土工事、コンクリート工事、基礎工事の事例
基礎工事
2)その他の場所打杭
2022/08/01
BH(大口径ボーリングマシン)工法による先端根固め方式の支持杭を橋脚として、工事用仮桟橋を設置した。杭の仕様は、削孔径φ500mm、杭長12.8m(H-300×300)、掘削長11.0ⅿ、先端部モルタル根固めで、全本数は20本であった。施工地盤は、GL-2.2mまではN値5~12の埋土層、GL-6.7mまではN値3~4の関東ローム層、GL-9.9mまではN値15~20の細砂層、それ以深はN≧50の支持層(砂礫層)となっていた。地下水位はGL-3.5mであった(図-1)。
仮桟橋の架設が完了して、仮桟橋上に工事用のバックホウ(山積0.8m3、重量22t程度)を載せて作業を行ったところ、仮桟橋の変形(一部沈下)が確認された。変形の原因は、桟橋杭のうちの2本の杭で、支持力不足によると思われる沈下が発生したことによるものであった(図-2)。
桟橋杭の沈下の発生原因について検討した結果、以下のように杭施工時のスライム処理が不十分であったことによるものと考えられた。
・掘削対象土層は、関東ローム層や細砂層が主体で、スライムが多く発生しやすい地層であった。
・杭のスライム処理は、エアリフトにより施工する計画であったが、杭の専業施工会社が根固めモルタルの打設によりスライムが上部に持ち上げられるため問題ないと安易に判断し、適切なエアリフトの時間を取らないなど、十分な処理を行わなかった可能性が高い。
仮桟橋の補修にあたっては、変形した箇所の上部工部材を一時撤去して、沈下が発生した杭を、周辺の杭および桟橋部材を反力として油圧ジャッキにより圧入し、耐荷力を確認した。
杭が圧入後に設計支持力(38t)以上の十分な支持力が得られることを確認したのち、H杭の上部に杭材を溶接により継ぎ足して仮桟橋を復旧した。
他の杭については、復旧時点で沈下が発生していないことを確認し、以降は沈下を計測管理することとした。その結果、工事完了までに新たな変状は確認されなかった。
BH工法等の場所打ち杭工法において所定の支持力を確保するうえで、モルタルやコンクリート打設前のスライム処理は極めて重要で、仮設の杭であっても、スライム処理を確実に行うようにする。掘削対象土に細砂層等のスライムが発生しやすい土質が多く含まれる場合は特に注意する必要がある。
今回は仮設の支持杭で施工会社の責任の範囲でもあったため、圧入による簡易な方法により支持力を確認して復旧を行った。本設構造物の支持杭の場合は、根固め部のスライムの確実な除去や新たな根固めの方法等、設計者や発注者との協議をふまえて決定し、別途支持力を確認するなどの対策が必要になり、工程が遅延しコストが増大するものと想定されるので、十分留意する必要がある。
1) 一般社団法人 日本建設業連合会 地盤基礎専門部会
場所打ちコンクリート杭の品質管理の現状と課題WG:
場所打ちコンクリート杭の品質管理のポイント, 平成29年6月
編集委員会では、現場で起こりうる失敗をわかりやすく体系的に理解できるよう事例の形で解説しています。みなさんの経験やご意見をお聞かせください。
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