2023/05/08
皆さんは、3.11と聞いて何を思い浮かべますか。やはり平成23年3月11日ではないでしょうか。そう、東日本大震災です。あれから12年が経過しました。西暦で書くと、2011.3.11、略して‘11.3.11。逆から読んでも同じ、つまり回文となっています。
ちなみに阪神淡路大震災は、平成7年1月17日。7.1.17と偶然にも回文になっています。和暦、西暦の違いはありますが、どちらも回文なので覚えやすいですよね。忘れてしまっていた方は覚えておいてください。余談はこの辺にして。
東日本大震災によって東日本の太平洋沿岸500kmにも及ぶ広範囲で甚大な被害を受けました。これによって多くの尊い命や財産が奪われましたが、多くの命も助かりました。復興も着実に進んでいますが、まだ仮設住宅に暮らしている方もおられ、まちづくりも道半ばです。一方被災地では、そういった実情や貴重な教訓を後世に伝えていくための施設が多く整備されています。
『3.11伝承ロード』とは、東日本大震災の教訓を学ぶため、被災地にある多くの「震災遺構(津波被害の石碑、被災した小学校などの建物、奇跡の一本松など)」と「震災伝承施設」とのネットワークを活用して防災に関する様々な取り組みや事業を行う活動のことです。今回の現場探訪/話題の現場では、この「一般財団法人3.11伝承ロード推進機構」の取り組みについて紹介します。
被災地には「震災伝承ネットワーク協議会」(構成:東北地方整備局、青森県、岩手県、宮城県、福島県、仙台市、復興庁)により登録された317の「震災伝承施設」(令和5年1月31日現在)があります。
「震災伝承施設」は次の項目に該当する施設で、分類条件により第1分類から第3分類に分けられています。
≪項目≫
①災害の教訓が理解できるもの
②災害時の防災に貢献できるもの
③災害の恐怖や自然の畏怖を理解できるもの
④災害における歴史的・学術的価値があるもの
⑤その他(災害の実情や教訓の伝承と認められるもの)
≪分類選定の条件≫
【第1分類】
項目の1つ以上に該当
【第2分類】
第1分類のうち、公共交通機関等の利便性の高い、近隣に駐車場がある等、訪問しやすい施設
【第3分類】
第2分類のうち案内員の配置や語り部活動等、来訪者の理解のしやすさに配慮されている施設
インバウンドも含めて国内外の方に「震災伝承施設」に訪れてもらえるよう、また震災の教訓や実情を理解してもらえるよう、ホームページやパンフレット、マップなどを作成し、多言語化して様々な情報発信・広報が行われています。
1) 機関誌の発行
2) メールマガジンの配信
伝承活動や伝承ロード研修会の開催、防災・伝承セミナーの活動状況やパネル展示等の予定など、賛助会員、寄付者へ向けて月1回を目途にメールマガジンが配信されています。その他、伝承ロード研修会の優先手配、伝承ロードバスツアーへのモニター優待などの特典を用意しており、伝承ロード推進機構の事業や取り組みに賛同していただける企業・各種団体の皆様の賛助会員への入会を広く募集しています。
3) ラジオによる情報発信
震災から10年が経過した今、「震災伝承施設」、「震災遺構」にまつわる様々な体験や想い、そして震災から得られた教訓やメッセージを生の声で紹介し、伝えるべき真実や教訓を振り返る、放送が開始されています。
放送エリアは東北6県で1回の放送時間は15分間です。
なお、音声データはホームページにも掲載されています。
東日本大震災後に整備された多くの「震災遺構」や「震災伝承施設」を通じて災害の実情や被害の実態を把握し、被災後の復旧・復興について学ぶとともに、インフラとしての備えを理解することができます。
近年の災害の激甚化や頻発化により、土木技術者は災害発生による被害状況や規模、その対策としての復旧や復興を理解することはますます重要となってきていると思います。
そこで『3.11伝承ロード』では、被災の状況や復興の重要性を理解できるように、「震災遺構」や「震災伝承施設」、「復興施設」を選定した研修のモデルコースを5つ設定し、コースの案内や見学施設の概要などを説明する添乗員を付けるとともに、見学する「震災遺構」には専門の語り部を、「震災伝承施設」には説明ガイドを、復旧・復興におけるインフラ施設においては専門の説明員を配置し、分かりやすく、効果的な研修が行われています。
また、要望により、行程の範囲内で東北の文化や風土に触れる体験や施設などの見学もできるように配慮がされています。
なお、モデルコースだけではなく、企業の希望(観光地も含む)に沿ったコース設定も可能だそうです。
ホームページには、「実際に被災された方のお話を聞けてとても貴重な体験ができた」、「直接お話を伺い、大きく、深く、強く身体に沁みた」等、参加者の声が掲載されています。
【見学・研修の相談】
URL:https://www.311densho.or.jp/tour/index.html?no=4
TEL:022-393-4261 E-mail:info@311densho.or.jp
以下、モデルコースをURLと合わせてご紹介しますので、ご参考にしてください。
いずれのコースも朝9時ごろに出発し、夕方5時ごろに到着する1泊2日の行程となっています。
●モデルコース
≪コース1≫なりわいの再生
福島沿岸部を巡り、原発災害を乗り越えてなりわいの再生をめざす地域の取り組みを学びます。
≪コース2≫賑わいの創出
宮城県石巻地域を中心に巡り、街に賑わいを取り戻すための取り組みや、河川整備による賑わいの創出を学びます。
≪コース3≫震災伝承による復興
陸前高田市付近に残る震災遺構や震災伝承施設を見学します。大規模な嵩上げ事業、三陸沿岸道路気仙沼湾横断橋(仮称)等の整備現場を見学し、最新の土木技術も学べます。
≪コース4≫津波常襲地域の知恵と津波との戦い
津波常襲地における当時の避難行動を振り返り、海と共に生きてきた三陸の知恵とこれからの防災を学びます。
≪コース5≫市街地における津波の実情を知る
津波で大きな被害を受けながらも、迅速な復旧を遂げた八戸市を中心に、復興に向けたまちづくりを学びます。
東日本大震災直後の道路啓開や津波の浸水排水作業などは、警察・消防の人命救助前の緊急作業として行い、孤立した避難所への緊急物資の輸送にも大きな貢献を果たしました。
また、驚くほどのスピードで復旧・復興事業に尽力した建設業界の活動は、自治体等の支援を得ながら、さまざまな知見や技術を駆使して行われました。
そこで、震災直後からその後の10年間における様々な活動に尽力された建設会社の活動実績を映像アーカイブとして残し、教訓の伝承と新たな防災意識社会の形成に向け、広く社会に役立てていくことを目的とした映像アーカイブ事業が行われています。
映像は建設関係の団体や企業から提供された映像資料を基にしたストーリー仕立てになっています。
当時の社会情勢を踏まえ、被災の現状や課題を明らかにするのはもちろん、どのように対処したのかその背景などについてのインタビューなどを加えて、建設業が被災地に与えた意義や役割を伝える内容とすることとされています。
当時の社会情勢を踏まえ、被災の現状や課題を明らかにするのはもちろん、どのように対処したのかその背景などについてのインタビューなどを加えて、建設業が被災地に与えた意義や役割を伝える内容とすることとされています。
映像完成後、映像アーカイブ事業認定委員会による認定審査をパスした作品に認定証が交付され、その後公開されます。現在、以下の9作品が認定されています。動画時間は5分から10分程度、長くても15分以内にまとめられていますので、是非とも多くの皆様にはご覧になっていただきたいと思います。
URL:https://www.311densho.or.jp/archive/index.html?no=7
【認定作品】
令和2年度より年1回、防災分野の学識経験者による基調講演や地元で復興に尽力されている民間人、学識者、行政担当者によるパネルディスカッション等により構成された防災・伝承セミナーが開催されています。
令和4年度は「これからのまちづくりと震災伝承について」をテーマにディスカッションが行われました。この模様はホームページにも掲載されています。
URL:
https://www.311densho.or.jp/tour/i ndex.html?no=4ndex.html?no=4
2011年3月11日に発生した東日本大震災がもたらした大津波により、多くの尊い命が奪われました。
その後も日本列島は毎年のように災害に見舞われてきました。地球上でもっとも自然災害の多い土地と言っても過言ではないでしょう。
このように全国各地で発生する自然災害に対して、いち早く現場に赴き、道路啓開や復旧に当たるのは建設業界のみなさまです。
壊滅的な被害をもたらす未曽有の津波災害が発生した際に、地域の建設業が復旧・復興にどのように係わり、役割を担ったかを認識すること、そしてそれを風化せずに伝承していくことは、全国各地で建設業に携わる技術者の皆様にとって、本当に大切なことだと感じます。
その時、『3.11伝承ロード』を活用し、例えば社外研修として、この地へ訪れ語り部や説明ガイドから直接話を伺うのも一つでしょうし、社内研修で映像アーカイブを活用することも一つではないでしょうか。
認定作品は、貸し出しも可能です。詳しくはホームページをご確認ください。
URL:https://www.311densho.or.jp/archive/index.html?no=7
是非とも、多くの皆様にこの地を訪れ、肌で直接感じてもらいたいと思います。
どうぞよろしくお願い致します。
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