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2023/07/03

【建設業の働き方改革~第三回】労働時間の管理と監督者の役割

1.労働時間管理の重要性

①労働時間とは?
労働時間とは「使用者の指揮命令下に置かれた時間」をいいます。使用者とは、経営者だけでなく、現場を預かる管理監督者の方も同様です。特に現場技術者の方はバックヤードにおける資料作成等で長時間労働におよんでいるケースをよくみますが、労働時間削減には属人化している業務を見える化していく必要があります。そのためには適正な時間管理が重要です。

②労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン
厚生労働省より労働時間に関するガイドラインが出来ていますので、ここでポイント解説します。

ポイント1
使用者は労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、適切に記録をすること

現場作業員を抱えているところでは「日給」の方をよく見ます。日給ということは、1日いくらという支払いであるため、時間管理という感覚がなく「出面表」の管理だけというケースが多いようです。しかしながら日給というのは賃金の決め方のことで、時間管理に関しては、日給の方であっても始業と終業の時刻を記録しなくてはいけません。それともう1点、「残業代がつかない管理監督者」という言葉を耳にしたことがあると思います。労基法上の管理監督者は労働時間に関しては適用除外となるため、時間外労働をしても残業代がつかないということになっています。しかし、残業代がつかないから時間管理をしないというのはNGです。管理監督者であっても始業と終業の時刻は記録していかなくてはいけませんので、注意をしていきましょう。

ポイント2
客観的な記録をしましょう

出来る限り、タイムカード、ICカード、アプリといった客観的な記録をしましょう。

2.適正な労働時間管理の取組について

①時間外労働の申請
本来、残業は上司の命令を受けてするものです。今までの習慣になっていた残業を見直すためにも、残業があるときは申請制をとっていきましょう。ここでのポイントは、何の仕事を何時間残業するかといった見積り時間を申請してもらうことが大事です。時間に対する意識をもってもらうことが重要なのです。

時間外労働の申請

②時間の見える化
適正な時間の把握のためには、どのような業務を何時間かけてやっているかを把握する必要があります。それぞれの業務の見える化をすることで、本来やらなくてもいい仕事をやっていたり、本人のスキルの問題で業務を終えることができていなかったり様々です。面倒臭いようですが、業務の見える化をすることで、チームワークも良くなっていきます。下記の例は、朝、その日の自分の業務をオープンにし、見える化をします。このスケジュールはチーム全員が共有するため、誰がどれくらいの仕事を抱えているか、1つの業務にどれくらいの時間を費やしているかがわかります。そして、帰りには朝オープンにしたスケジュールをコピペして、自分の進捗状況を報告します。最初、上司はチェックが大変かもしれませんが、必ず一言コメントを入れてあげてください。上司にみてもらえていることが、部下の方の安心感につながっていきます。アプリ等を使用しても構いませんし、チャットやグループラインのようなもので構いません。既存のツールを工夫してみましょう。

時間の見える化

③管理監督者の役割
現場を預かる管理監督者の方が、しっかりとした時間管理をしなくてはいけない理由として、安全配慮義務があります。これは長時間労働が身体に及ぼす影響が非常に大きいというところからきています。以前は過労死の認定基準として、労働時間が中心でしたが、法改正により、長時間労働以外の負荷についても追加されました。これによると、事業場外の長時間の移動や、連続勤務等も入っています。建設業は工期のある仕事であるため、場合によっては連続勤務の可能性もでてくるかと思いますが、管理監督者の方たちは、しっかりと時間を確認していきましょう。

【脳・心臓疾患の労災認定基準】
労働時間と労働時間以外の負荷要因の総合的な評価

労働時間と労働時間以外の負荷要因の総合的な評価

労働時間の評価

労働時間の評価

労働時間以外の負荷要因
・拘束時間の長い勤務
・休日のない連続勤務
・勤務間インターバルが短い勤務
・不規則な勤務・交替制勤務・深夜勤務
・出張の多い業務
・その他事業場外における移動を伴う業務

【まとめ】

時間管理は使用者の責務です。適切な時間管理をすることが労働時間削減の第1歩です。やみくもに「早帰り」を進めるのではなく、しっかりと業務内容を確認し、その中で労働時間削減の糸口を探っていきましょう。

連載一覧はこちら
第一回『なぜ時間外労働の削減に取り組まなければいけないのか?』
第二回『時間外労働の上限規制って何?』
第三回『労働時間の管理と監督者の役割』
第四回『労働時間削減のために(1)』
第五回『労働時間削減のために(2)』
第六回『効率化のためにできること』
第七回『他業種との比較』
第八回『教育の重要性』
第九回『働き方改革について』
第十回『魅力ある建設業へ』
第十一回『まとめ』

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