現場の失敗と対策 このコンテンツは現場で働く皆さんの参考としていただきたく、実際の施工でよくある失敗事例と対策を記載したものです。土工事、コンクリート工事、基礎工事の3分野を対象として事例を順次掲載していきますので参考としてください。

現場の失敗と対策

土工事、コンクリート工事、基礎工事の事例

コンクリート工事

4)打設準備(型枠・鉄筋組立等)

2019/06/27

ポンプ配管の振動による鉄筋の乱れ

工事の概要とトラブルの内容

11月、秋晴れの日に鉄道の高架橋のスラブコンクリートを打ち込んでいた。地上から8mの高さで、ブーム式のポンプ車を使用していた。仮設道路の脇で、コンクリートの受け入れ検査の準備をしていたところ、打込み箇所であるスラブの上から降りてきた鉄道会社(発注者)の職員から、「鉄筋の結束が緩んでいるので、コンクリートの打込みを中断するように。」と求められた。

一緒にスラブの上にあがってみると、ブーム式コンクリートポンプ車のコンクリート圧送管が足場板の上に並べたバタ角からはずれ落ち、圧送管のジョイント(写真1)が、鉄筋の上で脈動し、鉄筋を前後に揺らしていた。図1は今回の打込みに際し、圧送管をバタ角で支持していた状況である。格子状に200mm間隔で整然と組立てられていた鉄筋(D16)の結束線が破断されたり緩んだりして、ポンプ配管と直角方向の鉄筋の間隔は広がり、配管方向の鉄筋はたるんでいた。なお、ジョイントの脈動により配筋の結束が緩んでいたのは3か所である。

原因と対処方法

コンクリートの打込みを直ちに中断し、鉄筋工を呼びに行かせた。配筋を修復している間、型枠工にはバタ角の上に載せた圧送管の両側にキャンバを釘で打ち付けて、圧送管が外れないようにしてもらい(図2)、打込みを再開した。

この後、バタ角が圧送管方向に倒れたり、キャンバがバタ角から外れたりして、最善の処置ではなかったものの、何とか最後までコンクリートを打込むことができた。

作業員が途中で気が付くことを信じたいが、もしだれも気が付かずに、鉄筋の結束が緩んでいた状態で打込みが続けられていたことを想像するとゾーッとした。

図1 圧送管が鉄筋に直接触れないようにバタ角で支持している状況図1 圧送管が鉄筋に直接触れないようにバタ角で支持している状況

写真1 圧送管のジョイント写真1 圧送管のジョイント

図2 圧送管をキャンバで挟み込んだ事例図2 圧送管をキャンバで挟み込んだ事例

同様の失敗をしないための事前検討・準備、施工時の留意事項等

土木工事共通仕様書1)によれば、土木工事共通編に次のように記されている。

「コンクリートポンプにより打設する場合は、次によるものとする。・・・・・・・輸送管は直接鉄筋、型枠の上に配置せず支持台上に配置しなければならない。」

圧送管を鉄筋の上に直接載せない方法として、図3に示すように馬(写真2)と呼ばれる支持台を利用する方法や図4に示すように単管パイプを利用する方法がある2)。馬(写真2)はスラブ型枠から支持するためスラブの厚さが大きいと使えないが、ソリに載った馬(写真3)もあり、鉄筋の上に載せて使用するため、スラブの厚さが大きくても構わない。圧送管の振動を低減するためにローラが組み込まれている。

また、コンクリートボート(写真4)は、配管の段取り替えで圧送管を切り離す際に、スラブ上などで、コンクリートのこぼれによる鉄筋や型枠の汚れを防止する目的で開発された製品であるが、圧送管や先端ホースの移動を容易にするスライダーとしても使用される。

話は変わり、写真5は地下構造物のベースのコンクリートを打込んでいる様子である。スラブの鉄筋と比較して鉄筋は太く、堅固に組み立てられている。ここでは、コンクリートホースのジョイント部にコンクリートボートを使用して、ジョイントが鉄筋の結束を乱さないようにしている。さらに、50cm×2m程度の金網が何枚も敷かれている。この金網は1枚6kgと軽いため、鉄筋の養生に加え、足場板の代わりに用いるのが流行のようである。なお、中間杭の周囲に配置されている白いネット(耐アルカリ性ガラス繊維)はひび割れの発生を低減するためのものである。

図3 圧送管を馬で支持した例図3 圧送管を馬で支持した例

図4 単管パイプの上に圧送管を敷設した例図4 単管パイプの上に圧送管を敷設した例

写真2 馬写真2 馬

写真3 ソリに載った馬写真3 ソリに載った馬

写真4 コンクリートボート写真4 コンクリートボート

写真5 コンクリートボートをホーススライダーとして使用している状況写真5 コンクリートボートをホーススライダーとして使用している状況

参考文献

1)例えば、土木工事共通仕様書:昭和54年4月,p68,首都高速道路厚生会

2)コンクリートのポンプ施工指針2012年版:土木学会

「現場の失敗と対策」編集委員会

編集委員会では、現場で起こりうる失敗をわかりやすく体系的に理解できるよう事例の形で解説しています。みなさんの経験やご意見をお聞かせください。

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