2024/02/01
時間外労働の上限規制の施行まであとわずかとなりましたが、「理解はしていてもなかなか進まない」といったお話をよく聞きます。今回は、なぜ働き方改革に取り組まなくてはいけないのか?ということについて再度、考えていきましょう。
「労働環境を改善しよう!」と言っても、常に「工期」がある仕事の中では、日々の業務で手一杯になってしまうのも無理はありません。そして、個々人では何かしたいという思いがあっても、会社全体で変わっていくためには、何かきっかけがなければ難しいのです。しかしながら、今回の働き方改革は「労働法の改正」です。法律を守らなければ罰則があります。まさに「やらなくてはいけない時期」がきているのです。「出来ない」ではなく「やらなくてはいけない」というこの波に乗ってしまいましょう。今まさに、労働環境を変える絶好のチャンスがきているのです。
①労働環境の改善
今回の働き方改革は、労働環境の整備といった労務管理をする上での1番ベースになる部分です。この法改正に対応し、残業時間の削減、有給休暇の取得率を上げていきましょう。まずは法律的な部分を改善していくことがファーストステップです。
②働きやすい職場づくり
①で示した労働環境の改善は、法律をクリアするといった最低限の部分です。次の課題は、定着率をあげるための「働きやすい職場づくり」です。働きやすい職場づくりのために、まずは「ルールの見える化」や「給与の見える化」をしていきましょう。
■ルールの見える化
【ルールブックイメージ】
■給与の見える化
【等級基準書(例)】
③人材の確保
急速なITの進化により、仕事や幸せに対する価値基準が世代によって変化しています。「24時間たたかえますか?」というCMがあったのをご存じでしょうか?このCMを知っている方は、長時間労働=美徳と思われていた世代の方です。決して、この働き方を否定しているわけではありません。この時代は長時間働くことが成果に結びつき、この働き方が当たり前だったのです。しかし今の時代は違います。長時間働くことが必ずしも成果に結びくわけではありません。また、コロナ禍を通して「幸せの価値観」というものも変化してきているように思えます。人材を確保するには、それぞれのニーズにあった働き方を選べることも重要です。特にライフスタイルに合った働き方を選べるよう、正社員だけではなく、テレワーク、フレックスタイム制、また短時間正社員を導入することも重要です。こうした環境を整備することで、働きやすい職場となり、定着率があがっていきます。
④教育による人材育成
働き方改革は「早帰り運動」ではありません。本来の目的は「生産性の向上」です。まずは安心して働ける職場をつくり、その上で定着をはかり、今度はその人材を教育し、スキルを上げていくことが重要です。社内での教育体制の見直しや、キャリアパスを作成することも大切です。
⑤生産性向上・業績アップ
個々人のスキルをあげることで、業務効率があがり、生産性を向上させることができます。個々人のスキルアップは会社の業績アップにつながっていきます。
⑥従業員への還元
業績があがれば、それを従業員へ還元していきましょう。もちろん、給与や賞与で還元していくことも大切です。しかしながら従業員への還元は「お金」でなくても構いません。私がお手伝いしている会社では、毎年、年間休日を増やすことで従業員へ還元していますが、単に休日数が増えれば、残業代が増えてしまいます。そのため、業務の効率化や、社員のスキルを上げることで休日数が増えても残業にはならないように取組を考えています。
労働環境改善で終わるのではなく「働き方改革」の好循環につなげていきましょう。
コロナ禍を通して、仕事や幸せに対する価値基準が大きくかわってきたと思います。先日も、弊所の顧問先で、若手の従業員から「退職します」という話がでました。その理由を尋ねると「子供が生まれるので、奥さんと一緒に子育てをしたい」という回答でした。さらに話をきいてみると「今の会社では、やりがいはあるが、残業も多く、有給休暇もとることができないから、このまま続けるのは難しい。」ということでした。仕事は一生涯続くものです。今は、それぞれの生活の中で仕事をどういう割合で入れていけるのか?ということを一緒に考えてあげなくてはいけない時期にきているのだと思います。「昔は仕事優先で働いてきた」という感覚は通用しないのです。決してその時代を否定するわけではなく、仕事や幸せに対する価値基準が変化したのです。新たな時代になり、私達も考える時期にきているのではないでしょうか?「働き方改革」は絶好のチャンスです。働き方に正解はありません。新たな働き方にチャレンジしていきましょう。まずは各社が魅力を高めることで、業界全体が大きく変わっていきます。これから舵取りの難しい時代ですが、今回の働き方改革をチャンスの時期と捉え、次の一歩を踏み出し、建設業界を魅力あるものにしていきましょう。
連載一覧はこちら
第一回『なぜ時間外労働の削減に取り組まなければいけないのか?』
第二回『時間外労働の上限規制って何?』
第三回『労働時間の管理と監督者の役割』
第四回『労働時間削減のために(1)』
第五回『労働時間削減のために(2)』
第六回『効率化のためにできること』
第七回『他業種との比較』
第八回『教育の重要性』
第九回『働き方改革について』
第十回『魅力ある建設業へ』
第十一回『まとめ』
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