2024/11/01
もちろん、業務上必要な残業は36協定の範囲内で命じることができます。そもそも36協定(時間外・休日労働に関する協定届)とは、従業員の代表と使用者との間で話し合いをし、業務上必要な場合の残業時間の上限を決めるものです。両者の間で残業時間の上限時間の取り決めがされていますので、その時間内での残業命令は有効ですし、反対に、特別な理由がない限り残業を断ることはできません。
労働者が労務を提供し、それに対して使用者が賃金を支払うのが労働契約です。そして使用者には業務命令権があり、労働者に業務命令をすることができます。残業も、必要であれば当然依頼することができますが、不当な業務命令にならないよう、労働法において労働者は守られ、だからこそ36協定で残業時間の上限を労使で決定していくことになっています。
法律上、所定労働時間外の残業を断ることができるのは、妊産婦(労基法66条1項)、3歳に満たない子供を養育する労働者(育児介護休業法16条の8第1項)、要介護状態にある家族を介護する労働者(育児介護休業法17条1項)になります。
労働時間とは使用者の指揮命令下の時間であり、本来は残業についても上司の指示を受けてするものです。反対に、指示の無い残業だからといって会社は残業代を支払わなくてよいわけではありません。上司が黙認しているのであれば、それは残業時間になってしまうのです。今までのような本人任せの残業ではなく、今後は残業について申請制を導入し、上司の命令を受けてから残業をするということを徹底していきましょう。残業申請で気を付けなくてはいけないのは「終わらないから残業します」というパターンです。時間外労働の上限規制がはじまり、時間に対する意識が高まると、仕事の早い人は残業をせず、仕事の遅い人が残業をするということがおきます。人によっては「残業代稼ぎ」という言い方をする人もいます。そのため、残業申請においては、何の業務で何時間残業するのか?を申請してもらいましょう。
最近では勤怠アプリを導入し、残業申請もアプリでしているケースが多いと思います。ただ、これでは残業の中身がわかりません。しっかりと残業の中身がわかるような工夫をしていきましょう。
最近ではラインワークス、チャットワークといったビジネスチャットを利用している会社が増えています。このようなチャット機能で「残業申請」といったグループを作ってみるのも効果的です。
グループを作成することで、他のメンバーからの目もあり、適正な残業へ変わっていきます。
(例)【ラインワークス】
まずは1日の仕事の見える化をしていきましょう。例えば下記のように前日の業務終わりに翌日のスケジュールを作成してもらいます。これは、前段で説明したようなチャットでのグループで、他の人にも見えるようにすることがポイントです。これを実施すると、仕事のできる人は時間の組立てがうまく、仕事の遅い人はいつも同じ業務を記入していることがわかります。要は時間内で仕事を組み立てることができず、時間の中で終わらせるという意識が低いのです。当然、仕事は突発的なことも起こりますし、電話等の問い合わせもあり予定通りいかないことがほとんどだと思います。しかしながら、いつまでも周りの環境のせいにしても何も変わりません。まずは自分自身で時間の使い方を考えることが残業を減らしていく第一歩になります。働き方改革は「早帰り運動」ではなく「生産性をあげること」です。改めて時間への意識を徹底させることが重要です。
【7/8 スケジュール報告】
09:00-09:15
スケジュール確認、メールチェック、業務確認
09:15-10:00
A社見積もり作成
10:00-11:00
B社打合せ
11:00-12:00
写真の整理、打合せ資料の作成
13:00-14:00
発注書類の作成、発注
14:00-17:00
施工計画書の作成、施工図作成
17:00-18:00
報告書の作成
【7/8 スケジュール報告】
09:00-09:15
スケジュール確認、メールチェック、業務確認
09:15-10:00
A社見積もり作成
10:00-11:00
B社打合せ
11:00-12:00
写真の整理、打合せ資料の作成
13:00-14:00
発注書類の作成、発注
⇒ここまでOK
14:00-17:00
施工計画書の作成、施工図作成
17:00-18:00
報告書の作成
⇒持ち越し
まずは、適正な時間管理を徹底し、その後業務の見える化、その結果から時間外労働の原因を探っていきましょう。残業の多い人の原因で考えられるのは
① その人に業務が偏ってしまっている
② 会社の雰囲気として帰りづらい
③ 本人の能力の問題
にわけられます。原因が業務の偏りなのであれば、業務配分を変える、効率化できるものであればITの利用をする、アウトソースできるものについても検討が必要です。また、例えば「写真の整理の仕方は、俺のやり方がある」といったこだわりを持っている方もいるかもしれませんが、仕事の属人化は業務効率が悪くなる大きな原因です。属人化した業務は標準化していくことが必要です。次に会社として帰れない雰囲気、要は会社の風土というのは大きな問題です。『長時間労働=美徳』の評価からの脱却、ノー残業デイの導入等で帰る雰囲気をつくっていきましょう。そして、残念ながら本人の能力の問題があります。時間はかかりますが、しっかりと教育をしていきましょう。今までのような「時間をかければいいや」という感覚から抜けだしていかなくてはいけません。残念ですが、ここでは適正な評価が必要になってきます。
建設業は完全受注生産であり、2つとして同じものはありません。そのため、これまでは個別案件という理由から仕事が属人化しやすかったのだと思います。しかしながら、今後は労働力人口が減っていく中で、個々人の仕事から、チームでの仕事へ変えていく必要があります。そのためにも、今、仕事のやり方を見直すことが重要なのです。「働き方改革」はチャンスの時期です。持続可能な会社にしていくためにも、1つ1つ取り組んでいきましょう。
※10月1日に開催した「第14回建設技術者のための技術力向上セミナー」(滋賀県大津市)でも、「建設業における働き方改革」と題して櫻井氏にご講演いただきました。
当日の動画も是非ご覧ください。
〇第14回建設技術者のための技術力向上セミナー
https://concom.jp/contents/video_learn/vol019/
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