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現場探訪 優れた工事成績評定の現場、話題の新技術、人材確保に役立つ情報をレポート

ICTの現場

2020/10/29

ICTの分野で
地域のリーディングカンパニーになる。
想いの実現に向けて、着実にノウハウを蓄積。

回紹介する「現場探訪/ICTの現場」は、高知県の福留開発株式会社さんの取り組みです。技術情報の入手機会や研修の参加機会が決して多いとは言えない地方の建設会社で、令和元年度には国土交通省「i-Construction大賞・優秀賞」を受賞するほどの実績を重ねている建設会社のICT推進への考え方、工夫についてお聞きしました。
代表取締役社長の大場将史さんには、地場の建設会社の経営の観点から、ICTにチャレンジする想いを。当工事の監理技術者の足達大輔さんには、現場でのICT活用の現状とご自身が考える今後の可能性を。福留開発さんの「i-Construction推進チーム」の立ち上げを担当した井上里沙さんには、導入当初の苦労と若手技術者への教育についてお話を伺いました。それぞれの立場のお話から、ICT推進のヒントを感じていただければ幸いです。

工事概要河川土工、法覆護岸工、根固め工 他
発注者国土交通省 四国地方整備局 高知河川国道事務所
工期平成30年12月21日~令和2年6月30日
受注者福留開発株式会社
施工場所高知県香美市土佐山田町岩積地先
請負金額322,112,000円(税込)
監理技術者足達 大輔
現場代理人佐竹 寿雄

Q 今回の工事の概要(目的)について簡単にご説明ください。

「平成30年7月豪雨」により被災した一級河川物部川の災害復旧工事です。豪雨の影響でブロックが流され、むき出しになった堤防の基礎部分を立体型ブロックで補強するとともに、現地巨石・玉石を活用した河道修復を行うことで、治水と環境を両立した川づくりをめざしました。

Q 福留開発さんが、積極的にICTに取り組もうとしたきっかけ、動機は何ですか?

国土交通省が「働き方改革」「生産性向上」「i-Construction」といったスローガンを掲げる以前、すでに建設現場に導入されつつあったドローンに興味を持ち、県外同業者のアドバイスのもとドローンを購入、現場の空撮を開始しました。当初は現場全体を俯瞰するためだけに空撮を行なっていましたが、後に国土交通省より「i-Construction」の推進が発表されたことに伴い、自然の流れで順次UAV測量、TLS測量、3次元設計へと取り組みました。また、その頃時を同じくして産休から会社に復職した若手女性技術社員が、「i-Con推進チーム」のリーダーとして、本社に籍を置いたままICTに取り組む各現場のフォローを行い、現場の若手社員を中心に、彼らと一緒になって前向きに現場の3次元化に取り組んできました。

  • 写真1)大場将史社長

    写真1)大場将史社長

  • 当時の事を振り返ると、人手不足が懸念される将来に備えた新技術の導入によって、現場の生産性向上を達成するという思いだけではなく、発注者(お客様)である国土交通省が推進する「i-Construction」の実践・検証に対する期待に何とか応え、この分野において地域のリーディングカンパニーになるんだという想いもありました。

Q 初めてフルICT施工に臨んだ工事で、想定していた通りの効果があげられましたか?

2016年に弊社として初めてICT活用工事を受注しました。当然はじめから上手くはいきませんでした。初めての事ばかりで、慣れない作業の繰り返しで、生産性向上どころか、逆に残業時間が増えました(笑)。しかし、徐々に社内でノウハウを身につけ、互いにアドバイスできるほどの技術を修得してきた今では、従来施工より格段に生産性向上の効果を実感することが出来ています。

Q ICTの精度をさらにあげるため、また社内でのレベルアップのため、どのような取り組みをしていますか?

  • 社内勉強会の開催もそうですが、高知は地方の田舎ですので、中央の先進的な情報を積極的に取りに行くように心がけています。新技術について先進的に取り組みを行なっている同業他社、機器ソフトメーカー、建機メーカーの方々との情報交換を積極的に行っています。また、一般開催される新技術の勉強会等にも積極的に参加するようにしています。

  • 写真2)社内勉強会

    写真2)社内勉強会

Q ICTは儲からない、経費と手間ばかり増えると考えている経営者の方々も多いと思います。アドバイスはありますか?

アドバイスができる立場ではありませんが、初期における「経費」「人員」「時間」はどうしてもかかります。これは当たり前です。高額な機械を用いて初めての取り組みを行うのですから。またこれだけ人手不足が進む中で、マンパワーに余裕のない会社さん、若手社員がいない会社さんではなかなかICTを活用することが難しいかもしれません。さらに、ベテラン社員の方に、時間をかけて一からPCの使い方を教え、ICTを習得してもらうことも簡単な事ではないかもしれません。

当社の場合、発注者が「i-Construction」を求めている、業界全体が変わろうとしている中で、「やらない」という選択肢はないと思いましたし、現場もメリットや将来性を理解して、積極的に関わっていく姿勢になってくれたので進められたと思います。

「経費」「人員」「時間」の余力は会社の規模や受注している工事の内容にもよると思いますが、導入のための補助金などの助成制度もありますし、「経費」について言えば、初期段階では厳しくても、長い目で見れば回収可能だと思います。

Q 今後、福留開発さんとしては、ICTをどのような方向に進化させていきたいと考えていますか?

  • これまで、

    2015年9月ドローンを購入し、着工・完成の空撮を開始
    2016年4月「i-Construction推進チーム」設置
    2016年9月初ICT活用工事受注
    以後国土交通省・県の発注工事で12件のICT
    活用工事を実践
    2019年12月「i-Construction大賞」優秀賞受賞

    と、着実にICTの経験値を上げてきたことで、地域でも「ICTといえば福留開発」と認められるようになってきたとは思いますが、正直まだまだ模索中の面もあります。VRやBIM/CIMなど、次のステージでも先駆けとなれるよう、有効性等もっと勉強しなければならないと思っています。

  • 写真3)i-Con大賞表彰式(赤羽国土交通大臣と大場社長)

    写真3)i-Con大賞表彰式(赤羽国土交通大臣と大場社長)

Q 監理技術者として、足達さんにとってICTはどんな存在ですか?

これからの時代の進化とともに、間違いなく無くてはならない存在だと思います。実際活用している自分も、多岐にわたってその利便性を感じており、今後の建設業界への一般導入化は必須だと感じています。また一般的な活用だけに留まるのではなく、現場でアイデアを出し応用する事により、これまでにない施工管理の変化や可能性を現場で楽しむ事もできます。

【当工事で使用したICT機器】
3Dレーザースキャナ 測量・出来形 自社所有
ドローン 測量 自社所有
3DMCバックホウ 土工事 リース
杭打設管理システム 工事測量 自社所有
ICT施工現場端末アプリ 工事測量 自社所有
【当工事で使用したICTソフト】
3D点群処理ソフト 点群処理・データ作成 自社所有
3次元設計・施工データ作成ソフト データ作成 自社所有
3Dモデル作成ソフト データ作成 自社所有
VR(バーチャルリアリティ)システム 設計検討、安全教育 自社保有
出来形管理・電子納品支援システム 完了検査 自社所有

Q 今回のICT施工の現場で、熟練の技術者(技能者)の反応は?

熟練者に限らず、新しい技術の習得には従事者全員が難色を示します。実際に当工事ではICT建機を2台投入し、若手から熟練者まで活用してもらいました。導入当初は「ICT建機」という難しそうなネーミングだけで技能者が拒否していましが、次の日には機械の利便性を感じ、取り合いになるほどでした。ちなみに現在担当している工事ではICT建機を3台投入する予定でいます。

写真4)ICT建機による施工

写真4)ICT建機による施工

Q 今後のICTの可能性について、新しい活用法等、アイデアはお持ちですか?

  • 写真5)3次元データを活用した施工計画

    写真5)3次元データを活用した施工計画

  • 実際に当工事でも、3Dモデルと3次元点群データを用いた具体的な施工計画の立案や、そこからVRに変換し、詳細箇所の事前協議や、若手技術者・技能者に向けた疑似体験による安全意識向上への取り組みなど実施しました。現場施工ではMCバックホウを2台導入し、河川土工(掘削・法面整形)はもとより仮設工(工事用道路設置・大型土嚢据付など)においても設計データを作成・活用する事により、現場全体を無丁張化にて施工する事ができました。

  • 写真6)VRを活用した安全対策

    写真6)VRを活用した安全対策

  • またその中で感じた事は、若手技能者はICT建機の一般的な機能(ガイダンス、マシンコントロール)を活用するといったレベルであり、新しい活用方法を見つける発想はやはり経験豊富な熟練者が長けています。それを踏まえ将来的にはICT建機にAIを搭載し、熟練者の経験・技能・段取りなどの知識を合わせる事ができれば、さらなる生産性向上に繋がるのではないかと思います。

Q これからICTに取り組む企業(監理技術者)に対して、アドバイスをお願いします。

  • 写真7)足達大輔さん(監理技術者)

    写真7)足達大輔さん(監理技術者)

  • 初めて活用する現場は絶対小規模工事での活用をお勧めします。小規模工事では利益が上がらないなどの批判もありますが、個人的には初めて取り組む現場での利益は度外視して、自分たちの技術習得に投資するといった考えで取り組むことが、会社にも従業員にとってもその後の利益拡大に大きく繋がると思います。すなわち最初から活用効果、生産性向上をすべての工程で感じることができるという考えを一度払拭する必要があります。何事も初めての技術習得には時間も労力もかかります。しかし、その後は習得した技術を活用すれば、現場での生産性向上はもとより、技術者としての自信も大きくなります。時代の進化とともに建設業の変革は必ず来ると思いますので、少しでも早く取り組んで頂きたいと思います。

Q 井上さんがICTの推進担当者に任命されたときの心境は?

2016年に国土交通省から「i-Construction」の本格始動が発表された4月に、1年間の育児休暇を経て復職をしました。「現場に出る=朝も早く、夜も遅くなる」為、小さい子供を抱えての仕事はどうなるのだろうか、また現場へ出ることが出来なければ、私は会社での居場所がないのでは…と正直不安でいっぱいでした。そんな中、ICT担当を任命され、新しいことに挑戦するワクワク感と「ICTって一体何者?」という思いがあったことを今でも思い出します。

Q 新しい取り組みをスタートさせることはご苦労も多かったと思います。ICTの社内推進でもっとも大変だったことは?

  • 写真8) 井上里沙さん

    写真8) 井上里沙さん

  • ICTに取り組むにあたり、まず情報収集から始めました。しかし当時は、全くといっていいほど資料がありませんでした。解析ソフトひとつにしても、マニュアルが無く、試行錯誤しながら挑戦してみましたが、かえって誤差が大きくなるなど、当時は苦労しかありませんでした。内製化をめざし、ICTに積極的に取り組んでいる企業への訪問やレンタル機器メーカーにアドバイスをもらい、ノウハウ取得に努めました。こうした苦労があったからこそ、社内のICTマニュアルができ、年次を追うごとにICTを活用できる人材が増えてきていると思います。現在では、各現場主導でICT活用を進め、私はサポート役として活動しています。

Q 新人教育にもICT研修を活用しているとのことですが、反応はどうですか?

  • 写真9)若手職員の研修

    写真9)若手職員の研修

  • 私が入社した頃は、まだまだトータルステーションとレベルを使って測量をしていましたが、今ではドローンやレーザースキャナ、もっと身近な測量機といえば「杭ナビ」が挙げられ、ICTとの接点は密実なものだと思います。また、ほとんどの若手職員がICTに興味があり、自分で活用してみたいと思っているようです。

    弊社では、若手職員に限らず、全職員を対象にICT研修会(外部講師、社内事例発表)を実施しICTの知識・技術を習得してもらう機会を設けています。

おわりに

今回の取材を通して「発注者(お客様)が求めているのに、やらないという選択肢はなかった」。大場社長のこの言葉が印象に残りました。「i-Construction」の推進が掲げられたと同時期に、女性技術者が産休から職場復帰されるというタイミングも福留開発さんにとってラッキーであっとは思いますが、ドローンによる空撮から始め、内製化を進めながら着実にICT活用工事を実践し、ノウハウを蓄積している様子がよくわかりました。また、監理技術者の足達さんは、ICTをただ使うだけでなく、何か新しい可能性はないかとアイデアを模索しているとお話しされていました。「ICTを使う」から「ICTを活用する」といった、次のステップに進みつつあると感じました。高知県内でもおそらく先駆的にICTに取り組んだ福留開発さん。現状のポジションに満足せず、地域のICTリーディングカンパニーからさらに高みをめざす姿勢にも感服しました。

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