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表彰工事

2020/02/27

コミュニケーションを密にし、先のことを考え抜いた工程管理で災害復旧工事を完成。

回の現場探訪は、令和元年度国土交通省四国地方整備局の局長表彰を受けた「平成30年度 成願寺箇所災害復旧工事」。この工事を受注された横田建設株式会社(本社 香川県丸亀市)にて、当工事の監理技術者・岡本慶さんと、社長の横田昌宏さんに工事の概要と施工時の苦労や工夫についてお話しを聞きました。

【工事概要】
工事名 平成30年度 成願寺箇所災害復旧工事
工事概要 護岸工、根固工 等
発注者 国土交通省四国地方整備局 香川河川国道事務所
工期 平成30年7月7日~平成31年3月20日
受注者 横田建設株式会社
施工場所 香川県丸亀市綾歌町成願寺地先
請負金額 114,696,000円(税込)
監理技術者・現場代理人 岡本 慶

Q 今回の工事の概要と目的について簡単にご説明ください。

平成29年9月の台風19号において被災した香川県唯一の国管理河川「土器川」の護岸復旧工事です。140mにわたり洗堀された低水護岸を応急復旧した後に、本工事として根固めブロック製作・据付および平ブロック張等を実施しました。

写真1)成願寺箇所の被災状況 写真1)成願寺箇所の被災状況

Q 今回の工事で特に重視したこと、また大変だったことは何でしょうか?

災害復旧ですので1日でも早く完成するように、工程管理をしっかりと行いました。工期は7月から3月まででしたが、土器川は6月初めから10月末まで出水期となっていることに加え、地域特性により低水部の施工時期に制限があります。低水部の施工期間は実質、1月末までの3か月しかないことから、護岸工事を実施する班と、4tの根固めブロックを製作する班とを編成して同時進行で進めました。施工場所の近くに施工ヤードを作ることができたので、運搬にかかる時間や、護岸工事実施箇所とブロック製作箇所の両方の現場を監理する自分の移動時間を短縮することができたのは助かりました。根固めブロックを760個製作することが必要だったこともあり、あれ以上の工程管理はできなかった、今考えればよくできたな、と正直思います。

写真2)根固めブロック製作 写真2)根固めブロック製作

Q 工期中、想定外のトラブルは発生しましたか?またその際の対応についてお教えください。

応急復旧工事が終わった後、平成30年台風24号により施工場所の上流部にある低水護岸が60m程洗堀されたため、急遽、追加工事として指示され、その箇所の応急復旧を4日間で完了させました。この被害箇所は根固めブロック製作ヤードからの運搬用道路として利用しており、ちょうど根固めブロックの製作を始める直前での被災だったため、なるべく工程を遅らせないようにスピード感を持って対応しました。
概算発注で契約後は詳細設計待ちだったのですが、発注者にブロックの規格などを確認したうえで、詳細設計引渡し前にブロック製作に必要な発注を行えたことも厳しい工程を守ることができた要因の一つです。

  • 写真3)上流部の被災状況 写真3)上流部の被災状況
  • 写真4)応急復旧 写真4)応急復旧

Q 今回の工事で岡本さんが学んだことはありますか?

書類関係ですね。国土交通省の現場は5年ぶりくらいだったので、自分では当たり前だと思っていた書類では不備が多く、細かくチェックして指摘していただけたので、知識が増え、書類作成のスピード・精度が上がりました。鍛えていただけたのかなと思っています。

Q 今回の工事で工夫したことがあればお聞かせください。

<小口止工と横帯工での工夫>

小口止工の部材厚と横帯工の通りを変えることでブロック張りとの隙間をなくしました。基礎の勾配と低水護岸の勾配が平行でないため、通常ですと隙間をモルタルで目地詰めするのですが、発注者の方から小口止工と調整コンを一体化する方法があることを教えていただいたのでチャレンジしました。初めての試みだったので、施工は難しく手間もかかりましたが、技術者として勉強になりました。目地詰めによるクラック抑制にも繋がり、品質・仕上がりも向上しました。

資料1)小口止工と横帯工での工夫 資料1)小口止工と横帯工での工夫

<平ブロック張時の間詰ブロック使用>

平ブロックの連結箇所に間詰ブロックを使用しました。通常はコンクリートの金ゴテ仕上げで間詰を行いますが、施工スピードを上げるために検討しました。平ブロックと同じ素材(ポーラス)の間詰用ブロックがあるかをメーカーに聞いたところ、あるとのことで、美観もよくなると思い採用しました。

写真5)間詰ブロック使用 写真5)間詰ブロック使用

<かごマット工法での工夫>

天端保護にかごマットを採用しましたが、かごマット側面に型枠を設置して栗石を投入しました。型枠があることで、栗石投入時のかごの変形を無くし規格値内に抑えるとともに、施工スピードも向上しました。かごマットも栗石も覆土で見えなくなるものですが、工事写真の見栄えも含めてやってみたらどうかと技能者の方から提案されたので採用しました。

写真6)かごマットへの型枠設置 写真6)かごマットへの型枠設置

Q 横田社長にお聞きします。お話を聞くと岡本さんのコミュニケーション能力は高いですね。

当社は技能者も直営で、日々コミュニケーションを取りながら現場を動かしています。私で3代目になりますが、昔から「技能者が技術者を鍛えて成長させないと自分たちが苦労する」という考えがあるからです。岡本は技術者としては若手と呼ばれる年齢ですが、社歴としては18年目です。今回表彰をいただいた工事では、自ら考え、発注者の意見を聞き、技能者とコミュニケーションを取り、うまく現場を動かしてくれたと思っています。香川県の建設会社が国直轄の河川工事で局長表彰を受けることはこれまでほとんどありませんでしたので、香川県内の建設業のためにもよかったと思っています。

また、この工事では岡本の提案で安全教育にVRを導入しました。VRを用いてさまざまな災害事例を疑似体験できるものです。VRに触れる機会というのはあまりないですし、今後は取り入れられてくると思いましたので、コストはかかりましたがOKしました。ベテランの人に聞くと「重機が動いている時にそこには居ないよね」という意見もありましたが、新人教育には向いていると思いますし、今後、外国人労働者を受け入れるようになると有効ではないかと考えています。

写真7)VRを使用した安全教育 写真7)VRを使用した安全教育

Q 岡本さんが現場責任者を担当する際に日頃心がけていることがあればお聞かせください。

やはり安全第一を目標としてます。ただし、安全管理のためには工程管理が欠かせません。無理な工程では安全が疎かになるからです。確実な工程管理は、次の工程を考え、起こり得る問題点を先手管理することで可能となるので、常に先のことを考えられる技術者になりたいと思っています。今回の工事も考え抜いた末にやりきれる工程を組みました。相当厳しい工程での工事でしたが、先手管理を行いながら無事完成させることができたということも、評価いただいた要因だと思います。

写真8)監理技術者の岡本さん 写真8)監理技術者の岡本さん

Q 横田社長にお聞きします。地域の建設業としてのこれからをどうお考えですか?

当社では新卒を採用しても離職してしまうという時期があり、やはり若い職員に入社してもらい、育てることは難しいと感じています。当社は、昨年度の有給消化率は100%、年間で115日程度の休みがありました。従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践する取組みが評価され、健康経営優良法人の認定も3年連続で受けています。働き方改革・生産性向上が叫ばれている中、当社としても制度を整え、週休2日のモデル工事についても、頑張ってついていきたいと考えていますので、どんどん若手が入職してくれることを期待しています。
またICTについても、今後のことを考えてソフト面は導入していますが、工事規模が小さいと採算が合わないというのが現状です。少ない人数で頑張っている忙しい職員に、プラスICT施工の勉強もというのはなかなか言いにくいので、本格的にICT工事を進めていくにはICT専門の職員を雇うことも必要かと考えており、他分野の人材が建設業界に入職してくれることがこの業界の発展に繋がるのではないかと思っています。

写真9)横田社長 写真9)横田社長

おわりに

土器川を初めて訪れました。冬場とはいえ水量がほとんどなく、話に聞く香川県の水事情の一端を知ることができました。ただ、そんな土器川も、台風などによって地域の安全を脅かす水害を引き起こしかねません。岡本さんは現在、下流の護岸工事に監理技術者として業務にあたっているそうです。地域の安全を支える建設業と、そこで働く岡本さんのような若手技術者の活躍を地域住民の方などもっと多くの人に知ってもらいたいと感じました。

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