2023/06/01
建設業2024年問題と言われている「時間外労働の上限規制」がいよいよ来年2024年4月から施行されますが、時間外労働の上限規制とは何かを確認していきましょう。
①労働時間の考え方
まずは労働時間の考え方について確認をしていきましょう。労働時間とは「使用者の指揮命令下に置かれた時間」をいいます。そして、労働基準法上は、原則として1日8時間1週40時間(法定労働時間)という決まりがあります。また、休日は原則として、毎週少なくとも1回(法定休日)とされています。
【移動時間は労働時間?】
建設業の場合、現場への移動時間が労働時間としてカウントされるかどうかで、労働時間がかなり変動していきます。移動時間が労働時間となるケースとならないケースがありますので、確認していきましょう。
移動時間が労働時間とカウントされないようにするには、例えば積み込みは前日に終了させて、当日は移動のみにする。積み込み作業は当番制にするといったメリハリのある時間管理が重要です。
②「法定」と「所定」の違い
法定とは法律で定めていること、所定とは会社ごと(事業所ごと)に定めていることをいいます。一般的に「残業」とは、会社の所定労働時間を超えて働くことを言いますが、今回の時間外労働の上限規制でいう「時間外労働」は必ずしも会社の「残業時間」とイコールとはいえません。そして休日も法定休日は週1日の休日を指しますから、例えば土日が休日の会社だとしても1日は所定休日、1日は法定休日となります。例えば、会社の所定労働時間が9時から17時、休憩1時間の会社であれば、この会社の所定労働時間は7時間となり、18時まで残業をしたとしても、上限規制の「時間外労働」とはなりませんので注意が必要です。
③法定労働時間を超えた場合にやらなくてはいけないこと
法定労働時間を超えて働く場合は①36協定の締結・届出②割増賃金の支払いが必要になります。
36協定書とは、労働基準法第36条に規定されている内容で、時間外労働をする場合の上限時間を労使で話し合いをして決定をし、労働基準監督署に提出をするものです。
④時間外労働の上限規制とは?
時間外労働時の上限は、原則として月45時間・年間360時間とし、臨時的な特別な事情がなければこれを超えることができません。もともと、原則の月45時間・年間360時間の決まりはあったのですが、建設業は時間外労働の適用除外業種とされていて、36協定を締結してさえいれば、その範囲内では規制がなく働くことができました。しかしながら、2024年4月からは建設業においても、時間外労働の上限が定められます。
■時間外労働の上限の原則
月45時間・年360時間
■臨時的な特別な事情があって労使が合意する場合(特別条項)の上限
▼時間外労働が年間720時間以内
▼時間外労働の1ケ月45時間超えは年6回が限度
▼時間外労働+休日労働は単月で100時間未満
▼時間外労働+休日労働は、複数月の平均が80時間以内
【2024年4月1日以降の取扱い】
・災害の復旧・復興の事業を除き、上限規制がすべて適用されます。
・災害の復旧・復興の事業に関しては、時間外労働と休日労働の合計について
▼月100時間未満
▼2~6ケ月平均80時間以内
とする規制は適用されません。
⑤割増賃金の支払い
法定労働時間を超えて働く場合には、36協定書の提出ともう1つ、時間外労働の割増賃金の支払いが必要です。割増率は法律で決められており、2023年4月からは1ケ月60時間を超える場合の時間外労働の割増率が25%から50%へとなりました。これは大企業においてはすでに施行されていましたが、猶予とされていた中小企業においてもいよいよスタートをしました。割増賃金の支払いも上限規制の考え方と同様に法定労働時間を超えたところからが支払い義務となります。
時間外労働は原則1ケ月45時間・年360時間です。上限規制というのは、あくまで臨時的・特別な場合をいいます。「工期があるからしょうがない」「上限規制まではまだ大丈夫」ではなく、本来は残業をせずに終わることが望ましいのです。建設業の場合、工期、発注者の問題等ありますが、労働基準法は、各社ごとに適用されますので、これを労働環境を変える変化の時期と捉え、前向きに取り組んでいきましょう。
連載一覧はこちら
第一回『なぜ時間外労働の削減に取り組まなければいけないのか?』
第二回『時間外労働の上限規制って何?』
第三回『労働時間の管理と監督者の役割』
第四回『労働時間削減のために(1)』
第五回『労働時間削減のために(2)』
第六回『効率化のためにできること』
第七回『他業種との比較』
第八回『教育の重要性』
第九回『働き方改革について』
第十回『魅力ある建設業へ』
第十一回『まとめ』
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