土木学会が平成12年に設立した認定制度──『土木学会選奨土木遺産』。顕彰を通じて歴史的土木構造物の保存に資することを目的に、500件を超える構造物が認定されています。
コンコムでは、たくさんの土木遺産の中から、最寄り駅から歩いて行ける土木遺産をピックアップし、「土木遺産を訪ねて─歩いて学ぶ歴史的構造物─」を不定期連載します。駅から歴史的土木構造物までの道程、周辺の見どころ等、参考になれば幸いです。
みなさんも旅のついでに少しだけ足を延ばして、日本の土木技術の歴史にふれてみてはいかがでしょうか。
認定年 | 平成23年度(2011年度) |
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所在地 | 愛知県名古屋市千種区 |
竣工 | 旧第一ポンプ所/大正3年(1914年) 東山給水塔/昭和5年(1930年) |
今回の歩いて学ぶ土木遺産は愛知県名古屋市にある「名古屋市旧第一ポンプ所と東山給水塔」です。出発地点は名古屋市営地下鉄東山線「覚王山」駅。名古屋でも有数の高級住宅地として知られる街です。覚王山の「覚王」とは仏陀の尊称で、日本で唯一お釈迦さまの遺骨が眠るお寺「覚王山日泰寺」の山号からきています。
まずは日泰寺の参道である覚王山通りを北に進みます。覚王山通りは旅館や畳店など昔ながらの佇まいのお店と、お洒落なショップが混在する商店街となっており、ついつい寄り道をしたくなってしまいます。
覚王山通りを500m程歩くと「日泰寺」に着きます。「日泰寺」はいずれの宗派にも属さない日本の全仏教徒のための寺院で、運営は各宗派の管長が3年交代で住職をつとめるという珍しいお寺です。1904年(明治37年)にタイ国(当時のシャム国)より寄贈されたお釈迦さまの遺骨を奉安するために建立されました。本堂や五重塔などは比較的最近建てられたものですが、文化財に指定された大書院や茶室などの建築物も楽しめます。
日泰寺の正門を出て東側へ進むと「揚輝荘」の入口が現れます。「揚輝荘」は松坂屋の初代社長である伊藤祐民により建設された別荘で、聴松閣など大正から昭和初期にかけて建築された建物が現存しており、庭園も楽しむことができます
日泰寺、揚輝荘を散策したのち、東側の県道関田名古屋線に入り、北へ向かって歩くと、左手に1つ目の土木遺産『東山給水塔』が見えてきます。『東山給水塔』は、昭和5年(1930年)に覚王山地区一帯の高台への配水を目的として建てられ、建設当時は「東山配水塔」と呼ばれていました。老朽化のため、昭和48年(1973年)にその役目を終えましたが、昭和54年(1979年)より災害対策用に『東山給水塔』として活用されることになりました。塔最上部のタンクには約300m3の飲料水が貯水され、万が一に備えています。残念ながら普段は公開されておらず、毎年春分の日と8月の一般公開日のみ見学が可能です。巨大な塔は遠目から見ても圧巻ですので、機会があればぜひ見学をしてみてください。
水の歴史資料館を出ると、県道関田名古屋線に沿うようにして北へ延びる天満緑道があります。天満緑道は、名古屋三大天神の一つ上野天満宮へ通じる緑道ですが、名古屋市で最初につくられた浄水場である「鍋屋上野浄水場」まで続く水のプロムナードとしても整備されています。途中に展示されている古いY字管などを見学しながら緑道をのんびり10分ほど歩き、公園として整備されている「水の小径」を抜けた歩道橋を渡ると「鍋屋上野浄水場」に着きます。写真手前の建物が2つ目の土木遺産『旧第一ポンプ所』です。大正3年(1914年)に完成した『旧第一ポンプ所』は、平成4年(1992年)まで、浄水場で作られた水道水を東山配水場へ送ってきました。レンガ造り・天然スレート葺き切妻屋根の建物で、平成26年(2014年)に建設当時のように復元され、耐震補強工事も行われました。(名古屋市上下水道局ホームページより)。
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