2024/07/01
2024年4月より、建設業においても時間外労働の上限規制が適用となりました。
労働基準法第33条1項には、「災害その他避けることのできない事由によって、臨時の必要がある場合においては、36協定で定める延長時間とは別に、時間外、休日労働を行わせることができる」とされています。したがって、災害時には時間外労働の上限規制は適用されません。
労働基準監督署長の事前の許可が必要になります。
ただし、事態急迫のため許可を受ける時間がない場合は、事後に遅滞なく所轄の労働基準監督署へ届け出ることが必要です。
地震、津波、風水害、雪害、爆発、火災等の災害への対応(差し迫った恐れがある場合における事前の対応を含む。)、急病への対応その他の人命又は公益を保護するための必要であるかどうかで判断されます。例えば、災害その他避けることのできない事由により被害を受けた電気、ガス、水道等のライフラインや安全な道路交通の早期復旧のための対応、大規模なリコール対応は認められます。
災害によって被害を受けた工作物の復旧および復興を目的とした建設の事業をいいます。例えば道路や鉄道の復旧、仮設住宅や復興支援道路の建設などの復旧の事業等が対象となります。
労基法第33条 | 災害時における復旧及び復興の事業 労基法第139条 |
|
---|---|---|
目的 | 人命・公益の保護のため | 社会的要請が強いため |
対象 | 災害その他避けることのできない事由によって、臨時の必要がある場合(建設の事業に限らない) | 災害時における復旧及び復興の事業(建設の事業に限る) |
手続 | 事前の許可又は事後の届出 ・事業場単位で申請/届出を⾏う ・許可申請書/届に、時間延⻑・休⽇労働を必要とする事由、期間・延⻑時間、労働者数を記載する |
36協定を届出
・建設事業としての36協定の中で、特別条項として「災害時における復旧及び復興の事業に従事する場合」について協定する |
効果 | 36協定で定める限度と別に時間外・休⽇労働を⾏わせることができる | 36協定で定める範囲内で時間外・休⽇労働を⾏わせることができる |
上限規制 | 適用なし |
災害時における復旧及び復興の事業については、 【適用なし】 ・時間外労働+休日労働の合計 単月100時間未満 複数月平均80時間以内 【適用あり】 ・年720時間の上限 ・月45時間超は6か⽉の限度 |
割増賃金 | 支払必要 | 支払必要 |
待機時間については、「使用者の指示があった場合には即時に業務に従事することを求められており、労働から離れることが保障されていない状態で待機等している時間(いわゆる「手待時間」)は、労働時間に当たる。」とされています。
労働時間に該当するか否かの判断は、個々に検討していく必要がありますが一般的には、下記のように判断されるケースが多いです。
・ 使用者が急な需要に対応するために事業場において待機を命じ、自由利用が労働者に保障されていないと認められる場合には労働時間に該当
・ 緊急対応の頻度が少なく、自宅待機中に食事や入浴などの日常的な活動や、外出をすることが特段規制されていないなど、実質的に使用者の指揮命令下にあるとまではいえない場合には、労働時間に該当しない
除雪作業は、都道府県等との災害協定や維持管理契約に基づき、災害の復旧として対応する場合等には、労働基準法第139条第1項を適用することも可能です。そのため、当該除雪作業に必要不可欠に付随する業務として行われる凍結防止剤や融雪剤の散布の業務についても、労働基準法第139 条第1項の対象となります。
冷え込みによる路面凍結を防止するために凍結防止剤を散布する場合も、そのまま放置すれば直ちに災害が発生するとして、災害協定や維持管理契約等に基づき、差し迫った災害への対応を行う場合であれば、こうした対応についても労働基準法第139 条第1項の対象となります。
災害復旧等で、労働基準法第33条や同法第139条に該当した場合であっても、法定労働時間、法定休日、深夜労働、1ケ月60時間以上の時間外労働の割増率は適用されます。
割増率 | |
---|---|
時間外労働 | 25% |
法定休日労働 | 35% |
深夜労働 | 25% |
1ケ月60時間超の時間外労働 | 50% |
時間外労働の上限規制の適用が開始されましたが、非常時においては労働基準法第33条、同法第139条により、2つの特例措置が認められています。なお、労働基準法第33条の場合は上限規制は適用されませんが、同法第139条の場合は上限規制の一部は適用される、という違いがありますので、よく理解しておくことが必要です。建設業は私達の生活を支える重要な業種であるため、こうした措置がとられていますが、これらの措置はあくまで臨時で特別な措置ですので、建設業においても、通常時は時間外労働に頼らない働き方へシフトしていきましょう。
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