土木遺産を訪ねて 最寄り駅から歩いて行ける土木学会選奨土木遺産を紹介。周辺の見どころ等、旅の参考にしてください。

木学会が平成12年に設立した認定制度──『土木学会選奨土木遺産』。顕彰を通じて歴史的土木構造物の保存に資することを目的に、500件を超える構造物が認定されています。
コンコムでは、たくさんの土木遺産の中から、最寄り駅から歩いて行ける土木遺産をピックアップし、「土木遺産を訪ねて─歩いて学ぶ歴史的構造物─」を不定期連載します。駅から歴史的土木構造物までの道程、周辺の見どころ等、参考になれば幸いです。
みなさんも旅のついでに少しだけ足を延ばして、日本の土木技術の歴史にふれてみてはいかがでしょうか。

File 02

【大井川橋/静岡県島田市・金谷町】

大井川橋銘板
認定年平成15年度(2003年度)
所在地静岡県島田市・金谷町
全長1026.4m
構造形式17径間下路式プラットトラス橋
完成年昭和3年(1928年)
大井川橋
  • Start

    今回の出発地点は東海道本線の『金谷』駅。静岡駅から約30分で到着します。『金谷』駅からSL列車で有名な大井川鐡道に乗り換えて『新金谷』駅まで電車で移動する手段もありますが、大井川鐡道は本数が少ない(時間帯によっては2時間待ち)ため、『新金谷』駅まで「東海道金谷宿」跡をゆっくりと散策しながら歩くのがオススメ。1kmちょっとで到着します。

  • Point 1

    旧東海道を道なりに15分ほど歩くと、前方に大井川鐡道の踏切が見えてきます。『新金谷』駅は、踏切の手前右側に見えます。大井川鐡道は、全国の私鉄を引退したレトロな車両が運行しており、何よりSLが走る鉄道としても有名です。SLに乗車したい場合は運行日(基本的に土日月)に注意してください。夏休みは満席となることも珍しくないので、あらかじめご確認を。

  • Point 2

    『新金谷』駅を後に、大井川に向かう道は、その昔、「金谷宿川越し場」として栄えた街道。今も宿や札場を示す案内札が住居の軒先に下げられています。大井川の土手に出る手前には、明治3年の大井川川越制度廃止により失業の危機に陥った川越人足を救い、後に牧之原の大茶園の基礎を築いた仲田源蔵の銅像があります。

  • Goal

    大井川の土手に登ると左手にブルーのトラス橋が見えます。今回のゴール地点『大井川橋』です。

Album

  • 大井川橋銘板(島田側)

    大井川橋銘板(島田側)

  • 大井川鐡道金谷駅

    大井川鐡道金谷駅

  • 大井川鐡道金谷駅時刻表

    大井川鐡道金谷駅時刻表

  • 大井川鐡道新金谷駅

    大井川鐡道新金谷駅

  • 大井川鐡道を走るレトロ車両

    大井川鐡道を走るレトロ車両

  • 金谷宿川越し場跡の案内板

    金谷宿川越し場跡の案内板

  • 当時の川越の様子

    当時の川越の様子

Topics

ブルーに彩られた17連のトラス橋は、遠目からでもその美しい姿を眺めることができます。しかし、近づいてみると90年前に建設されたとは思えないほどその鮮やかさは際立っていました。静岡県島田土木事務所によると、塗装の劣化が軽微なうちに全面塗替することにより、橋が錆びるのを防ぎ、120年まで寿命を延ばそうとしているとのことです。江戸時代「越すに越されぬ大井川」を越えて東海道を旅する旅人たちは、川越人足を雇って行き来していました。金谷側にも島田側にも人足の集合場所ともいえる番屋跡が残っていることからも、当時の川越人足たちの賑わいの様子がわかります。番屋の説明板によると、肉体労働であった川越人足は、引退後、札場での換金業務や渡しを利用するお客さんの受付などの「内勤」業務に就いたそうです。今なら功労OBの再雇用といったところでしょうか。

Map

出典:地理院地図

【探訪後記(番外編)】

今回の土木遺産探訪は、一応『大井川橋』でゴール。しかし、せっかく歩いて大井川を渡ったのですから、もう一か所、訪ねてみました。大井川橋から下流へ約3.5km下ったところに架かる木製橋『蓬莱橋』です。蓬莱橋は土木学会の選奨土木遺産ではないものの、平成9年(1997年)に「世界一長い木造歩道橋」としてギネスに認定されています。

  • Point 1

    大井川橋を金谷方面から島田方面へ渡り、下流へ向かって500mほど歩くと、左手に「島田市博物館」が見えてきます。博物館の脇には、「島田宿大井川川越遺跡」が再現され、「川越し」の料金所(川会所)や、人足の待合所(番宿)などの風景を見ることができます。この遺跡は昭和41年(1966年)に国指定史跡に指定されています。

  • Goal

    土手を歩くこと約30分。前方に木製の橋が見えてきます。もうひとつの目的地『蓬莱橋』です。蓬莱橋は明治12年(1879年)に完成。大井川増水のたびに被害を受け、昭和40年(1965年)にコンクリートの橋脚に変更し、今の姿になりました。入場料は大人100円・小学生10円。ちなみに蓬莱橋は、その長さが『897.4m』ということから『ヤ・ク・ナ・シ=厄無し』につながるパワースポットとしても有名だそうです。

【今回歩いた距離:約6.5km(蓬莱橋含む)】

土木学会選奨土木遺産紹介ページ
土木学会誌/土木紀行(寺本 潔)/大井川橋
静岡県島田市観光協会

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