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2023/08/01

【建設業の働き方改革~第四回】労働時間削減のために

前回まで「労働時間とは何か?」「労働時間管理の重要性について」説明をしてきました。
今回は、労働時間削減のためにどのような取り組みをしていけばいいのか?ということを説明していきます。

1.残業の原因を探る

「残業を減らそう!」という声掛けは、残業に対する意識づけにはなるかもしれませんが、声掛けだけでは残業は減りません。人の能力が、突然倍速に速くなることはないからです。まずは残業の原因を探るところからスタートしましょう。
残業の原因を探るには、現在、誰がどのような業務を抱えているかを見える化する必要があります。特に技術者の仕事は、専門性の高い仕事であるがゆえに属人化しがちです。「人に説明をするより自分でやってしまった方がはやい」と思われる方もいるかもしれませんが、スキルの高い人ほど、平準化できるものは平準化し、本当に専門性の高い業務に特化してもらわなくてはいけないのです。本来のやるべき業務に集中するためにも、業務の見える化が重要なのです。それでは残業の原因を探る方法をご案内します。

(1)日々の業務の見える化
前回解説をしましたが、1日1日の業務をまずは時間ごとに書き出してみましょう。
可視化し、工数分析をすると何の業務にどれくらい時間を割いているかがわかります。
後輩への指導に時間を要している人、現場とのやりとりに時間を要している人、書類作成に時間を要している人等原因は様々です。そして、その中には平準化できるものや効率化できるものがあるはずです。

(2)ムダな業務の見える化
日常の業務の中には、この業務って何の意味があるんだろう?この会議は、全員参加の必要があるのだろうか?と思われていることもあるかと思います。これを社内で簡単なワークでみなさんと共有してみるのも1つの方法です。ここで簡単なワークをご紹介します。

ポイント
【残業の原因を探る!!ワーク】

①全員もしくは部門別でも構いません。社内で残業の多い原因、日常業務でムダだと思っていることを1案件について1枚の付箋に書き出してもらい、それを掲示していきましょう。ポイントは深く考えずにとにかく書き出してみることです。

②それぞれ全員が書き出した付箋をグループ分けしてみましょう。大きく分けると3つのグループになるはずです。1つ目は仕組の問題、2つ目は個々人のスキルの問題、そして3つ目は会社の風土の問題です。
(例)
仕組みの問題・・・会議が長い、同じような資料を作っている、書類を探すのに時間がかかる等
個々のスキルの問題・・・仕事のやり方を理解していない、PCが苦手等
風土の問題・・・先輩が残っているから帰れない

③3つにグループ分けをしたところで、どれから取り組むかを決めていきましょう。

2.残業削減の取組について

前項で、残業の原因を探ることができたかと思います。ここで間違ってはいけないのは、本当に必要な業務なのかどうかを判断することです。「働き方改革」がはじまり、すべてを効率化、時間のかかるものはすべてムダと考える傾向がありますが、時間をかけなくてはいけない業務もたくさんあります。効率化とはやらないことを決め、効率化できるところを効率化し、本来取り組むべきところに時間をかけることなのです。

【効率化の考え方】

効率化の考え方

先ほどご案内したワークをしていくと大きく3つの問題にわけられることをご案内しました。3つの問題点について説明をしていきます。

(1)仕組みの問題の解決方法
仕組みの問題を解決するには、そもそも、その業務自体が本当に必要なのか?というところから考えます。いわゆる業務の仕分けです。伝統のある会社ほど、新しい仕組みを取り入れたにも関わらず、従前のやり方も継続しているといった業務のダブりがみられます。まずはやるべきこととやらなくてもいいことを仕分けし、やるべきことを効率化していく方法を考えていきましょう。現場の写真や資料の保存方法が個人別の管理になってしまっているのであれば、クラウド上で、全員が同じ方法で資料を保存することも1つです。また、フォルダー内の保管のルールがしっかり決まっていなければ、探すのに時間がかかります。そのためには保管ルールを決定し、フォルダー内を定期的にパトロールする担当を決めてもいいかもしれません。仕事のやり方が属人化しているために、人によって時間のかかり方が違うのであれば、業務の標準化やマニュアル化も必要です。

仕組みの問題の解決方法

(2)能力の問題の解決方法
残業の多い原因の1つには、本人のスキルや仕事のやり方の問題があります。性格的に、じっくりと時間をかけてやりたい人もいるかもしれませんが、仕事である以上、本人の満足だけで仕事をすすめるわけにはいきません。仕事には期限があるのです。そういうタイプの人には、マニュアルの活用も有効です。また、個々のスキルアップのためには、何の能力が必要かを洗い出し、足りない部分の教育をしていきましょう。もう1点、業務によっては標準時間を設定することも重要です。これくらいの業務であれば何時間必要かという時間設定をしていきましょう。標準時間を超えるのであれば、時間外労働の申請を出すといった習慣をつけることも大事です。

(3)会社の風土の問題の解決方法
今まで時間管理について意識をしていなかった会社では、遅くまでいることが当たり前になっているケースをよくみます。そして会社も長時間会社にいることを会社への貢献と考えがちです。今後は、長時間労働=美徳という考え方を変えていく必要があります。長時間労働が風土になっている会社には、ノー残業デイの取り組みも有効です。そして社内の評価も「人基準」から「仕事基準」への評価に変えていくことが重要です。

【まとめ】

労働時間の削減は簡単に出来るものではありません。従来のやり方を変えていくことですから、社内の風土を変えるような大きなことなのです。最初から大きなことはできません。1つ1つの小さな行動が習慣となり、それが新しい風土になっていくのです。焦らず、確実に取り組んでいきましょう。

連載一覧はこちら
第一回『なぜ時間外労働の削減に取り組まなければいけないのか?』
第二回『時間外労働の上限規制って何?』
第三回『労働時間の管理と監督者の役割』
第四回『労働時間削減のために(1)』
第五回『労働時間削減のために(2)』
第六回『効率化のためにできること』
第七回『他業種との比較』
第八回『教育の重要性』
第九回『働き方改革について』
第十回『魅力ある建設業へ』
第十一回『まとめ』

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