土工事、コンクリート工事、基礎工事の事例
基礎工事
3)既製杭
2020/10/29
建物基礎として、プレボーリング根固め杭工法(セメントミルク工法)により高強度プレストレストコンクリート節杭を施工した。杭の仕様は、節部径φ600mm、軸部径φ450mm、杭長L=19m(下杭10m+上杭9m)である(図-1)。
施工地盤は、GL-3.0mまで盛土層、その下にシルト層(層厚4.0m)、細砂層(層厚2.4m)、浮石混じり微細砂層(層厚2.3m)、中砂層(層厚3.5m)、シルト質粘土層(層厚4.0m)を経て支持層は細砂層(N値≧50)であった(図-1)。
試験杭の施工において、φ700mmのスクリューオーガで、掘削液(ベントナイト+セメント+水)を注入しながら所定の深度(GL-20.5m)まで削孔した後、根固め液、杭周固定液を注入しながらオーガを回転させつつ引き上げて掘削孔を形成した。次に下杭(先端閉塞タイプ)を掘削孔内に挿入し、上杭を溶接した後ゆっくりと孔内に挿入した(図-2)。上杭下端をGL付近まで挿入した時点(杭下端:GL-10m)で杭の自重による沈設が止まってしまったので、杭の上端をモンケンで軽くたたいてみたが、杭が下がらず高止まりした状態となった。このため、クレーンで杭を引き上げて原因を調査し、対策を講じることとなった。
杭下端がGL-10m付近で杭の自重による沈設ができなくなったことから、掘削孔にスクリューオーガを挿入して状況確認を行った。その結果、杭の沈設不能となった深度付近でスクリューオーガの自重による挿入ができなくなった。このため、オーガを回転して挿入可能かどうか確認したところ、掘削深度(GL-20.5m)付近まで挿入することができた。スクリューオーガを自重のみで挿入できなくなった深度の土質は、浮石混じり微細砂層で、この土層が沈設不能となった原因ではないかと考えられた。この土質性状をよく調べたところ、N値が5以下と緩く、浮石(軽石)の比重は1.05程度であることが分かった。
以上から、GL-9.4m以深の浮石混じり微細砂層(層厚2.3m)を掘削すると、浮石の比重が掘削液の比重に近いため、GL-10m付近に(浮上も沈降もせず)滞留し、杭の自重による沈設時に杭先端部および先端付近の節部に浮石が集まり、その抵抗により杭の沈設が不能になったものと推定された(図-3)。
杭を所定の深度まで沈設するための対処方法としては、
①先端閉塞型の杭を先端開放型とし、杭頭部に杭回転用の金具を装着し、杭を回転しながら沈設する。杭の先端部にも回転により沈設が容易となるよう金具を付ける(図-4)。
②浮石混じり微細砂層では浮石のまとまった滞留を防止するため、この層の掘削撹拌時にスクリューオーガのターニング(繰り返し撹拌)を行うなど、掘削撹拌を念入りに実施する。
これらの対策のほかに、掘削液の比重を小さくすることで浮石を沈降させて滞留を防止することも考えられたが、孔壁の安定性が低下するなど確実性が劣ると判断し、採用は見合わせた。
上記①②の対策を行うことで、杭を所定の深度まで無事に沈設することができた。
本事例のような浮石が混じった地層が介在する地盤においてプレボーリング工法により埋込み杭を施工する場合、掘削孔内に浮石が滞留して杭の沈設ができなくなることがある。
本工事が実施された時点では、(先端閉塞型の杭を用いる)セメントミルク工法により節杭を施工することがあり、先端閉塞型の杭は、内部が空洞のままで浮力の影響を受けやすいこともあって、本事例のようなトラブルがみられた。現在では、先端閉塞型の節杭が使用されることが無くなっているようである。しかし、火山灰起源の堆積層が広く分布する地域を中心に浮石層が介在する地盤において、浮石の滞留による杭の沈設不能は十分考えられるため、事前に対策を検討してトラブルを防止することが重要である。
1) COPITA型プレボーリング杭工法の施工ガイドライン(土木) 平成28年3月 一般社団法人コンクリートパイル建設技術協会
編集委員会では、現場で起こりうる失敗をわかりやすく体系的に理解できるよう事例の形で解説しています。みなさんの経験やご意見をお聞かせください。
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