合処理工法(接円配置で3~5列配置)を、盛土天端直下にはバーチカルドレーン工法(正方形配置1.0mピッチ)を組合せた対策工が実施された(図-1)。設計では、コスト低減をねらって、盛土の沈下に関して、ドレーンによる圧密促進で供用後の残留沈下量を許容値以内に抑え、盛土の安定に対しては、図中の円弧すべり面を想定して、深層混合処理改良部のせん断抵抗増加に加え、ドレーンによる圧密促進に伴う粘性土地盤の強度増加も期待した。
地盤改良工事を施工後、計画盛土高付近まで盛土を立ち上げた直後に、盛土脇の水路に変状が発生し(写真-1)、盛土法肩付近にもクラックが生じた(図-2)。
圧密促進による粘性土地盤の強度増加を確認するため、バーチカルドレーン工法の部分でボーリング調査を実施して、一軸圧縮強さを測定したところ、設計時に見込んでいた強度増加は得られておらず、ドレーンによる圧密促進効果が不十分であったことがわかった。
これは、図-2に示すように深層混合処理改良部とドレーン改良部の沈下量の差が大きくなり、サンドマットが沈下して排水経路として機能しなくなったためである。その結果、粘性土から排水された水がサンドマット内に停滞し、被圧状態となり圧密が進まなくなったことで、所定の強度が発揮されなかったものと考えられた。
対策案として、①盛土天端からボーリング孔を介してサンドマット内の水を強制排水する方法、②盛土を一部撤去してドレーン改良範囲を深層混合処理工法で改良する方法が考えられたが、対策効果の確実性を踏まえて②案の方法が採用された。
固化改良と排水工法を組み合わせて対策を行う場合、不同沈下を想定しておく必要がある。圧密沈下量が大きくサンドマットの排水阻害が考えられる場合には、バーチカルドレーン施工後に盛土中央のサンドマット部に釜場排水工を設けることで、盛土天端からサンドマットに溜まった水を直接排水する必要がある。場合によっては、釜場排水工への排水を促進させるためにサンドマット内に有孔管(φ100mm程度)を補助的に設置しておくことも考えられる。
一方で、設計図面(図-1)の通りに施工すると今回のようなトラブルが発生する恐れがあるため、施工者側の提案により上記のような補助工法が実施されている事例も多い。このように、設計者が計画すべきか、施工者が現場で配慮して実施すべきか明確な取り決めが無いのが実情である。そのため、事業主、設計者および施工者が、工事着手前に打合せの機会(工事施工三者協議)を設け、コミュニケーションをとりながら、予想される課題を確認・共有し、不明点があれば事前に解決しておくことがトラブルの回避には重要である。
編集委員会では、現場で起こりうる失敗をわかりやすく体系的に理解できるよう事例の形で解説しています。みなさんの経験やご意見をお聞かせください。
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