現場探訪 優れた工事成績評定の現場、話題の新技術、人材確保に役立つ情報をレポート

表彰工事

2022/11/01

ICTのフル活用に加え、建設現場でのSDGs
(持続可能な開発目標)にも積極的に取り組む。

回の現場探訪(表彰工事)は、令和4年度 国土交通省 東北地方整備局の局長表彰を受けた「雄物川上流岩瀬樋門新設等工事」です。この工事を施工された横手建設 株式会社(秋田県横手市)の、当該工事の現場代理人を勤めた佐々木一嘉さんに工事の概要と、建設現場における「SDGs(持続可能な開発目標)」への取組等についてお聞きしました。

【工事概要】
工事概要 樋門・樋管、護岸基礎工、法覆護岸工 他
発注者 国土交通省 東北地方整備局 湯沢河川国道事務所
工期 令和3年4月1日~令和4年3月18日
受注者 横手建設 株式会社
施工場所 秋田県大仙市強首~大仙市協和峰吉川 地内
請負金額 277,288,000円(税込)
現場代理人 佐々木一嘉
監理技術者 菊地 智

Q 今回の工事の概要(目的)について簡単にご説明ください。

雄物川では、平成29年(2017年)7月と8月に記録的な豪雨による災害が発生しまた。特に浸水被害の大きかった雄物川中流部において、東北地方整備局では「雄物川における河川激甚災害対策特別緊急事業」を進めています。当工事はその事業の一環として、岩瀬地区において樋門・樋管の新設及び築堤盛土、大巻地区において河道掘削を行う工事です。

写真1)工事位置図 写真1)工事位置図

Q ICT施工を導入されたそうですが、どのような作業でどのようなメリットがありましたか?

今回の工事では、レーザースキャナーによる起工測量から3次元設計データの作成、バックホウ・ブルドーザ・振動ローラ等のICT建機による施工、出来形管理、納品(現場検査)と、すべての工程でICTを活用しました。いわゆる ICTの5段階フル活用での施工でした。私自身ICT活用工事は通算3回目となりますので、特に不安もなく、メリットだけを感じて取り組んでいます。今後も可能な限り、ICTの5段階フル活用に取り組んでいこうと思っています。具体的なメリットとしては、よく言われていることですが、丁張設置作業の不要による作業効率の向上や、重機オペレータの熟練度に依存することなく作業の速度と品質が確保できることだと思います。また、ICTを活用した現場では、最新の機器を使った現場ということで、作業員の士気も上がっているような気がします。

写真2)ICT施工 写真2)ICT施工

Q 今回の現場では、Webカメラを使用したそうですが、その目的とメリットについて教えてください。

目的は増水時の現場の状況をリアルタイムで見るためです。今回の現場では、異常気象時の対応や資機材盗難防止の為、24時間の監視体制を取りました。天候によって河川の状況は変化しますので、カメラであれば安全かつリアルタイムで状況を把握することができます。メリットとしては、現場監理者だけでなく、作業員も含めて、現場の全員に緊張感が生まれることでしょうか。現場の状況は本社内でも見ることができますので、いい意味で『見られている』という意識が安全な行動につながると思っています。

  • 写真3)ウェブカメラ 写真3)ウェブカメラ
  • 写真4)本社での遠隔確認 写真4)本社での遠隔確認

Q Webカメラのような新技術の情報の収集や操作技術の習得はどのようにされていますか?

弊社では、1ヶ月に1回、本社で会議があり、新技術について確認・検討します。自身が講習会やネットで得た情報、近くの現場で見聞きした新しい技術の情報等について会議で発表します。その中で採用したい技術があれば、メーカー等に問い合わせをし、詳細な資料を取り寄せてさらに検討します。実際に購入した場合にはメーカーの担当者に操作方法を聞いたり、社内の技術者同士で実際に操作したりして習得していく感じです。これまで導入した新技術に関しては、特に難しいと思ったものはありませんでした。

Q 民家の近くでの施工だと思いますが、特に留意したことはありますか?

工事現場が道路沿いであり、周辺に民家もあることから、工事箇所の見える化を実施しました。具体的には工事範囲をオレンジネットとのぼり旗で区分し、作業員及び地域の方々が、出入口以外から入場することがないように工事箇所を明確にしました。また、騒音・振動計を設置し、『数値による騒音の見える化』を実施し、常に騒音振動規制内で作業することを意識しました。おかげさまで、周辺住民の皆様からの問い合わせや苦情もありませんでした。
さらに、住民の方に工事の内容や進捗状況を「見える化」するために、一か月に2回のペースで『工事のお知らせ』チラシを作成して配布しました。これによって、今、どんな工事をしているのか、どんな重機を使用しているのか等をお知らせして、工事への理解を深めていただきました。

写真5)オレンジネットとのぼりによる工事箇所の見える化 写真5)オレンジネットとのぼりによる工事箇所の見える化

Q その他、今回の工事で工夫されたことはありますか?

今回の工事では、ブレキャスト函渠の緊張時の誤差を少なくすること、樋門・樋管本体工のジャンカを防止すること、プレキャスト部材の接合部の的確な取付、が大きな課題でした。これらを解決する対策として、メーカーによる技術力向上講習(部材の設置方法・緊張方法・裏込充填など)を実施しました。この講習によって、PCの間隔を一定にし、段差をつけないといった緊張時の誤差を50%以内に抑えるために重要な対策を学び、現場作業に活用しました。樋門・樋管本体工の工事において、透明なアクリル板の型枠を作り、バイブレータの締め固め速度を確認することで、ジャンカの発生を防ぐことができました。これも講習の成果といえます。

写真6)技術力向上講習 写真6)技術力向上講習

Q 今回の工事は「SDGs(持続可能な開発目標)」にも積極的に取り組んだようですが、具体的にどんな項目を実施されたのでしょうか?

建設工事を通して地域社会に貢献できることがあるのではないかと考え、弊社では令和2年8月から、「SDGs(持続可能な開発目標)」の支援を本格的にはじめました。令和4年(2022年)1月には、事業活動などを通じて、SDGsの達成に意欲的に取り組む県内企業として、『秋田県SDGsパートナー』に登録されました。
SDGsの17項目の中で、弊社が特に環境目標として定めているのが以下の6項目です。
またそれを達成するために、今回の現場ではさまざまな取り組みを行いました。建設事業においてもSDGsの取り組みはとても重要と感じており、このような取り組みが工事内容として評価されればうれしいですし、当社だけではなく、実施されるすべての工事に取り組みが展開されていけばよいと思っています。

【SDGs番号/(目標)/当現場での主な取り組み】

SDGs 3/(すべての人に健康と福祉を)/快適トイレ開放

SDGs 5/(ジェンダー平等を実現しよう)/測量作業による女性の活躍推進

SDGs 8/(働きがいも経済成長も)工事進捗状況の掲示とホームページPR

SDGs 9/(産業と技術革新の基盤を作ろう)/ICT施工及び新技術の活用

SDGs12/(つくる責任、つかう責任)/技術力向上講習

SDGs13/(気候変動に具体的な対策を)/木製品使用により地球温暖化防止

今回の施工現場でのSDGsの取組

今回の施工現場でのSDGsの取組

Q 佐々木さんが日頃、現場の責任者として心がけていることは?またこれからの目標はありますか?また、これから現場代理人、監理技術者をめざす若い技術者にアドバイスをお願いします。

工事の出来形及び品質の向上や、安全に進めて行く為ためは、常に余裕を持った工程、段取りを頭の中に入れておくことを心がけています。今後の目標も、より良い工事現場を完成させる様に、安全に進めて行くことです。若い技術者も、出来形・品質・安全・地域貢献等、日々、現場で成長していくと思いますが、まずは私たちが仕事の魅力を正しく伝え、自分の仕事に興味をもつように教えていくことが大事だと思います。

写真7)佐々木一嘉さん(現場代理人) 写真7)佐々木一嘉さん(現場代理人)

おわりに

これまで、「コンコム現場探訪/表彰工事」では、ICTを積極的に活用し、優れた成績を収めた工事に注目することが多く、今回の横手建設さんのように、優秀な施工だけでなく、施工現場で実現する「SDGs」の取り組みについてお話を聞くのは初めてのことでした。今回の取材で、ICTやIoTの活用、週休2日制の推進等の取り組みが、建設業の生産性の向上や働き方改革につながるだけでなく、SDGsの実現にも貢献していることを学びました。

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