土工事、コンクリート工事、基礎工事の事例
土工事
4)土留・その他
2021/08/30
大型土のうが崩れたのは、仮設ヤードの表層が舗装されていない状態で、仮設土留めの背面盛土の中に多量の雨水が浸透し、仮設土留めに作用する水圧が増大したためと考えられた(図5)。大型土のうの中詰め材には、道路改良工事で発生した土を使用したが、粘性土が比較的多く含まれていために排水性が良くなかったようである。
対策としては図6に示すように、水抜きの排水管を設置してから大型土のうを積み直すとともに、仮設土留めの施工中は天候に留意して雨天時には仮設ヤード表面をブルーシートで覆って雨水等が地中に浸入しないようにした。そして、仮設土留めの設置完了後には、仮設ヤード表層に厚さ3cm程度の簡易なアスファルト舗装を施工した。
最近は豪雨による地盤災害も頻発しており、供用期間の短い仮設土留めであっても、排水管等による水抜き対策を行うべきである。特に集水地形を呈する谷型の斜面では注意が必要である。なお、大型土のうの中詰め材としては現地発生土を用いることが多いが、中詰め材に使用する土の物性等は事前に確認すべきである。
「耐候性大型土のう積層工法」設計・施工マニュアル2)には、安定照査の他に排水設備の設置例等も記載されているので参考にするとよい。
また、道路盛土の災害復旧工事の新技術として、図7に示すような大型土のうを用いた盛土の適用性が検討されているが、排水基盤層や土のうの中詰め材に砕石を用いることで排水機能が効果的に作用して、降雨時にも復旧盛土内には水位が観測されなかったことが実証されている3)。今回の事例でも、土のうの中詰め材に砕石などの排水性の良い材料を使用していれば、排水機能が確保されて今回のようなトラブルは発生しなかったと考えられる。
【文責:「現場の失敗と対策」編集委員会】
1) 耐候性大型土のう協会:適用範囲、http://donou.org/strong.html(2021年8月1日閲覧)
2) (一財)土木研究センター:「耐候性大型土のう積層工法」設計・施工マニュアル,2017.10
3) 森芳徳ほか:大規模土砂災害に対応した新しい災害復旧技術に関する研究,土木学会論文集,Vol.72,Ⅰ‐77~87,2016
編集委員会では、現場で起こりうる失敗をわかりやすく体系的に理解できるよう事例の形で解説しています。みなさんの経験やご意見をお聞かせください。
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