2022/02/25
今回の現場探訪は、令和3年度国土交通省関東地方整備局の局長表彰(維持修繕工事)を受けた「R2目吹守谷管内堤防強化関連整備工事」です。この工事を施工された戸邊建設株式会社(本社 千葉県野田市)にて、当工事の監理技術者・高野憲明さんと、本社からバックアップした大須賀勝さんのお二方に、工事の概要と施工時のご苦労や工夫についてお話を聞きました。
工事概要 | 【当初】 工事用道路維持工、目吹地区河川防災ステーション維持工 他 【最終】 工事用道路維持工、目吹地区河川防災ステーション維持工 他、田中調節池内維持工、 (栗橋地区) 水道管工、下水道管工 他、 (守谷市板戸井地区) 河川土工、地盤改良工、付帯道路工、水道管工、下水道管工 他 |
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発注者 | 国土交通省関東地方整備局利根川上流河川事務所 |
工期 | 令和2年4月1日~令和3年3月31日 |
受注者 | 戸邊建設株式会社 |
施工場所 | 利根川上流河川事務所目吹出張所、守谷出張所、栗橋出張所管内 |
請負金額 | (当初): 65,000,000円(税抜き) (最終):197,390,000円(税抜き) |
監理技術者 | 高野 憲明 |
本工事は、もともと一級利根川水系利根川における維持修繕工事(工期:令和2年度の1年間)として契約したものです。工事名が「目吹守谷管内堤防強化関連整備工事」となっているのは、首都圏氾濫区域堤防強化対策の築堤のために必要な土を運搬する、目吹及び守谷出張所管内の工事用道路の維持修繕(関連整備)を行う、という意味です。
本工事は工期途中において、「(栗橋地区)水道管工、下水道管工」、「田中調節池内維持工」が変更追加された後、さらに9月30日の第3回設計変更で「(守谷市板戸井地区)河川土工、地盤改良工、付帯道路工、水道管工、下水道管工 他」が追加されました。この追加変更された「守谷市板戸井地区」の工事が、高度な施工マネジメント能力を求められる工事でした。
当初発注の内容は1年間の工期で一般的に対応できるものでした。たいへんだったのは、3つの変更追加工事のうち、特に守谷市板戸井地区の工事です。この工事は、鬼怒川の利根川合流点から上流に約2.5km地点の鬼怒川左岸における築堤(洪水時に利根川のバックウォーターが影響する区間(背水区間)として利根川上流河川事務所が担当)工事です。「平成27年9月関東・東北豪雨」により発生した激甚な水害被害の再発防止を図るため、堤防整備等を緊急に実施する「鬼怒川緊急対策プロジェクト」(平成27年度~令和2年度)が行われましたが、その一環としてこの工事は位置づけられていたことから、必ず令和2年度内に完成させる必要があり、「緊急対策プロジェクトの中で、この箇所だけ完成できなかったというわけにはいかない」という強烈なプレッシャーがかかる工事でした。
守谷市板戸井地区については、準備工を含めて6か月間で完成させなければならない極めてタイトな工事でした。さらに当箇所の工事は、一本の一般土木工事として入札が何回か行われたものの不調に終わった経緯があります。重機が入る入口もないような狭隘で極めて施工しにくい場所等でもあったことから、受注希望会社が全くなかったことも頷けるような工事でした。また建物解体完了後の基礎撤去時に敷地から大型FRP製浄化槽(50人槽)が見つかる等、予期せぬことが多数発生した工事でもありました。このような難しい工事を年度内にきちんと完成させたからこそ、関東地方整備局の局長表彰を受けることができたと思っています。
守谷市板土井地区の工事では、多種多様な施設・設備を取扱う必要があったことから、守谷市や関係機関との綿密な調整が必要でした。具体的には、利根川上流河川事務所長から守谷市長へ申請する付替市道の道路法第24条道路工事施工承認、水道工事施工承認、公共下水道施設工事施工等承認や、守谷市長から所轄警察署長へ協議を行う道路工事実施協議等々ですが、それらに関する書類の原案作成や正式申請前の事前協議に、現場技術者だけではなく本社も一体となって主体的に参画しました。また付替市道に関する歩行者迂回路や、下水道使用制限の有無、水道断水時間の有無などの事前説明を地域の方々へ満遍なく実施したほか、近隣の方々が視認しやすい「ソーラー式騒音計・振動計」の設置、常時アクセスできる「わかりやすい工事内容説明板を置いた現場見学台」の設置、さらには定期的に現場見学会を開催して積極的に地域の方々とコミュニケーションを図る等、地域の方々に工事へのご理解をいただく工夫を常に意識して実施しました。特に、付替市道の施工においては着手から完了までの間、「全面通行止」が避けられませんでしたが、この市道が近隣の住民の方々に日々利用される鬼怒川沿いの散策コースであったことを踏まえて、少しコストはかかりましたが、常時散策できるように迂回路を設置して、近隣住民の方々にとても喜んでいただきました。
工期短縮を目的として、マンホール設置工(マンホールポンプ設置2号人孔(内径1.2m、深さ約4m)の仮設として「ライナープレート」の使用が想定されていたところを、切梁がなく施工性に優れている「マンホール土留(アルミ製水圧式スプリング内蔵四方張り土留)KK-130024-VE」を採用しました。ただし、今回の工事では日々工程管理に追われていたこともあり、それ以外にICTや新技術の積極的な活用ができなかったのは反省点です。
また、もう一つの反省点として、現場閉所による週休2日(4週8休以上)を達成できなかったという点があります。当工事は週休2日制工事に該当する工事ではありませんでしたが、年が明けた1月以降は、土曜日や祝日の現場開所が続き、残念ながら土日現場閉所の週休2日を達成することができませんでした。やはりたくさんの若手技術者に建設業に従事してもらうためには、週休2日、しかも土日が休みであることが必要と思っています。
今回の工事ではICT活用に取り組むことはできませんでしたが、当社では今年度、関東地方整備局江戸川河川事務所より受注した「R2江戸川右岸金杉地先基盤整備工事」(埼玉県北葛飾郡松伏町金杉地先)において、マシンコントロールを使用したICT土工を実施しています。3次元データに抵抗感なく取り組んでいるのが当社の工事部長で、当社としてICTを使えるところはできるだけ使っています。盛土量が3,000m3程度のところでも連続施工できるところや、例えばコンクリート二次製品の床掘でもそれなりに延長があればICT建機を使ったりします。ICT建機について当社はリースで使用していますが、正直、やはりリースは少しお高いです。
廉価で簡易に操作・使用できるICT建機が出てくれば、とてもありがたいですね。また連続的に施工できるように、発注内容の吟味や支障物の撤去・移転に関する関係機関協議の速やかな完了等が行われ、確実な予定が立てばもっとICT活用を進めることができると思います。なお、ICT土工はスピーディに実施できることからか、近年歩掛が驚くほど安くなっており、通常の土工の歩掛と比べると相当な差が生じています。その分、ICT建機のリース代などでカバーしていただいていますが、ICT活用が普及していくためには、ICT活用によって十分な利益が出ること、それも従来の方法で実施するよりも大きな利益が出るようにしないと、企業はなかなか取り組むことはできないと思いますので、そのあたりを十分考慮いただければありがたいと思います。
余談ですが、マシンコントロールで施工している現場を見ていると、将来的には遠隔での無人施工が標準になってくることが身近に感じられます。その時、現場を知らない人たちばかりによってICT建機が現場を施工している、というとんでもない状況にならないか、と心配にもなります。取り越し苦労かもしれませんが。。。
当社は「野田市に根ざし地域に貢献する」地域密着型企業として持続的に発展していく企業を目指しています。在籍する技術者が10名未満の小規模な企業ですが、現場での裁量は現場に大幅に委ねられていますので、現場責任者が新技術を取り入れたり、地域とのコミュニケーションを図ったりと、どうすれば地域に喜んでいただけるか、品質が高い施工ができるか、もちろんコストや工期短縮により労働生産性をいかに向上させることができるかということもありますが、それらを常に意識しながら各技術者が主体的に取り組んでいるところが大きいと思っています。
たとえば、バックホウに自動的にバケット内の重量を計測する機器を取り付け、現場から土砂を搬出するダンプトラックが過積載にならないよう厳密に、しかも簡便に管理していること等も、その良い事例です。とはいってもまだまだICTを活用していく必要はあると感じています。
またどこの現場においても、地域の方々に丁寧に工事内容を説明してご理解を得ることや、地域の方々にご不便がかかることが最小限になるよう、取り組んでいます。
自分で言うのもなんですが、会社の技術者はそれほど多くはないながらも、少数精鋭で頑張っている会社です。この3年間でも国土交通省関東地方整備局から毎年、局長表彰をいただいています。ただ一番若い者でも年齢が40代前半という状況で、もっと若い技術者の入社を期待しています。そのためにも、ICTの活用や週休2日は必須だと考えており、発注者の方々にも、今後それらを実施しやすいような発注内容の検討をさらに深めていただけたらと思っています。今回の工事はおかげさまで局長表彰を受けることができましたが、相当なプレッシャーで、今でも「よく完成できたな」と思っているところです。局長表彰をいただけるのは物凄くうれしいのですが、正直、できるだけこのような「心臓に悪い(笑)」工事が今後発注されないことを期待しています。
今回は趣を変えて、維持修繕工事の表彰工事を取材しました。国土交通省は「社会資本メンテナンス元年」と位置づけた平成25年から、総合的・横断的な老朽化対策・長寿命化対策などを着々と進めていますが、膨大な数の社会資本の確実な機能確保は、現場をよく知っている、地域の建設会社の方々の頑張りがあってこそ、と感じています。またICT活用の推進が図られるためには、受注者と発注者双方が、生産性の向上、働き方改革を常に念頭において取り組むことの大切さも感じています。CONCOMでは、今後とも表彰工事を取材して、いろいろな創意工夫を紹介していきたいと思っています。
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